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真田十勇士

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巻ノ百四十 槍に生きその八

「ここは通さぬ!そして負けぬ!」
「何という者じゃ」
「どれだけ戦っても疲れを知らぬのか」
「既に百人は倒しておるぞ」
「いや、二百人じゃ」
「それでも疲れを見せぬか」
「疲れ?そんなもの知らぬわ」
 清海は口を大きく開いて笑って言った。
「今のわしはな」
「そして暴れるか」
「この様に」
「我等と戦うか」
「左様、死にたくなければ退くのじゃ」
 そうせよとも言う清海だった。
「来ればこの錫杖が唸るぞ」
「おのれ、言わせておけば」
「ならば我等とて」
 幕府の兵達の中で命知らずの者達が行こうとするが主に止められる、清海の相手は誰にも出来ぬと見てだった。
 伊佐もまた同じだった、その杖が唸り法力がだった。
 幕府の兵達を吹き飛ばす、伊佐は法力で敵兵達を吹き飛ばしてから言うのだった。
「前に出られれば今の拙僧は容赦出来ませぬぞ」
「今の様にか」
「我等を倒すというのか」
「この戦、拙僧は殿の為に鬼となると決めておりまする」
 だからこそというのだ。
「だからか」
「それでなのか」
「ここまで戦うか」
「そうだというのか」
「命が惜しくないなら参られよ」
 伊佐もこう言うのだった。
「お相手致します」
「おのれ、何としても倒したいが」
「しかしこの強さでは」
「如何ともし難い」
「容易には勝てぬ」
「そうそうの者達では」
 少なくとも並の足軽達だけでは駄目だった、それで伊佐にも突き進まれるがままでだった。そうして。
 海野もだ、その水をだ。
 地の底から熱湯の間欠泉として幾つも出してそれでだった。
 敵を襲った、そうして言うのだった。
「水は何処でも出せる、気をつけることだな」
「おのれ、熱湯か!」
「熱湯を地の底から出すか!」
「そうして来るとは」
「何という男よ」
「恐ろしい男よ」
「わしは水の術の者よ」
 海野は敵達に凄みのある笑みで言った。
「それならばよ」
「血の底から熱湯を噴出させてか」
「それで攻めることも出来る」
「そう言うか」
「砂場でも出してみせるわ」
 これは実際に出来た、太言ではなく。
「そのわしに勝てるか」
「勝ってみせるわ!」
「これで怯んでたまるか!」
「その首手柄にしてくれる!」
 勇む者達もいたがだった。
 誰も海野に近寄れずだ、それでだった。
 遂に彼等も退いた、海野もまた鬼となっていた。
 猿飛の前に多くの敵達がいた、だがその彼等にだ。猿飛は余裕の笑みを向けてそのうえで言ったのだった。
「わしと戦うか」
「おう、そしてよ」
「お主の首挙げてやるわ」
「猿飛佐助の首ならば手柄じゃ」
「値千金のな」
「そうか、ならば取れるものなら取ってみよ」
 猿飛は敵兵達に応えた、そしてだった。
 己の周りに無数の木の葉を出した、その木の葉達がだった。
 猿飛、そして敵兵の周りを乱れ飛びそうしてだった。
 そこにある葉で敵を切り裂く、彼はその中で言った。 
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