FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
理屈の上に成り立つ力
前書き
この話が完結したらもう一回野球小説を作り直そうかと思う。
まぁ、来年か再来年には完結できると思いますし。
尻流「今年では?」
やりたいことがまだまだあって無理!!
「シリル~!!どこに向かってるの~!?」
何かを感じ取りそちらに向かって脇目も振らずに走っている少年を追いかける猫が叫ぶ。それに対し彼は振り向くことも速度を落とすこともしない。
「わかんない」
「わかんないって~・・・どういうこと~?」
それならば一体なぜそこまで迷いなく走れるのか、一体何を感じ取ったのか、様々な疑問が沸き上がってくる。
「わかんないけど・・・でも、確かにこっちなんだ」
「だから何がだよ~!?」
思わず強い口調になる。セシリーは隣に並んで顔を覗き込むが、それにすら気付いていないのか何の反応も見せない。
「着けばわかる。たぶんね」
言葉だけを見れば到底信じられない。だが、少年の顔付きは自信に満ち溢れていた。相棒はそれを見てこれ以上追求することはやめようと、口を閉ざしたのだった。
「あの子と同じ?誰のことを言ってやがる」
ヨザイネの言葉を微かに聞き取ったグレイが彼女を睨み付ける。それに対し少女は答えようとしない。
「グレイ!!手を貸すぞ!!」
相手の魔力はこれまで戦ってきた相手よりも高い。一人では分が悪いと考えたリオンが立ち上がったが、グレイがそれを制する。
「大丈夫だ。お前はジュビアたちを守ってくれ」
「しかし・・・」
食い下がろうとしたが、ここで言葉を飲み込んだ。自分が入っても足手まといになってしまうのではないか、その考えが脳裏を過ったからだ。
「ここを離れるぞ、ジュビア、メルディ」
「は・・・はい!!」
「行くよ、ルーシィ」
近くにいては邪魔になると考えその場から離れようとしたリオン。その判断は的確だった。だが・・・
ボワッ
「「「「「!!」」」」」
逃げようとした彼らを取り囲むように、真っ黒な球体が現れ全員を飲み込む。
「ジュビア!!リオン!!」
「なんだこれは・・・」
「ちょっと!?」
閉じ込められる格好になったリオンたち。リオンはそれを破ろうと両手を合わせる。
「アイスメイク・・・スノータイガー!!」
氷の虎を壁になっている部位に全力でぶつける。だが、それはびくりともしない。それどころか・・・
「うわあああああ!!」
魔法を放ったはずのリオンに激しい激痛が走ったのだ。
「リオン様!!」
「あんた!!大丈夫!?」
「何よこれ!?」
あまりの痛みに膝をつく。それを見たヨザイネは嘲笑うような表情を見せる。
「無駄よ。漆黒の檻に閉じ込められたら最後、誰も出ることはできない。私を倒さない限り・・・ね」
「てめぇ・・・」
仲間を人質にされたと憤るグレイ。だが、彼女はその考えを見透かし、否定する。
「安心して。彼女たちは私が後で始末するからあそこに閉じ込めているだけ。人質にする気なんてサラサラないわ」
そう言って球体の中にいる誰かを睨み付けるヨザイネ。彼女のその目は完全に闇に染まった者のそれだった。
「上等だ。仲間をやらせたりするもんかよ!!」
魔力を高め突進する。悪魔を滅する力を宿した彼は両手に氷の剣を携えた。
「氷魔・零ノ太刀!!」
一年前に見せた技を二刀流に変化させての攻撃。その速度は見守ることしかできないジュビアたちでも捉え切れないものだった。
ガシッ
それなのに、ヨザイネはその左右からの攻撃を指二本であっさりと受け止めてしまう。
「あなたたちは本当に仲間が大切なのね」
「あぁ!!当たり前だろうが!!」
本当の家族よりも深い絆で結ばれたと彼らは確信を持っている。その輪はどんどん大きくなっていき、フィオーレ全土に広がっているのだ。
「ふ~ん・・・そう」
彼女はそれを聞いて特に表情を変えることはなかった。だが、わずかに戦場に変化をもたらす。
「漆黒の檻、解除」
ジュビアたちを捉えていた真っ黒な球体を消し去ったのだ。解放された彼女たちは驚いた顔を覗かせる。
「なんだ?何がしたいんだ?お前」
逃がさないために作り出した魔法を物の数秒で消し去る謎の行動。それが何を意味しているのか、誰にも予想がつかない。
「面白いことを考え付いたので、趣向を変えようと思いま~す」
「「「「「は?」」」」」
突然手を挙げて遊びを企画した子供のようなテンションになるヨザイネに全くついていけない。それでも彼女は止まることなく話を続ける。
「あなたは仲間が大切だと答えた。それは惑うことなき事実。であれば・・・」
その瞬間、ヨザイネの雰囲気が一変したのを感じた。全身から溢れ出る魔力。それはあまりにも大きく、その場にいた全員の肌がビリつく。
「仲間を殺されたら、あなたはあなたでなくなる」
突如ヨザイネの肉体が輝き出した。すると、それと同調するように一人の少女の足元に魔法陣が現れる。
「え?これはなんですか?」
突然のこと過ぎて何がなんだかわからないジュビア。だが、グレイとリオンはすぐにこれから何が起きようとしているのか察した。
「いかん!!」
「逃げろジュビア!!」
駆け寄ろうとする二人の青年。だが・・・
「全てに勝る天地の精よ。汝の持てる力を一点に宿らせよ!!」
その瞬間、世界中全ての人々の視界から光が消えた。わずか1秒程度の時間だったために誰もそれを気にすることはなかった。だが・・・
「きゃあああああ!!」
そのわずか1秒が、一人の少女の全てを奪うこととなった。
「なっ・・・」
視界を取り戻した彼らが見たもの・・・それは目の前にいたはずの水の魔導士が跡形もなく消えているのだ。彼女がいたはずのその場所は真っ黒になり、何やら灰のようなものが落ちていた。
「ジュビア・・・おい・・・どこ行ったんだよ・・・」
このわずかな時間で何が起きたのかわからずアタフタすることしかできないグレイ。そんな彼にヨザイネはゆっくりと告げた。
「私の魔法であの子を消したわ。世界中全ての光を一人で受けたんだもの、形なんか残るわけない」
彼女の言葉を信じられないグレイたち。だが、彼女と仲の良かったメルディが崩れ落ちたことで、彼らはそれを受け入れざるを得ないことを察した。
「許さねぇ・・・俺は・・・」
大切な仲間・・・いや、それ以上の存在を消されたことで憤るグレイ。だが、その反応を彼女は待っていた。
「愚かなる民よ、天界より追放されたこの堕天使ヨザイネの僕となれ」
怒りに震えるグレイと目を合わせると、その目が一瞬輝いた。その瞬間、グレイの体がビクッと震える。
「よくもジュビアを・・・許さ―――」
グレイに続きリオンもヨザイネへと向かおうとした。だが、彼の動きは止められた。
「ガハッ!!」
吐血しうずくまるリオン。彼は腹部を押さえながら、滲み出てくる血液を必死に凍らせる。
「グレイ・・・これはどういうことだ・・・」
彼に攻撃を加えたのは隣にいた弟弟子。なぜ彼が自身を攻撃してきたのか見当もつかないリオンは混乱と怒りで彼を睨み付けた。
「さぁ、殺し合いなさい。血の繋がりを越えた仲間同士で」
リオン、メルディ、ルーシィへと向き合うグレイ。その目は白と黒が反転しており、何か異常が起きているのは明白だった。
「私はお前、お前は私」
その頃エルザの前に降り立ったアイリーンはそう答えた。それが何を意味しているのかわからないエルザは真意を聞かざるを得なくなる。
「何を言っている」
「まぁそれは追々答えてやる。まずは・・・」
アイリーンの瞳に映る金髪の少女。見つけられてしまったメイビスは思わず冷や汗を流した。
「そなたを陛下の元に連れていかなくてはな」
メイビス一人にターゲットを絞り杖を向ける。そこから魔法を放ったが、それは彼女に当たる直前で突風により打ち消されてしまった。
「ここは私が引き受けます!!初代はここから離れて」
メイビスを守るようにウェンディが立ちふさがる。彼女の言葉を信じ、その場にいた仲間たちは全員のメイビスを連れて離れていく。
「私も戦おう。こいつの言葉の真意を確かめねばな」
ウェンディに加勢するエルザ。彼女はアイリーンの言った言葉がどういう意味なのか確かめるため、彼女を倒すことを決意した。
「この魔力の感じ・・・こんなガキが滅竜魔導士なのか」
ウェンディを見ながらボソッと呟くアイリーン。その不思議な目に少女たちは不気味さを感じていた。
ドゴォンッ
「「「「「うわあああああ!!」」」」」
鳴り響く爆発音。それに巻き込まれたラクサスたちは悲鳴を上げながら宙へと投げ出される。
「ちょっと話過ぎたか。時間を掛けすぎてしまった」
太陽の位置から現在の時刻を割り出すティオス。彼はターゲットとして絞っていたシリルを逃がしてすでに5分以上経過していることに焦りを覚えていた。
「よそ見してんじゃねぇ!!」
余裕であるがゆえに見られるその行動に激昂する雷竜。彼は雷の巨大な槍を作り出す。
「雷竜方天戟!!」
傷だらけの肉体から放たれたとは思えないほどの速度の魔法。それは一直線に視線を反らしていたティオスへと向かっていく。
「確かに威力はありそうだ。速度も十分、普通の魔導士なら致命傷を負わせることもできるだろう」
間近へと迫ってきているにも関わらず冷静にラクサスの放った魔法を分析しているティオス。すると、彼は片手をその雷の槍へと向ける。
「だが、俺にはこれでは通じない」
体を半身にしながら魔法をわしづかみにしてしまうティオス。彼はそれを放った張本人へと投げ返す。
「ガハッ!!」
何倍もの速度で返球されたそれを交わすことなどできるはずがなかった。まともにそれを受けた青年は地面へと倒れ込む。
「カッコつけているのか知らないが、形が悪い。空気抵抗、魔力の消費、力の流れ方、全てを計算して戦わなければ意味がない」
一瞬のうちにラクサスの魔法の力量、並びに限界値を見極めたティオス。魔力も去ることながら、それ以上に頭脳的であることが伺える。
「だったら、こいつはどうだ!!」
その背後から現れたのは白の滅竜魔導士スティング。彼は口に魔力を溜め、それを一点集中、放出させる。
「君のブレスは正解に近い。でもね・・・」
スティングの方を見向きもせずに体をわずかに横にズラすだけのティオス。それなのに、彼の脇をすり抜けるようにブレスは通過してしまった。
「大した速度もないのに、範囲を絞りすぎともいえる」
「っ!!」
冷静な顔で振り向いた彼の顔が非常に腹立だしいものに感じられた。だが、それだけ力の差があれば反抗する気にもならなくなってくるから不思議だ。
「メェーン、ならば接近戦ではどうかな?」
力の香りで巨大化した一夜。接近する彼の速度は異様なまでに速かった。
「ほう、スピードの香りも合わせているのか?」
お互いに掴み合い状態になった一夜とティオス。体格から見ればこれは紛れもなく一夜のチャンスかと思われた。しかし・・・
「力もスピードも十分にある。魔力がまぁまぁあるからなんだろう。だがな・・・」
突如鍔競った状態だった右手を離し引っ込める。それにより一夜は左半身が前方へと投げ出される格好になった。
「頭のレベルは変えられないようだ」
そのまま右足を出し一夜の足元を払う。敵を押し倒そうとしていた一夜はバランスを失ったままなす統べなく倒された。
「あの世で頭脳の香りでも作ってるんだな」
「しまっ―――」
地面を転がり尻餅をついた状態の一夜が振り向くようも先に青年は手のひらを向けた。そこから放たれたレーザーは、瞬く間に一夜の上半身を消し飛ばした。
「一夜!!」
「一夜さん!!」
力を失い力なく地面に落ちる下半身。それを見たラクサスは顔に浮かび上がる血管の数がみるみる増えていく。
「テメェ・・・」
怒りで全身から溢れてくる魔力。それを見たティオスはなぜか深いタメ息をついた。
「ただ怒りに身を任せることにしたのか。残念な選択だ」
誰に言うでもなく呟くようなその声は誰にも聞こえることはなかった。ラクサスは一年とはいえ同じギルドに属していた仲間を殺された怒りで力はピークに達していた。
「俺はカミューニも・・・一夜も守ってやれねぇのか・・・情けねぇ・・・」
奥歯を噛み充血した目で敵を睨み付ける。
「情けねぇよぉ!!」
その雄叫びと共に彼は本物の雷になったようだった。目にも止まらぬ速さで敵の懐へと入り込み、怒りと憎しみを込めた拳を振るう。
バシィッ
ティオスの顔面目掛けて放たれた正義の鉄槌。だがそれを青年は一瞥もくれることなく受け止めてしまった。
「君はナツのようになれるとでも思っていたのかい?」
「!?」
突然の問いかけに困惑するラクサス。ティオスはさらに続けた。
「怒れば、仲間のためと思えばどんな敵でも倒すことができる?そんなありもしない理想に胸を高鳴らせていたのかい?」
握っていた拳を離しラクサスの腹部を蹴る。それによりよろめいた彼は圧に押されたのか、地べたに座り込んでしまった。
「悪いがそんな感情論では勝てない。必要なのは知識、ハングリー精神、そしてそれを体現できる魔力」
一語を放つごとに魔力がどんどん大きくなっていく。それはまるで敵の心をへし折るために、まだまだ全力ではなかったことを思い知らしめるかのようだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
落ち着いたかと思ったらまた出てくる犠牲者。このままではハッピーエンドなんてできるわけないですよ、マジで。
ページ上へ戻る