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真田十勇士

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巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その十二

「ならばじゃ」
「大坂の城から出て」
「そうしてですな」
「国替えに応じていれば」
「それでよかったのですな」
「茶々殿が大御所殿の正室になっていれば余計にじゃ」
 家康が言っていた通りにというのだ。
「問題なかったのじゃがな」
「茶々様は一切わかろうとされなかった」
「それが今の事態を招いた」
「そしてこのままですな」
「滅びるのですな」
「そうなろう、まあ大御所様は最後も助命の話を出されるであろう」
 政宗は家康の考えをここでも読んで言った。
「問題はそれに頷くかどうか」
「茶々殿が」
「そうされるか」
「それが問題ですか」
「そうじゃがどうなるか」
 その時はというのだ。
「わからぬわ」
「茶々殿では」
「そのことすらも」
「とかく強情に過ぎるからのう」
 戦も政もわかっておらぬうえにというのだ。
「それではな」
「大御所様の助命も聞かれず」
「果てられることもですか」
「有り得ますか」
「そうやもな、しかしそれもまた戦じゃ」
 こうも言った政宗だった。
「そうであろう」
「はい、戦ならば」
「そうしたこともありまする」
「滅ぶことも」
「それも」
「そういうことじゃ、では兵は再び西に進める」
 真田の軍勢が去った今はというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「大坂城の南に入り」
「そこに布陣し」
「明日の戦に向かいまするな」
「そうするとしよう」
 こう言ってだった、政宗は己の軍勢を西に進ませた。そうして明日の戦に向かうのだった。
 それは家康も同じだった、彼もまた自らが率いる軍勢を大坂城の南にやってそこに布陣させた。そうしてだった。
 大坂城の天守閣を見てだ、こう言った。
「では明日豊臣家の軍勢を破り」
「明後日にはですな」
「戦を終わらせる」
「そうしますな」
「そうする、そして長く続いた戦国の世もじゃ」
 それもというのだ。
「終わるぞ」
「遂にですな」
「長く続いた戦国の世もですな」
「これで終わる」
「そうなるのですな」
「あの城が陥ちてな」
 そうしてと言うのだった。
「そうなる、しかしな」
「はい、まずは明日ですな」
「明日の戦ですな」
「明日の戦どう勝つか」
「このことが大事ですな」
「そうじゃ、豊臣の軍勢は明日完全に破る」
 そうすることもだ、家康は幕臣達に話した。
「塙駄右衛門、木村長門守、後藤又兵衛は散ったがな」
「まだ将帥は多く五万以上の兵がおります」
「油断出来ませぬな」
「特にあの者がおる」
 大坂の方を見据えたまま言うのだった。
「わかるな」
「はい、真田左衛門佐殿ですな」
「あの御仁がおりますな」
「そして十勇士達も」
「ですから」
「油断するでないぞ、わしもあの者と戦うならば」
 二度の上田の城での戦、その前の三方ヶ原でのことも思い出しつつ言う家康だった。
「気を抜けぬわ」
「だからこそ」
「明日の戦はですな」
「兵の数では有利でも」
「気を抜かずに」
「戦うとしようぞ」
 こう言ってだった、家康は明日の戦に心を向けていた。その戦が彼にとっても決戦になることを実感しつつ。


巻ノ百三十九   完


                   2018・1・15 
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