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真田十勇士

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巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その十一

「真田殿だけではじゃ」
「勝てぬ」
「左様ですな」
「この度の戦では」
「大坂方は勝てぬ」
「そうだというのですな」
「そうじゃ、真田殿がどれだけ見事に戦っても」
 今の様にというのだ。
「それでもあの御仁は一介の将に過ぎぬな」
「はい、確かに」
「あの方は見事な将ですが」
「それでも所詮はです」
「一介の将です」
「あの方は」
「うむ、大坂の主は誰か」
 それはというと。
「茶々殿であるな」
「ですな、あの方です」
「右大臣殿ですらなく」
「あの方ですから」
「どうしてもですな」
「この度の戦になったのもあの方のせいじゃ」
 茶々、彼女のだ。
「そしてじゃ」
「大坂の城が裸城となり」
「今の戦に至ったのも」
「全てですな」
「あの方の為」
「そしてあの方が大坂の主であられる」
「ならば勝てる筈がないわ」 
 到底と言う政宗だった。
「あの方は戦も政も何もわかっておられぬ、そうした方が主ではどうにもならぬわ」
「敗れますな」
「どうしても」
「そうなってしまいますな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「真田殿がどれだけ見事に戦ってもな」
「既に塙殿木村殿後藤殿もおられませぬ」
「それではですな」
「真田殿だけで勝てるものではない」
「だからですな」
「勝てぬわ、そしてじゃ」
 さらに話す政宗だった。
「大坂方が敗れるのは明後日位にあるか」
「明後日ですか」
「その時に滅びますか」
「そうなりますか」
「うむ、明日幕府の軍勢の主力は大坂の南におる」
 今日のうちに移動してというのだ。
「そこで大きな戦になるが」
「それが終わってですな」
「明後日になれば」
「後は裸城を攻めるだけ」
「それではですな」
「何でもないわ、赤子の手を捻る様にじゃ」
 そうした感じでというのだ。
「終わるわ」
「そうなりますな」
「まさに」
「豊臣家が滅び」
「それで終わりますか」
「滅びずに済んだ家が滅ぶ」
 豊臣家をこうも話した。
「そうなるわ」
「殿の思われた通り国替えに応じたならば」
「それで、ですな」
「豊臣家は滅びなかったですな」
「大坂から出ていれば」
「幕府は大坂が欲しいのじゃ」 
 豊臣家を滅ぼすことではなく、というのだ。 
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