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ドリトル先生と和歌山の海と山

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第十幕その八

「この位牌はどれもね」
「あの、日本の天皇陛下ってね」
 そのお話を聞いて最初に言ったのはガブガブでした。
「百数十代だよね」
「二千六百年以上の歴史の中でね」
 ダブダブは日本の皇紀からお話します。
「百二十八代だったかしら」
「そんな物凄い数の位牌を置いてるの」
 ポリネシアもびっくりです。
「これはまた」
「いや、空海さんって平安時代の人だから」
 このことを指摘したのはトートーでした。
「その頃からの天皇陛下じゃ」
「それでも普通に千三百年位の歴史あるよ」
 こう言ったのはホワイティです。
「空海さんの頃からにしても」
「どっちにしても凄い数だね」
「そうよね」 
 チープサイドの家族も思うことでした。
「平安時代からにしても」
「長い歴史だから」
「そんな長い頃からの位牌って」
「想像を絶するよ」
 オシツオサレツの二つの頭も驚いていますy。
「お一人も欠けているとは思えないし」
「何しろ帝だしね」
「ううん、歴代の天皇陛下の位牌まであるなんて」
 チーチーも唸っています。
「高野山の凄さがまたわかったよ」
「まさか神武天皇の位牌もあるとか?」
 ひょっとしてと言いつつ思う老馬でした。
「最初の」
「ううん、考えば考える程ね」
 ジップが考えることはといいますと。
「高野山は凄い場所だよ」
「というか流石は護国のお寺だね」
「都の裏鬼門を護る」
「そうした場所だけあるね」
「天皇陛下の位牌まであるなんて」
「そうだね、あとここは高野山の歴代の管長さんの位牌もあってね」
 先生はさらにお話しました。
「日本の歴史の悲劇の舞台もあるんだ」
「悲劇?」
「悲劇っていうと」
「何処でどういったことがあったの?」
「一体」
「そこに今から案内するよ」
 こうお話してです、先生は皆をこの中にある別殿へと案内しました。その別殿の襖に柳と鷺が描かれたお部屋に皆を案内してです。先生は悲しそうな残念そうなお顔になって一緒にいる皆にお話しました。
「このお部屋は柳の間といってね」
「奇麗な襖だね」
 王子はその柳と鷺の襖を見て言いました。
「芸術的価値が高そうだね」
「そうだね、けれどね」
「このお部屋でだね」
「悲劇があったんだよ」
「そうだよね」
「皆は豊臣秀吉さんを知ってるね」
 まずはこの人からお話した先生でした。
「この和歌山でもお話したし」
「そうだったね」
「太閤さんだよね」
「こちらにも来られたっていう」
「大阪城のあの人だよね」
「この人の甥御さんで秀次さんという人がいたんだ」
 次にこの人のお話をしました。
「秀吉さんはお子さんがいなくてね」
「あっ、随分歳を取ってからだね」
「秀頼さんが出来たんだよね」
「そうだったね」
「ずっと子供が出来なくて」
「そうだよ、とにかく長い間お子さんが出来なくてね」
 そうしてというのです。
「秀次さんを跡継ぎにしようとしたんだけれど」
「それでなの?」
「それから秀頼さんが生まれたの」
「そうだったのね」
「秀次さんを跡継ぎにしてから」
「それで秀次さんが邪魔になってね」
 やっぱり悲しいお顔でお話する先生でした。 
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