恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第六十九話 徐庶、徐州に来るのことその二
大きな卓の主の席でだ。こんなことも言うのであった。
「凛がおらぬのが残念じゃのう」
「そうですね。私もそう思います」
また話す張勲だった。
「彼女は一緒にいて楽しいですから」
「そうじゃ。凛はわらわの嫁じゃ」
勝手に言っているのではないのが凄いところである。
「だから共にいたいのじゃがのう」
「私もです」
「凛はわらわのものじゃぞ」
すぐに張勲に釘を刺す彼女だった。
「よいな、それはじゃ」
「いえいえ、凛ちゃんは私とできてますから」
にこやかに笑って言う張勲であった。
「それはもう手遅れかと」
「手遅れではないわ。凛とわらわは何よりも強い絆で結ばれておるのじゃ」
あくまでこう返す袁術だった。
「それは誰にも壊せぬものじゃぞ」
「曹操さんにもですね」
「そうじゃ。例え凛の主であろうともじゃ」
彼女のことになるとムキになる袁術だった。
その感情を見せながらだ。さらに話すのだった。
「凛は絶対に渡さんからのう」
「ううむ、これは」
「恋でしょうか」
楽就も楊奉もそれを察した。
「美羽様の」
「それなのでしょうか」
「というかね」
眠兎が話す。
「この世界も女同士もいいんだ」
「そうじゃ。別に構わんのじゃ」
まさにその通りだとだ。袁術は眠兎に話す。
「女同士でも男同士でものう」
「ふむ、寛容だな」
藤堂は腕を組んで納得した顔で述べた。
「そうしたところは」
「あれっ、藤堂さんですよね」
張勲は彼女にしては珍しくきょとんとした顔を見せて述べた。
「今ここにおられたんですか」
「いるが。最初からな」
「そうなんですか。何かいつも後ろにおられる気がして」
「わしもちゃんと戦うしこうして甘いものも食べるぞ」
「ですが」
それでもだというのである。
「何か。こうして同席するのは違和感がありますね」
「どういうことだ、それは」
「いえ、何かそんな感じがしまして」
張勲は藤堂の顔を見ながら話す。
「それだけですけれど」
「わしは失踪されたと思われていたがな」
「何かそういう感じがしますから」
実際にそうだと話しながらだ。彼等は蜂蜜水を飲んでいくのだった。
そしてだ。徐州ではだ。
魏延がだ。またしても劉備の傍にいた。そのうえでだ。
彼女に対してだ。必死の顔で話すのであった。
「いえ、お一人で行かれるのはです」
「危ないの?」
「そうです、何処に行かれるにしても」
こう話すのだった。
「何時何処に誰がいるかわかりませんから」
「けれど。ちょっとお昼寝するだけなのに」
「いえいえ、寝るなら余計にです」
必死の顔で言う魏延だった。
「一人では危険です」
「だからなの」
「はい、私もご一緒させて下さい」
これが魏延の本音だった。
「身辺警護は」
「そのまま怪しいことになるわね」
黄忠がそんな魏延を見ながら述べた。
「焔耶ちゃんのことを考えたら」
「わ、私は別に」
「焔耶、口を拭け」
今度は厳顔が言うのだった。
「御主の今の口はじゃ」
「口は?」
「涎が出ておるぞ」
こう彼女に告げる。
「だらだらと犬みたいに垂れ流しおって」
「な、何と」
言われてだ。咄嗟にだった。
彼女はだ。自分の口元を右手の甲でぬぐった。その甲を見ればだ。
そこには涎はない。それを見て話す彼女だった。
「あの、別に涎は」
「冗談じゃ」
こう素っ気無く返す厳顔だった。
「しかし。それでもじゃ」
「それでもとは」
「全く。桃香様がそこまで好きか」
「だから私は桃香様の」
あくまでだ、忠臣だと言うのである。
「それだけであって何もやましいところは」
「やましいところしかないではないか」
厳顔はもうわかっているという口調だった。
「まあしかしじゃ」
「そうね。お昼寝の時でもね」
厳顔と黄忠の言葉の調子がここで変わった。
「護衛は必要じゃからな」
「それはいいことね」
「では。今は」
「うむ、よいぞ」
「是非共ね」
「それでは早速」
何故かだ。ここで枕を出して来た魏延だった。
しかも二つだ。そのうちの一つを出して劉備に言うのであった。
「では劉備様、今より」
「はい、少しだけですけれど」
「お休みしましょう」
「わかっておるとは思えんから言うぞ」
また言う厳顔だった。
「そなた、間違ってもじゃ」
「間違っても?」
「桃香様と同じ褥には入るでないぞ」
かなり直接的な言葉であった。
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