リング
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86部分:ニーベルングの血脈その十八
ニーベルングの血脈その十八
三個艦隊分の攻撃が帝国軍を直撃した。全体的な数では勝っていても一つのポイントではそうではなかった。ましてや帝国軍はジークムントの言う通り補給不足でありバリアーにもそれ程エネルギーを裂くことが出来なかった。彼等は瞬く間にその光の帯の前に薙ぎ倒されてしまった。
「提督、穴が開きました!」
「よし!」
ジークムントは前方に大きな穴が開いたのを見て頷いた。
「そこに突っ込め!それから反転攻撃だ!」
「はい!」
ジークムントの言葉通りその穴を突き抜けた。今度は戸惑う敵の後方に対して総攻撃を浴びせた。
後ろからの攻撃はかなりの脅威であった。帝国軍は次々に炎に包まれ、光となって消える。これで帝国軍は混乱状態に陥った。
「逃げる奴は追うな」
ジークムントは混乱する帝国軍を見て言った。その中には逃亡する艦艇もあった。彼はその者達をさしてこう指示を下したのであった。
「今はな」
彼は言った。
「今はですか」
「そうだ、残敵の掃討は後でいい、まずは敵軍を破ることが先だ」
「敵を」
「特にメーロトの奴を探し出せ、そしてその首を挙げるんだ、いいな」
ここで彼は戦術的判断を下した。まずは敵司令官を倒してその指揮系統を崩壊させるつもりだったのだ。そして敵の統制を完全に破壊する。戦術としてはオーソドックスなものであると言えた。
そして部下達もそれに従い動いた。一気に帝国軍を攻め立てる。その際逃げる兵は置いていた。
「逃げる奴は追うな!」
「まずはメーロトの旗艦を探せ!」
ジークムントの軍は逃げ惑う帝国軍の中を遮二無二駆け回り敵を探した。だがメーロトの影は何処にもなく、帝国軍はその逃げる数を増すだけであった。
そして遂には戦場にいるのはジークムントとその軍だけになった。やはりメーロトの姿は何処にもなかった。
「あの野郎、何処に行った」
捕虜の中にもいなかった。帝国軍はその半数程が破壊され、多くの捕虜を出していた。だがその中にもメーロトはいなかったのである。
「捕虜の中にもいません」
部下から報告が入った。
「逃げたか」
「おそらくは。どうされますか」
「まずは逃げた艦艇の追撃部隊を出せ」
ジークムントは指示を出した。
「その中にいるかも知れない」
「わかりました、それでは」
「そしてナイティングにも降下するぞ」
「ナイティングにもですか」
「ああ。どのみちあそこは占領しなくちゃいけねえからな」
そう語るジークムントの赤い瞳が強い光を放っていた。
「どのみちな。やってやるさ」
「わかりました。ではナイティングに陸戦部隊を送りましょう」
「ああ」
ジークムントは部下の言葉に応えた。
「俺も行くぞ」
「はい」
「ただ、一つ問題があります」
「問題?」
「ナイティングの帝国軍の防衛です」
「何かあるのか、あの惑星に」
「竜がいるようです」
「竜」
「ファフナーです。あれがこの惑星に配備されているとのことですが」
「そうなのか」
「はい。如何為されますか」
「そいつは今何処にいる?」
問うジークムントの目が光った。
「こちらにシュトルツィング執政官の軍も向かっておりまして」
「シュトルツィング、ああ奴か」
ジークムントはそれを聞いてすぐにそれが誰かわかった。
「ヴァルター=フォン=シュトルツィングだな」
「はい、そうです」
「確かあいつも帝国軍と対立していたな」
「何でも惑星を婚約者ごと破壊されたそうで」
「ニュルンベルグをだったな。そのファフナーに」
「ええ」
「それで帝国と対立することになったらしいな」
「シュトルツィング執政官の軍もまたナイティングに向かっております」
「帝国と戦う為にだな」
「そうです。そしてファフナーは今そちらに向かっております」
「そうか、なら好機だ」
ジークムントはそこまで聞いて言った。
「ファフナーがいない今がチャンスだ」
「では降下ですか」
「そうだ。一個艦隊で援護しろ」
「はっ」
「残り二個艦隊は敵残存艦隊を追う。陸戦部隊は俺に続け」
こうしてジークムントはナイティングに降下することとなった。まずは降下予定地点に集中攻撃が仕掛けられた。
「地ならしはしっかりとしておけよ」
「了解」
それに従い帝国軍の軍事基地にも攻撃が仕掛けられる。反撃もあったがそれは大したことはなくジークムントの軍はナイティングの帝国軍の戦力をほぼ無効化させることに成功した。
「これでやっと降下に移れるな」
「提督、御気をつけて」
「ああ、留守は頼むぜ」
「はい」
予定通りジークムントは兵を引き連れて降下した。そして重要地点を次々と占領していった。
「まずは拠点をもうけろ」
「はい」
それに従い軍事基地及び補給基地の占領を優先させる。まずは足掛かりを築いたのであった。
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