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リング

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8部分:ファフナーの炎その七


ファフナーの炎その七

「それならば勝機は十二分にある。戦争は数だけではないからな」
 その言葉で全てが決まった。こうしてヴァルターは二個艦隊を繰り出してまずは近くに展開していた帝国軍の艦隊を討つことにした。艦隊はヴァルター自身が率いていた。
 まずは中立にある星系を次々と説得していった。既に帝国の脅威は全ての星系に伝わっており説得にも骨が折れたがヴァルターの卓越した交渉能力と話術によりそういった難問を通過していった。
 これで彼は幾つかの星系を手中に収めた。そして気がつけば遂に帝国軍の艦隊の側にまで来ていた。
「帝国軍の艦隊が隣の星系にまで進出してきております」
 部下の一人が報告してきた。
「場所は」
「ベックメッサー星系です」
「そうか、あそこか」
 ヴァルターはそれを聞いて呟いた。
「ならばすぐにそこに艦隊を全て向けよう」
「はっ」
「まず第一艦隊は私が率いる」
 彼は言った。
「第二艦隊はウルリヒ=アイスリンガー提督が指揮をとってくれ」
「了解しました」
 金色の髪に鷲鼻の男がその言葉に頷いた。
「それではすぐに」
「うん。貴官は左から先に星系に入ってくれ」
「左からですか」
「そう、そして私は右から後で入る。つまり時間差で挟み撃ちを仕掛けるのだ」
「各個撃破される怖れもありますが」
「大丈夫だ。貴官の采配を信じている」
 アイスリンガーの顔を見ながら言った。
「機動力を使って相手を惑わせてくれ。そのうちに我が軍は敵の背後に回る」
「そしてそこで戦いを挑まれるのですか」
「そう。これなら問題なく勝てるな」
「はい」
 アイスリンガーはそれを聞いて頷いた。
「それではそれでいきましょう」
「うむ」
 ヴァルターは二個艦隊をベックメッサーに差し向けた。そしてアイスリンガーの艦隊に陽動を仕掛けさせつつ後方から敵艦隊に接近した。敵が気付いた時には既に挟み撃ちの姿勢を整えていた。
「敵艦隊、完全に捕捉しました」
「うむ」
 彼はザックスの艦橋にいた。そして報告を聞いていた。
「敵艦隊の規模は」
「巡洋艦が主軸です。ビーム艦とミサイル艦が十隻ずつ程です」
「思ったより少ないな」
「先遣艦隊でしょうか」
「おそらくな。どうやら我々のことはあまり意識していなかったらしい」
「ではチャンスですね。すぐに叩いておきましょう」
「うむ。では攻撃開始」
 ヴァルターの手があがる。
「アイスリンガー提督の艦隊はそのまま機動力を生かして側面を衝くように。我が艦隊はこのまま正面に進む。よいな」
「はっ」
「そして敵はできるだけ生かして捕らえよ」
「生かして、ですか」
「捕虜はいた方がいい。我々はまだ何も知らないのと同じだからな」
 彼は政治的判断を下した。
「捕虜から何かと聞き出せることは多い。いいな」
「わかりました。それでは」
「頼むぞ。全ては情報からだ」
「わかりました」
 ヴァルターは部下達と戦いの後の処理まで話しながら進んでいった。そして遂に攻撃射程内にまで入った。
「敵は気付いているか」
「いえ、まだです」
 彼等は既に敵を見ていた。しかし帝国軍の方はまだそれに気付いてはいなかった。
 
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