リング
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74部分:ニーベルングの血脈その六
ニーベルングの血脈その六
暫くその好きでない仕事をやる羽目になった。ジークムントは悶々とした日々を送っていたがやがてそれも終わる時が来た。その探していた者が向こうからやって来たのである。
「来たのか」
「はい」
ヴィントガッセンが答える。
「今軍港に来られています」
「よし、じゃあ今から行こう」
「いえ、それには及ばないそうです」
「?どうしてだ?」
「あちらから来られるそうで。司令はここで待っていて欲しいとのことです」
「何だよ、律儀な奴だな」
それを聞いて半ばあげていた腰をまた沈めた。
「折角こっちから来るってのによ」
「まあ急ぎの話でもないので落ち着かれてよいかと」
ヴィントガッセンは彼を宥めるようにして言った。
「その間にこちらでも会見の準備をしておきますので」
「ああ、頼むぜ」
ジークムントは言った。そしてここは大人しく待つことにしたのであった。
「それでは」
「おう」
ヴィントガッセンは退室した。そしてジークムントだけが部屋に残ることになった。彼は一人になったのを確かめるとふと呟いた。
「まさか向こうから来るなんてな」
彼にとってはいささか計算外のことであった。
「まあいいか。だったらじっくりと話を聞いてやるぜ」
しかしここで考えを転換させた。そしてこう思うことにした。やがて向こうが到着したとの報告があり、彼は会見の場に赴くことになった。
「おう、ようこそ」
会見の間でまずはいつもの様に飾らない挨拶を送った。
「この辺りの宙域の司令官をやってるジークムントだ」
「ジークムント=フォン=ヴェルズング司令官ですね」
「ああ」
彼は黄色い髪に金属で出来た重厚な服を身に纏った男に言葉を返した。見れば如何にも正体不明といった感じの男であった。だがジークムントには彼が何者か、少なくとも名前だけはわかっていた。
「パルジファル=モンサルヴァートだったな」
「はい」
その男、パルジファルは答えた。
「その通りです」
「話は少しだが聞いてるぜ。武器商人だってな」
「はい」
パルジファルはまた答えた。
「その通りです」
「しかも帝国に反抗する奴にだけ武器を売る。それはどういうことなんだ?」
「私もまた帝国と対立する立場にあるからです」
それが彼の答えであった。これまでと同じように感情の見られない声であった。
「それはまたどうしてだ?」
ジークムントはそれに問うた。
「それは」
「まずは座ってから話をしようか」
二人は立ったままであった。ジークムントはそれに気付き彼に座るように勧めたのだ。その方が話もし易いからだ。
「わかりました。では御言葉に甘えて」
「おう、じゃあな」
二人は同時に椅子に座った。パルジファルはそのままの態勢で手を両膝に拳を作って置き、ジークムントは足を組んで座った。それから話を再開した。
「で、何で帝国と対立しているんだ?」
ジークムントは先程の問いをまた繰り返した。
「俺達みたいに元々あのニーベルングの奴等と対立していたわけでも連中のやり方と合わないってことか?」
「ニーベルングの統治に従えないのは事実です」
彼は答えた。
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