真田十勇士
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巻ノ百三十八 仇となった霧その十二
「獲りますか」
「そうするぞ」
「ではその時にこそ」
「全てを賭けるぞ」
「わかり申した」
「明日にこそ全てがかかっておる」
この戦のそれがというのだ。
「豊臣家が残るかどうかがな」
「若し勝てばですな」
「残る、しかしな」
「敗れれば」
「もうその時はな」
「滅ぶしかないですな」
「そうなるからじゃ」
それでというのだ。
「我話はな」
「明日にこそですな」
「全てを賭ける、そしてその明日の為にな」
「これからの戦も」
「戦うぞ、十勇士達は後藤殿の軍勢の方に行かせたが」
それでもというのだった。
「ここは必ずじゃ」
「破りますな」
「伊達家の軍勢をな」
その鉄砲騎馬隊もというのだ。
「そうしようぞ」
「必ず」
「それでは今から少しな」
今度は干し飯を出して言う幸村だった。
「腹ごしらえをするぞ」
「戦の前に」
「皆も食せよ」
干し飯を出してというのだ。
「そうせよ」
「そして」
「戦になればな」
「戦うのですな」
「食わずしては戦えぬ」
とてもと言う幸村だった。
「だからじゃ」
「今のうちにですな」
「干し飯、そして水もじゃ」
飲むものもというのだ。
「飲んでな」
「そうしてですな」
「戦うのじゃ」
こう言ってだった、幸村は己の軍勢の全てに干し飯と水を飲み食いさせた。そうして必ず来る戦に向かうのだった。
巻ノ百三十八 完
2018・1・8
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