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リング

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66部分:ローゲの試練その二十


ローゲの試練その二十

「もう死んでいる。死んでいるというのに」
「大丈夫です。それは間も無くです」
「間も無く」
「行きなさい、七人の戦士達よ」
 声は言った。
「自らの宿命を解決させに。そしてノルンとラインの戦いに、ニーベルングとの戦いに勝利されるのです」
 その時ローエングリンの身体を光が包んだ。
「!?」
「時が来ました」
 声はまた語った。
「貴方が戻られる時が。さあ行きなさい」
「待ってくれ」
 光は急激にローエングリンの身体を包んでいく。彼はその中で声を呼び止めた。
「卿の名は何というのだ」
「私ですか?」
「そうだ。卿は。一体何者なのだ」
 ローエングリンは問う。
「私ですか。私はローゲ」
「ローゲ!?まさか」
「いえ、貴方の艦にあるコンピューターとは違います」
 彼は言った。
「私は全てを知る者」
「全てを」
「炎の中において。今はそれだけしか言えません」
「そうか。どうやら人ではないな」
「はい」
 ローゲはそれを認めた。認めたうえで言った。
「私は全てを見ている者」
「全てを」
「その私が言いましょう。ブラバントよ、行きなさい」
 その声が大きくなったように感じられた。
「戦いに。そしてそれが終わった時にこそ私は再び貴方の、いえ貴方達の前に姿を現わすでしょう」
「そうか。ではまた会おう」
「はい」
「ローゲよ。ではまたな」
 ローエングリンの身体が光の中に包まれた。そしてローエングリンはその中に消えた。気が着いた時には彼はもうその場にはいなかった。宇宙から現実の世界に戻っていたのであった。
「気が着いたようだな」
「ここは」
 男の声がした。目を開けるとそこには茶色い髪に髪と同じ色の濃い髭を顔中に生やした男がいた。そしてその黒い知性の光がある目で彼を見ていた。白い服を身に纏っている。
「牢獄だ。卿は死体となってそこに横たわっていた」
「私は死んだのだったな」
「そうだ。だが今甦った」
 男は言った。
「私の作り出したイドゥンによってな」
「イドゥン。まさか卿は」
 それを開発していた者の名は知っていた。その人物とは。
「そうだ。私はトリスタンだ」
 髭の男は名乗った。
「トリスタン=フォン=カレオール。それが私の名だ」
「やはりな。卿があの高名なカレオール博士だったか」
「高名かどうかまでは知らないがな。そして卿は」
「私か?私はローエングリン=フォン=ブラバント」
 彼は自らも名乗った。
「このラートボートに兵を進めていた軍の司令官だ」
「卿がそうだったのか」
 トリスタンはそれを聞いて納得した様に頷いた。
「何かあったのか?」
「ラートボート周辺と惑星内の多くの地域で待機中の軍があったが。卿の軍だったか」
「そして卿もここに来たのだな」
「そうだ。クンドリーに救援を依頼されてな」
「クンドリーに?」
「彼女は私の助手だった」
 彼は言った。
 
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