リング
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64部分:ローゲの試練その十八
ローゲの試練その十八
「ここまでは何もないな」
「はい。やはり人影一つありません」
部下の一人がそれに答える。
「帝国軍は。ここにもいないのでしょうか」
「そう考えるのは早計だな」
だがローエングリンはそうした楽観的な見方を否定した。
「潜んでいる可能性もある。注意しろ」
「わかりました」
彼等は基地の奥へと進んでいく。しかし帝国軍の姿は何処にもなかった。
彼等も奇妙に思いはじめていた。そして最深部である司令部に到達した時であった。
「よくぞここまで来たな、ノルンの民よ」
「何っ、ノルンだと!?」
「そうだ」
ローエングリン達の周りに突如として謎の一団が姿を現わした。
「既にニーベルングの者達は死んだ。一人残らずな」
「ではクンドリーも」
「そう、あの女も死んだ。我等が殺した」
その一団の中の一人が言った。
「何の為にだ」
「復讐の為」
そして彼等はまた言った。
「復讐だと」
「そうだ。そして貴様等にも」
ローエングリン達に対して一斉に銃が向けられる。
「待て、我々は御前達なぞ知らないぞ」
「貴様等が知らなくとも我々は知っている」
それが返答であった。
「それはヴァルハラで知るがいい」
「ヴァルハラ・・・・・・」
ローエングリンが呟いた時だった。その謎の一団の銃がビームを放った。
無数の銃弾がローエングリン達を撃った。ローエングリンは自分が死んだことを知る間すらなくその場に倒れ込んだ。そして血の海の中で息絶えたのであった。
こうして彼は死んだ。しかしそれは肉体だけのことであった。魂は肉体から離れた。今彼は無限の宇宙の中にその身を置いていた。
「ここは」
「よくぞ来られました」
彼を歓迎する声が聞こえてきた。
「ローエングリン=フォン=ブラバント」
「私の名を知っているのか」
「はい、貴方がここへ来られるのはわかっていましたから」
声は答えた。
「それが運命ですから」
「運命か」
ローエングリンはそれを聞いて考える顔になった。
「私は死んだのだな」
「はい」
声はまた答えた。
「おわかりでしたか」
「基地で謎の一団に撃たれてな。そこまでは覚えているが」
彼は言った。
「あれは一体。何者だ」
「ホランダーです」
「ホランダー」
「はい。かって第三帝国があったのは御存知ですね」
「第四帝国の前の帝国だな」
「それを建国したのが彼等だったのです」
「そうだったのか」
これはローエングリンもよくは知らなかった。実は第三帝国の歴史はよく知られてはいないのだ。それは第四帝国が建国される時の戦乱で多くの資料や歴史書、そして技術が失われたからである。今では第三帝国を形成していた者達すらもわからない状況となっていたのである。
「第三帝国は。そうした国家だったのか」
「はい。ホランダーによって作られた国家だったのです」
声は語った。
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