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猫アレルギー

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第四章

「したかったんだ」
「それだけ猫が好きだったんだ、けれど」
「けれど?」
「奥さんは猫アレルギーだから」 
 このことから言う高橋だった。
「それで猫が好きだって理由はね」
「それね、実はね」
「実は?」
「子供の時に親戚の家で猫を飼っててね」
「そのお家に遊びに行ってなんだ」
「その猫ちゃんが可愛くてなの」
 それでというのだ。
「その時から大好きだったの」
「そうだったの」
「そう、けれどお家には犬がいたし」 
 咲江の子供の頃の家にはというのだ。
「家族は皆猫には興味なかったから」
「飼えなかったんだ」
「そう、だからなの」
「余計に猫が飼いたかったんだ」
「そうなの」
 まさにというのだ。
「アレルギーでもね」
「そういうことは関係なかったんだ」
「その時くしゃみしながら見ていたわ」
 親戚の家の猫をというのだ。
「そして今ね」
「やっとだね」
「猫ちゃんを飼えて」
 それでというのだ。
「本当に嬉しいわ」
「それは何よりだね」
「やんちゃなのがいいのよ」
 にこりと笑って言う咲江だった。
「まさにそのことがね」
「親戚の家の猫もそうだったんだ」
「ええ、もう噛んで引っ掻いて悪さばかりして」
 にこにことして言う妻だった。
「悪い子だったけれどね」
「それが可愛くて」
「飼いたいって思ってたの、それに悪さをした方がね」
 むしろその方がというのだ。
「いいでしょ」
「それはどうしてかな」
「退屈しないでしょ」
「うん、思った通りにね」
「これがいいのよ」 
 夫に微笑んで言うのだった。
「やっぱりね」
「寂しさが消えたね」
「そう、猫ちゃんはね」
「一緒にいたらそれだけで賑やかになる」
「だからいいの、けれどずっと子供達もいて」
 そしてというのだ。
「私が猫アレルギーだから」
「それでだね」
「諦めていたけれどこの子が来てくれてよかったわ」
 ソファーの上で寝ているトトを見ての言葉だ。
「じゃあこれからもね」
「楽しくだね」
「二人と一匹で過ごしていきましょう」
「うん、ただね」
 ここでこうも言った高橋だった。
「スフィンクスだから毛がないけれど」
「いいわよ、それでも」
 妻は笑って夫に答えた。
「別にね」
「そうなんだ」
「猫ちゃんは猫ちゃんだから」
 それでというのだ。
「これからもね」
「トトとだね」
「一緒に暮らしていきましょう」
「ならよかったよ、猫アレルギーでも猫を飼えて」
「そして猫と一緒に楽しく暮らせる」
「それならね」
「人間は外見じゃないけれど」
 笑ってだ、咲江は夫に話した。
「猫もよ」
「毛がなくても猫は猫だね」
「だったら一緒にいて悪い筈がないわ」 
 猫好きとしてだ、可愛がらずにはいられないというのだ。咲江は猫アレルギーでも可愛がられる猫と出会えて幸せだった。そしてその猫を家に連れて来てくれた夫に感謝しながらトトと共に暮らした。毛のない種類の猫と。


猫アレルギー   完


                 2017・10・16 
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