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昼のバンパイア

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第三章

「大戦中まではいましたけれど」
「大戦後はだね」
「いなくなったんじゃ」
「東欧が共産化したりしてね」
「そのせいか」
「それがまだいてね」
「それで、ですか」
「うん、いるから」
 だからだというのだ。
「だからサラエボから呼んでね、ただその人はまだね」
「こちらにはですか」
「来ていないから」
 それでというのだ。
「まだ退治は出来ないからね」
「わかりました」
「ううん、ただそうした人でないとですか」
 今度は未可子が言った、どうにもという顔で。
「吸血鬼は倒せないんですか」
「村人が倒したって話はあるよ」
「そうですよね」
「けれどやっぱりこうしたことはね」
 どうしてもとだ、修之は未可子にも話した。
「専門家に頼むのが一番いいから」
「それで、ですか」
「サラエボから呼んでるから」
 それでというのだ。
「その人が来られるまではね」
「今はですね」
「退治は出来ないからね」
「私達だけではですね」
「用心しておいてね」
 くれぐれもという言葉だった。
「二人もね」
「というか私達そんなこと出来ないですから」
「吸血鬼退治とか」
 二人はとんでもないという顔と声で修之に即答で答えた。
「只の博物館員ですから」
「そんな技術ないですし」
「そう、だから余計にね」
 普通の博物館員だからこそだった、また言った修之だった。
「遭遇しても近寄らないでね」
「そうします」
「絶対に」
 二人も修之に約束した、彼女達にとってもバンパイアに襲われるなぞとんでもない話だった、それでだった。
 二人は部屋に帰るとだ、今度は二人で話した。二人共今自分達がいる地域の近くにあるところの産のワインを飲んでいる。そうしつつの話だ。
「絶対に夜出ないことね」
「それ絶対よ」
 未可子はすみれにそれこそはと答えた、二人共もうそれぞれシャワーを浴びてパジャマに着替えていて寝る準備もしている。
「何といってもね」
「そうよね、吸血鬼っていったらね」
「夜よ」
 この時間に出て活動する魔物だからというのだ。
「だからね」
「絶対に夜出たら駄目ね」
「そんなことしたら」
 それこそとだ、未可子はここで部屋の窓の外を見た。そこはもう夜の闇の世界で何も見えはせず静寂が支配している世界だった。
 その闇と静寂の世界にバンパイアがいる、そう思って言う未可子だった。
「もうね」
「それこそよね」
「飛んで火にいる夏の虫よ」
「吸血鬼の餌食よ」
「そうなるに決まってるわよ」
 それこそというのだ。 
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