リング
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
53部分:ローゲの試練その七
ローゲの試練その七
「作戦を発動させます」
「ローゲに異常はないな」
「はい、全く」
フルトヴェングラーがそれに応える。
「いつも通りの動きです」
「わかった。では予定通り行こう」
「了解」
こうして作戦が決められた。ローエングリンの軍はローゲのはじき出した作戦に従い動いていた。まずはそのまま前線に五個艦隊を展開していた。ありふれたごく普通の陣であった。
「思ったよりオーソドックスですな」
「ああ」
ローエングリンは今度はカイルベルトの言葉に頷いた。
「だがこれがこのパターンで来た場合の最も効果的な作戦らしい」
「お手並み拝見ですか。コンピューターの」
「このローゲのな。我々は艦隊運用に徹するぞ」
「はい」
こうして彼等はローゲの作戦に忠実に従うことになった。とりあえず今回はテストの様なものである。
「宜しいのですね」
クライバーがローエングリンに問う。
「いい。何かあればすぐにローゲのスイッチを切る」
ローエングリンは彼に答えた。
「そして私が直接戦術指揮を採る。よいな」
「わかいrました。それでは」
ローエングリンにも自信があった。この程度の軍勢ならば勝利を収める自信は充分にあった。少なくともテルラムント自身が率いていないならば負ける気はしなかった。
「あの男はやはりまだ出て来ないか」
そして彼はテルラムントに思いを馳せていた。
「出て来た時が決戦になるだろうが。果たしてそれは何時か」
これからの戦局についても考えていた。
「司令」
だがここで彼はその思考を中断せざるを得なかった。フルトヴェングラーが彼に声をかけてきたのだ。
「敵が来ました」
「うむ」
「ローゲの予想通りです。全速力でこちらに来ます」
「そうか。では下がる用意をしておけ」
「はっ」
皆それに頷いた。ローエングリンは時計を見ながら次の指示を下すタイミングを待っていた。
「あと十秒」
敵はその間にも突き進んで来る。
「九、八、七、六、五・・・・・・」
カウントされる。一同の顔に次第に緊張が覆ってきた。
「四、三、ニ、一・・・・・・」
いよいよであった。ローエングリンは右腕を高く掲げた。
「零!」
「全艦後退!艦首方向そのままで退け!」
「了解!」
それに従い全ての艦が退いた。そして今までいた場所に敵のビームが襲い掛かる。
そこへ帝国軍のビームが襲い掛かる。しかしそれはかわされた。これこそがローエングリンの狙いだったのだ。
「ビームは距離が遠くなれば威力が落ちる」
「はい」
彼はそれをよく認識していた。
「そしてその間合いさえわかれば。楽なことだ」
「では今度はこちらから反撃ですね」
「うむ」
彼は頷いた。
「そして今度は」
敵の攻撃をかわしたローエングリンの艦隊は前に出て来た。
「こちらの番だ。行くぞ」
「はっ」
艦隊を前に出して来る。そして攻撃に移る。
「ミサイル発射だ!全艦攻撃!」
「全艦ミサイル発射!」
攻撃支持が下される。そして帝国軍をミサイルの群れが襲う。
複雑な動きを示しそれぞれの獲物に襲い掛かる。そして敵を屠っていった。
「ミサイルは距離で威力は落ちない」
「はい」
「だが命中率は落ちる。ならばこうすればいい」
彼は言った。質より量で攻めたのである。
この攻撃で帝国軍はその戦力を大いに落とした。そこでローエングリンは勝敗を決する為に動いたのであった。
「全艦前へ!」
彼は突入を指示した。
「空母艦隊を出せ!艦載機で勝敗を決する!」
「了解!」
巡洋艦もビーム艦も艦載機は少ない。それを突いた戦術であったのだ。
ローエングリンの艦隊から艦載機が次々に飛び立つ。そして敵の艦艇を沈めていった。ビーム攻撃の失敗とミサイルの一斉射撃を受け混乱していた帝国軍はこれで総崩れとなった。そして慌てふためいた様子でミュンヘンから壊走したのであった。勝敗はこれで決した。
ページ上へ戻る