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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第百十話

「やぁ少年、久しぶりだねぇ。元気してたかい?」

ヴィーティングを処刑してホテルに戻って来たらなぜかホテルが火事になっていてしかも面倒な女が居た。

「何の用だ臥煙」

「おや?泊まっていたホテルが火事になっているのに家族や恋人の心配はしないのかい?」

「無事なのはわかりきっている」

イギリスに来ている俺以外のメンバーのエイドスの位置情報を探ると、ここからそう遠くない別のホテルに居る。

「そうかい」

「で、何があったんだ臥煙」

「呼び捨てか…。まぁ…君に何を言っても無駄だし…それでいいか…。
説明するからついてきてくれ。後ろの二人も一緒に来るかい?」

と後ろのスコールとオータムを指差した。

「どうするの坊や? 席を外しましょうか?」

「面倒だ。来い」











臥煙に連れられて来たのは、バーだった。

パレードで外見を誤魔化して入る。

個室に通されたので、遮音フィールドを張る。

無論スコールとオータムも一緒だ。

「じゃぁ、説明しようか。あの火事は端的に言えばブリュンヒルデがカルタフィルスの襲撃を退けた副産物だ」

「カルタフィルス…やっぱり実在したのか…」

襲撃を退けたって事は魔法とISをつかったという事か。

「おいおい。もうちょっと驚いてくれないと説明のしがいが無いじゃないか少年」

「カルタフィルスの襲撃は事前に可能性を知っていたし、備えもしていた。
それにあの程度の火事、箒がいれば逃げられる」

ホテルの火事は中層…俺達が泊まっていた改装だけのようだった。

上層、下層には燃え広がっていなかった所を見るに、箒がフリーズフレイムで火力を抑えたのだろう。

「どうして可能性を知っていたんだい?」

「エアリアルに聞いた。カルタフィルスの存在は英国魔法学院にハッキングして調べた」

「あれは君だったか…。知り合いの事務員が嘆いていたよ」

「しらんな」

それよりも気になる事がある。

「何故カルタフィルスが姉さんを襲うのかを教えてくれ」

それだけがわからなかった。

「簡単だ。カルタフィルスはキメラの材料を欲しがっている」

「キメラ?人を材料にか?ハガレンみたいに?」

「そう。まさしくマンガのようにね」

「ふーん…」

「カルタフィルスは強力なキメラを作る為に、必要な材料を探している…と私は推測している」

「それで人類最強である姉さんの肉体を欲しがっているとでも?」

「そうらしい」

臥煙と話していて、感じた事がある。

「さっきからなんか曖昧な答えばっかりだな」

『私は何でも知っている』とか言ってたけど、あれはハッタリなのだろうか?

「当たり前だろう。カルタフィルスは全てが謎なんだよ。
経歴も、年も出身も…。
キメラの材料を探しているというのもここ数年のカルタフィルスの行動から推測しているにすぎない」

「会った事はないのか?」

「さっきブリュンヒルデに助太刀した時遠目に見ただけだね」

「逃したのか」

「今は後輩の式神に追わせているよ」

あぁ…式神童女か…。

「他に聞きたい事はあるかい一夏君?」

「無いな」

「そうかい。じゃ、本題に入ろう」

カルタフィルスの件が本題じゃなかったのか。

臥煙が本題と言うのなら、それは本題以外の何物でもないのだろう。

そして怪異退治の専門家の元締めが本題に据える程の事となれば一つ。

「君の事だ。その黄金の瞳についてだよ。
デストピアの眷属」

臥煙が俺を指差す。

心臓を指差す。

まるで銀のナイフを突きつけるように。

「退治するか? 全力で抵抗させてもらうが」

「いや、私達では君を殺す事も封印することもできない。
君は吸血鬼でなくとも十分に強く、かつ君を敵に回すのはかの束博士を敵に回すこと」

そうだろうな。ブリュンヒルデとレニユリオンを敵に回せばいかにこの元締めと言えど苦戦は免れないだろう。

「だから、一つ提案…いや、取引がしたい」

「どんな?」

「織斑一夏君。怪異退治の専門家にならないかい?」

そうきたか。

「対価は無害認定?」

「それに加えて怪異に巻き込まれた場合はバックアップしよう」

さて、メリットはいろいろあるだろうけど…

「面倒だからやだ。こっちはあんた等が何もしなけりゃ何もしない。
それでいいじゃないか」

臥煙がため息をついた。

「やっぱりこうなるか」

「なんだ予想してたのか。ならいいだろう」

「名前だけでも入って貰わないと困る。
君がこちら側でなければ無害認定を無視する輩が当然出てくるだろう」

「要するに俺とかな…デストピアが人類に敵対しないっていう確証が欲しい訳?」

「その通りだよ」

「確約しかねる」

なぜか?だって人類が束さんを殺そうとしたら全力を…吸血鬼の力さえ使って報復するからだ。

「どうしてもかい?」

「どうしてもだ。俺はあんたの下にはつかない」

「やれやれ、強情だねぇ」

「だって、名前だけでも入れたらなんだかんだ言いつつ仕事押し付けてくるだろう?」

「まぁ無いとは言えない。君がこちらへ来れば、正面戦闘の最高戦力はおそらく君だろうからね」

そらみろ面倒極まりない。

「なら外部協力者でどうかな? それなら私には直接の命令権は存在しない」

「どうしてもか」

「ああ」

仕方ない。そこで妥協するかな…

「わかった。ただし仕事は受けないからな」

そのあと一通り話し合った。

「最後に」

まだ何かあるのか…?

「最後にデストピアに会わせてくれ」

はいはい…

「奏」

照明に照らされてできた影から、奏が出てくる。

電気を消した暗い部屋ではわからなかったが、その金髪は金糸のように輝いている。

バーの薄暗い照明の中だが、いやだからこそ光を受けるブロンドが美しくはえる。

「お初にお目にかかる。デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」

「そうか。で、俺様に何の用だ?」

奏は臥煙をどうでも良さそうに見ている。

まぁ、奏からすれば俺やアセロラ姫以外の人間は『不味い物』扱いだろうけど…。

「一つ聞きたい。何故今になって君のような怪異が顕れた?
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター。決死にして必死にして万死の吸血鬼と呼ばれながら数世紀の間沈黙を保っておいて何故?」

「俺様は旨い血がのめればそれでいい。
だから、お前達に敵対する気もなけりゃ不味い血を飲む事もねぇ」

「そうかい」

臥煙安心したような顔を見せた。

「ただし、俺様の大事な食料に手を出したら…殺すぞ」

それだけ言うと、奏は俺の影の中へと沈んで行った。

「そういう事だ。俺達は帰らせて貰うぞ臥煙」

最後にスマホのプライベートナンバーを書いた紙を置き、バーを後にした。












「一夏!」

姉さん達が移ったホテルへ向かうと、姉さんに抱きつかれた。

「おっとと…」

「心配っ…したんだからなっ…」

「ごめん、姉さん。
でも、全部終わらせて来たよ」

ヴィーティングを殺した。

その子飼いの私兵もろとも。

「父さんと母さんの仇を取ってきたよ…」

「そう……か……」

それよりも。

「カルタフィルスに襲われたって本当?」

「ああ。だが、あれしきの事はなんともない」

「そう…よかったよ」

姉さんなら、不死の聖人でも倒せるだろう。

「大丈夫。俺は姉さん達から絶対に『眼』を離さない。だから、安心して」

どれだけ離れていようと、どれだけ壁があろうと、メティス・サイトは全てを見抜く。

万能に限り無く近い瞳。

「一夏。お前の瞳をみせてくれ」

「いいよ。パレード ディキャスト」

術を解き、瞳を顕す。

「綺麗…だな。綺麗で…頼もしい」

「ありがと。姉さん」

「叶うなら、叶うならば、その眼を隠さないでくれ。お前がその目を隠さなければいけないなんて、私が気に食わん」

「ん。わかった」

周りへの言い訳なら、どうとでもつく。

常時パレードを使うのもどうかと思っていたところだ。

それに、眼を顕せば眼の力は向上する。

「誰かがお前の瞳を笑うなら、私がぶっ飛ばす」

「うれしいよ。姉さん」

「もし、その瞳が戦争の火種になりうるなら、なったなら、全ての敵を一刀のもとに切り伏せよう」

「わかった。その時はおねがいね。姉さん」

「ああ。任せろ」

side out









同ホテル 某室

「ふー…」

「どうした?姉さん」

ツーベッドルームの片方のベッドで寝転がる束のため息に、もう片方で手枕をしている箒が尋ねた。

「んー…ちーちゃんって『護られてる』なぁっとおもってさぁ~」

「護られてる? それは私と姉さん…」

箒が目の前で眠る少女に眼を向けた。

「そして円香も同じだ。アイツの瞳は何時だって私達を見ている。何時だってアイツはすぐ側にいる」

「そうじゃない。そういう意味じゃないんだよ箒ちゃん」

「?」

「ちーちゃんは、『処女』のままだ」

「それが…?」

箒は、義姉の葛藤を知っていた。

自ら肉親へ、家族愛とは異なる愛を向けてしまった義姉の葛藤を。

「あー…さっきから回りくどい言い方してごめんね箒ちゃん…。寝てても、あんまり小さい子に聞かせる話じゃないからね…」

束はそこで言葉を区切った。

『ちーちゃんは、未だに人を殺した事がないんだ』

ISによる量子通信で、続けた。

『普通そうだろう…? 私も、その意味でなら「処女」だ』

『「普通」はね…。いっ君は、親の仇を撃つのにちーちゃんを動向させなかった。
いっ君なら、ちーちゃんの胸の内を、殺意を、怒りを、知っているはずなのに』

束は橙が送信した『処刑映像』を見ながら、自身が初めて『ニンゲン』を殺した時の事を思い出す。

『兎も角私もいっ君も、ちーちゃんと箒ちゃんの手を汚させる事はしないよ。
だから、安心して』

事実、カルタフィルスとの戦闘では、束は箒に攻性魔法を撃たせず、防御魔法だけを使わせた。

『もし、そんな事が有ったなら、私は迷わず人を殺める。それだけの力を持っている。その力の責任は取らなければいけない』

それは一夏が教えた事だが、千冬も似たような事を常々言ったいた。

一夏は、現代魔法の汎用性故に人を殺めうる危険性を。

千冬は刀の重さを例えに、他者を傷付ける事の責任を。

『若いね…箒ちゃんは』

どことなく寂しそうに言った束に、箒は何も返さなかった。

『今日さ、ちーちゃんは初めて「人」を斬ったんだ』

カルタフィルスの片腕を…

『だから、一夏を千冬さんに譲ったと?』

『そう…だね。余計なお世話かもしれないけど、いっ君ならどうにかしてくれるよ。
だって…』






『私達の、白銀の王子様なんだからさ!』
 
 

 
後書き
千冬と箒に実戦をさせたくてカルタフィルスを出しましたが、復讐編が長くなりすぎたのでカットです。 
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