ドリトル先生と和歌山の海と山
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第九幕その八
「昔は高野山は女の人は入られなかったんだ」
「女人禁制だね」
王子がすぐに言ってきました。
「そうだったね」
「そうだよ、明治まではね」
「かなり長い間そうだったんだね」
「それで奈良の長谷寺や室生寺が代わりの修行の場所になっていたんだ」
「女の人、尼さん達のだね」
「そうだったんだ」
こうお話する先生でした。
「そうしたお寺がね」
「そういえばああしたお寺はあれだよね」
「うん、女人高野と呼ばれていたね」
「高野山が女人禁制だったから」
「そう呼ばれてもいたんだよ」
「そうだったんだね」
「長谷寺は僕達も行ったけれど」
奈良に行ったその時にです。
「女の人達はあのお寺に入っていたんだ」
「あそこも昔で言うと凄い場所にあったよね」
「そうだよね」
「うん、かなりね」
「そして女の人が高野山に入られるのはここまでだったんだ」
明治まではというのです。
「昔は高野山に至る七つの入り口全部にあったけれど」
「今はここだけなんだ」
「女の人も入られる様になったから」
それでというのです。
「今はここに残っているだけだよ」
「そうなんだ」
「では中に入ろうね」
先生がここでも案内してでした、そのうえで。
皆はその女人堂に入りました、そこはどういった場所かといいますと。
沢山の仏像が祀られていました、トミーはそのうちの女の人の仏様を見てすぐにこうしたことを言いました。
「弁財天ですね」
「そうだよ」
先生はトミーにすぐに答えました。
「この仏様はね」
「芸術を司ってるんですよね」
「そして七福神でもあるよ」
「そのうちの一人ですね」
「弁天様とも言われてるね」
「日本ではかなり馴染みのある仏様ですね」
こうも言ったトミーでした。
「この仏様は」
「そうだね、ただ七福神はね」
「神様と仏様が混ざった」
「何か僕達から見るとおかしいね」
「そんな感じもしますね」
「そこは日本だからね」
この国ならではというのです。
「それもあるんだ」
「そうなんですね」
「そして弁天様は色々な場所で信仰されていてね」
この高野山だけでなくというのです。
「大阪でも弁天町って場所があるね」
「あっ、そうでしたね」
「そして鎌倉でも信仰されているよ」
関東のあちらでもというのです。
「白波五人男でも出て来るよね」
「弁天小僧ですね」
「そう、五人男の一人でね」
「ええと、日本駄右衛門があれだね」
「五人男のボスだったわね」
チープサイドの家族は以前先生がお話していた白波五人男のお話を思い出しました、先生は最近歌舞伎も学んでいるのです。
「確かね」
「びしっとした中年の男の人で」
「忠信利平もいるね」
ジップはこの人の名前を出しました。
「江戸生まれだったって言ってるね」
「赤星十三郎はその忠信の主筋だったわね」
ダブダブはこの人のことを思い出しました。
「あの前髪立ちの人ね」
「そして赤星と同じ前髪立ちが弁天小僧」
「名前は菊之助だったね」
オシツオサレツは二つの頭でお話をしました。
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