リング
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46部分:エリザベートの記憶その二十四
エリザベートの記憶その二十四
「それを返す為にも。どのみち行かなければならない」
「ではお待ちしております」
エリザベートはそう言うとすうっとその身体を浮かした。
「来たるべき場所で。それではまた」
そして彼女は消えた。ここでタンホイザーは目が覚めた。
「今のは」
夢だとわかっていた。だがそれは夢とは思えぬ程現実の感触があるものであった。
「エリザベート」
そしてあの少女の名を呟いた。彼はベッドから出た。そしてその日のうちに王に面会に出た。
「行くのか、また」
「はい」
タンホイザーは応えた。王の前に跪いている。
「私の我儘を御許し下さい」
「我儘ではない」
だが王はそれをよしとした。
「ニーベルングはどのみち討たねばならぬ」
「はい」
「その為の兵を動かすのは我等の大義でもあるのだからな」
「では」
「うむ。公爵に五個艦隊を授ける」
彼はこう宣言した。
「その戦力でワルキューレと合流せよ。そしてヴァルハラ双惑星に向かえ。よいな」
「畏まりました。それでは」
「うむ。して公爵」
王は立ち上がったタンホイザーに対してまた声をかけてきた。
「はい」
「これからの戦いだが」
王はさらに言葉をかけてきた。
「武運長久を祈るぞ」
「有り難うございます」
こうしてタンホイザーはチューリンゲンを発った。そしてまずはラインゴールドに向かった。そこにはもうワルキューレの艦隊が集結していた。
「来ると思っていたぞ」
ジークフリートがローマのモニターに姿を現わした。
「ヴァンフリート殿か」
「行く先はわかっているな」
「無論」
彼は答えた。
「その為にここに来たのだからな」
「そうか、では行こう」
タンホイザーはまた言った。
「ヴァルハラにな」
「うむ」
二つの軍が一緒になった。そしてそのままラインゴールドを発ちヴァルハラを目指す。彼等もまたその運命に従い次の戦場に向かったのであった。
エリザベートの記憶 完
2006・2・25
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