転生とらぶる
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ペルソナ3
番外編075話 その頃のホワイトスター
「ほら、これでいいのかい?」
そう言ってフェイトがレモンに渡したのは、魔法球。
……ホワイトスターの魔法区画には魔法球が設置されているのだが、ちょっとした事情で魔法球が必要となった為に、レモンはフェイトに魔法球を購入してくるように頼んだのだ。
魔法球というのは、マジックアイテムの中ではかなり高価な代物だ。
それこそ、性能――中の広さや外と中の時間差等――によって、大きく変わる。
そんな中でフェイトが購入してきたのは、外の1時間が中の48時間という、シャドウミラーで使われている魔法球と全く同じ物……つまり、かなり高性能な物だ。
もっとも、広さは技術班の面々が入り浸っている物と比べると比較的狭いので、値段の方はそれに比例するように幾らか安かったのだが。
それでも普通に買うにはかなり厳しく、魔法界との貿易で得られた資金や、ネギま世界の火星で得られた利益をそれなりに消費する事になってしまったのは当然だろう。
「それにしても、良かったのかい? アクセルがいない状況でこんな風に勝手に魔法球を買ってしまったりして」
そう言いながらもフェイトはテーブルの上に置かれているコーヒーの香りを楽しむ。
ここは、ホワイトスターにある店の中でも、コーヒーが美味い店として有名な喫茶店だ。
いつもはアクセルに付き合って紅茶を飲んでいるレモンだが、基本的に紅茶派という訳でも、コーヒー派という訳でもなく、どちらも飲める。
だからこそ、ここでもフェイトと同じようなコーヒーを注文し、その味を楽しんでいた。
「いいのよ。アクセルがいつ戻ってくるのか分からないんだし。ニヴルヘイムの時だってそうだったし」
「ふーん。……でも、君は……いや、この場合は君達はという表現の方がいいのかな。アクセルが心配じゃないのかい?」
「心配だけど、心配をしてもしょうがないというのが正直なところね」
そう言ったレモンは、気怠げに桃色の髪を掻き上げる。
妖艶な女と10歳かそこらの子供。
レモンとフェイトは傍から見れば、どのような組み合わせなのか首を捻ってもおかしくなかったが、本人達は全く気にした様子もない。
レモンはイチゴのタルトを口に運び、それを味わってから再び口を開く。
「今まで、何度アクセルが唐突に他の世界に飛ばされたことがあったと思う? それでも、全く問題なく帰ってきてるでしょ。……きっと今頃、他の世界でも新しい女を手籠めにしている頃よ」
そう告げるレモンだったが、実際にゆかりと美鶴という2人の女をクリスマスイブとクリスマスにホテルで頂いてしまっている以上、アクセルもそれに反論は出来ないだろう。
もっとも、それでもアクセルを心配していない訳ではないのだが。
「それで、一応僕もシャドウミラーの一員なんだし、聞かせて貰おうかな。この魔法球は何に使うのかな。今のところ、そこまで魔法球については特に必要としていなかったと思うけど」
「W世界とSEED世界、ギアス世界、マブラヴ世界、マクロス世界、ナデシコ世界。……これがどのような世界か、分かる?」
その言葉とレモンの立場から、すぐに何の為に魔法球が必要になったのか分かったのだろう。フェイトは少し呆れた様子で口を開く。
「技術班はそれぞれの世界の機体を多少なりとも保管していると聞いてるけど? わざわざ機体の製造施設を用意する必要があるのかい?」
「あるのかないのかで言われれば……多分ある、としか言えないのよ。今でこそホワイトスターは他の世界と繋がっているけど、それがいつまで続くのかは分からないもの。もしもの場合を考えて、それらは必要よ。基本的に流れ作業だから、品質チェック用の量産型Wも少なくて済むし。……もっとも、KMFはサクラダイトが必要になるから、ギアス世界との行き来が出来なくなれば、こっちに保存してある分だけしか作れないんだけど。それにマクロス世界のVFは数機種程度しか作れないようになっているし」
「なるほどね。……まぁ、そっち関係は僕には興味がないから、それでもいいけど。なら……」
「フェイト!?」
フェイトが何かを言おうとした時、そんな声が店内に響く。
それが誰の声なのかは、それこそ考えるまでもなく、フェイトには……そしてレモンにも分かった。
「やあ、お揃いだね。ウィンダミア王国の起こした紛争でケイオスに派遣されてたんじゃなかったっけ?」
それをフェイトが知っているのは、フェイトの部下……仮契約の相手にワルキューレのファンがいるからだ。
ちなみに、他にもシェリル派、ランカ派、ミレーヌ派といった風に別れてもいるのだが。
「今、丁度帰ってきたところだろ。ったく、ウィンダミア人は強いって言うからちょっと期待してたけど……生身での戦いだと五飛の方が上だったぜ?」
「ふんっ」
アウルの言葉に、五飛は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
そんな五飛を落ち着かせるように、スティングが口を開く。
「ほら、五飛も落ち着けって。レイも何か言えよ」
「五飛の気持ちも分からない訳じゃない。だが……やはりアルトロンガンダムをそのままというのは、色々と厳しいんじゃないか?」
「いや、そういう事を言いたいんじゃなくてだな」
はぁ、とスティングは溜息を吐く。
アウル、スティング、レイ。
この3人は、元々出身が同じ世界という事や年齢が近い事もあり、一緒に行動する事が多かった。
そんな中、W世界でアクセルと出会い、そのアクセルを倒すという目標を持った五飛はシャドウミラーに所属し、年齢が近いということも関係してアウル達と一緒に行動する事が多くなった。
五飛はガンダムパイロットとして、W世界では有数の技量の持ち主ではあったが、それはあくまでもW世界という、1つの世界での話にすぎない。
シャドウミラーの実働班で見れば、実働班予備軍の精霊の卵のパイロットには勝てるものの、幹部達が相手となれば下から数えた方が早い……といったくらいの技量だった。
いや、この場合はW世界しか知らなくても超一流すら超えた先にいる技量を持つシャドウミラーの幹部達を相手に、多少なりとも白星をあげている事に驚くべきか。
ただし、その勝率の低さには乗っている機体の性能も大きく関わっている。
五飛の愛機アルトロンガンダムは、W世界の中ではトップクラスの性能を持つ機体ではあるが……幾多もの世界から技術を集めているシャドウミラーにとっては、明らかに性能不足の機体だ。
だが、五飛にとってアルトロンガンダムは思い入れのある機体で……そうである以上、シャドウのようにより性能の高い機体への乗り換えも拒否している。
そんな訳で、現在アルトロンガンダムの改修が計画されているのだが、他にも色々とやる事があって手が回っていないというのは正直なところだ。
特に技術班の面々は、自分の研究に集中しすぎるという点も多いのが、五飛にとっては不幸だろう。
「取りあえず、ウィンダミアの件はケイオスからの依頼通りに無事解決したぞ」
「そう、ありがと。アウル達に任せてよかったわね。それで、報酬の方はいつくらいに?」
「あー……どうだっけ?」
レモンの言葉に、アウルの視線がレイに向けられる。
この四人の中で一番冷静な性格をしている為に、現場での交渉等は任されていた為だ。
「新型の新マクロス級……という表現は多少変ですが、とにかくそのマクロス級は予定通り今回の報酬として譲渡されるとの事です。ただ……あくまでも次世代のマクロス級の雛形として作られた実験艦ですので、その大きさはフロンティア船団の数倍はあります。アクセル代表がいない状況でホワイトスターに運ぶのは……」
難しいです、と。レイが言葉を濁す。
今回マクロス世界でウィンダミアが起こした内乱。
ヴァールシンドロームという奇病を使い、統合軍を含む兵力を自分達の戦力として利用したその戦法は非常に厄介な代物だった。
特定の素養のあるものだけが何とか対処出来るのだが、当然そうなれば戦力が足りない。
そんな訳で、マクロス世界にあるケイオスという会社はハワードを通してシャドウミラーに接触してきた。
そしてシャドウミラーから出されたのが、この4人。それとメギロートや量産型W、バッタ、カトンボ……といった者達だった。
特に今回は外部武装追加ユニットのファブニールが1機だけ使用が許可され、一騎当千とでも呼ぶべき戦果を示した。
……尚、綾子がアイディアを出したダラニも運用され、相応の結果を出している。
もっとも、ダラニはあくまでも使い捨ての移動装置兼自爆用の兵器だ。
ファブニールに比べると、大きく戦果が下がるのは当然だろう。
結果として、ファブニールの戦果を見たケイオスやそれ以外の組織からも購入出来ないかという打診が来る事になるのだが……シャドウミラーの技術がこれでもかと詰まっている以上、他の世界に販売する予定はない。
異世界間貿易の条約に反しているので、そもそも販売出来ない事になっているのだが。
それでいながらシャドウミラーが他の世界の兵器を購入するのが自由なのは……力関係を如実に示している形だろう。
「まぁ、新型の新マクロス級……ちょっと呼びにくいわね。仮にクレイドルという名前にしておきましょうか。クレイドルはアクセルが戻ってきたら収納して貰うから構わないわよ。……収納というと、あの機動要塞もどうにかする必要があるわね」
五飛の顔を見て、レモンがふと思い出す。
W世界において敗北したOZ。
そのOZが秘密裏に建造していた、リーブラという機動要塞とでも呼ぶべきものがあった。
バルジが消滅――正確にはアクセルが盗んだのだが――した為に、その後釜として建造されていた機動要塞。
秘密裏に建造していたり、膨大な資源が必要となる事もあって結局あの戦争の最中に完成するような事はなかったのだが……戦後、それを連合軍が発見。
政治班の方でも素早くその情報を掴み、アクセル達が連合軍の傭兵として多大な……それこそ、アクセル達がいなければ連合は消滅していてもおかしくなかったといえる程の活躍をした事による報酬として、連合軍がリーブラを完成させてからシャドウミラーに譲渡される事になったのだ。
ちなみに、レモンがフェイトに頼んだ魔法球に使う予定の、リーオー、エアリーズ、トラゴス、キャンサー、パイシーズ、トーラスといったMSの製造工場も、アクセルの活躍に対する報酬の一部だ。
他のもSEED世界のMSやギアス世界のKMF、マクロス世界のVFのように、様々な世界との交渉により、それらを集める事に成功した。
もっとも、その点で頑張ったのは主に政治班なのだが。
「あのリーブラとかいうのか。……正直なところ、俺はああいうのは好かん」
「そう? ああいうのがあると、宇宙とかで凄く便利なんだけどね」
不満そうな五飛に、レモンはそう告げる。
実際、シャドウミラーでもニヴルヘイムという機動要塞を持っているからこその意見だろう。
「けどさ、ああいうのだけ集めてどうするんだよ? ニヴルヘイム、バルジ、リーブラ……それにちょっと違うけどピースミリオンだっけ。後は今回の報酬の新マクロス……じゃなくて、クレイドルだっけ?」
「今すぐどうこうしようというつもりはないけど、何かあった時に使えるでしょ。それに、ああいう巨大建造物の類は、技術を発展したりするのにもちょうどいいし。ああ、ちなみにジェネシスっていうのもあるわよ? アウル……いえ、レイなら知ってるんじゃない?」
「……以前の戦争でザフトが作った戦略兵器ですね」
「ええ。今はアクセルの空間倉庫にあるけど。……一度そういうのを全部集めて、ネギま世界の火星辺りに持っていって、チェックしてみたいんだけどね」
「本気かい? もしそんな事になれば、間違いなく火星は大きな騒動になるから、止めて欲しいんだけど」
黙って話を聞いていたフェイトだったが、ネギま世界での話になるとなれば、口出しせずにはいられなくなる。
「そうなると、火星そのものがシャドウミラーの領土という事になっている、ナデシコ世界がいいかしら。ただ、どうするにしても転移区画には持ってこられないから、アクセルが戻ってくるまで待つしかないのよね」
ナデシコ世界との取引も順調に進んでいる。
ネルガルはシャドウミラーとの取引により、ライバル企業たるクリムゾン財閥を大きく引き離している。
ナデシコも木蓮との戦いで使っていた物から研究が進み、ナデシコBが最近完成したと情報が入っていた。
もっとも、ナデシコB最大の特徴たるワンマンオペレーションシステムプランは、それを使いこなせる者がおらず、適任者が見つかるまでは普通の戦艦と同様に動かしているのだが。
(エステバリスは……防衛用の戦力としてはいいんだけど、シャドウミラーには向かないのよね)
そんな風に思いつつ、レモンは図らずも大量に入手する事になったW世界、SEED世界のMSの生産ラインを始めとして、各種世界から様々な方法で入手した機動兵器の生産ライン、それにニヴルヘイム、ジェネシス、バルジ、リーブラ、ピースミリオンといった機動要塞――正確にはピースミリオンは艦船なのだが――や、ウィンダミアの一件で入手した次世代マクロス級の実験艦とも言うべきクレイドルといった風に、色々と運用について考える必要があるのだった。
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