雷獣
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第一章
雷獣
八条学園高等部で文芸部と演劇部を掛け持ちしている柿原隼一郎は今困っていた、それは彼が所属しているその文芸部と演劇部でのことだ。
まずは文芸部の先輩の国仲佳乃から演劇部の脚本のことで言われていた。背は一六八と高めで黒髪をロングにしていて大人しい大きめの目と楚々とした顔立ちを持っているが胸は九五はありとてつもなく目立っている。
この佳乃にだ、彼はせっつかれていたのだ。
「あの、もうそろそろね」
「はい、文芸部で発表する会誌の作品ですね」
「それ書いて欲しいけれど」
隼一郎に困っている顔で言うのだった。隼一郎の背は一七〇なので佳乃とあまり変わらないが胸のボリュームで押されていた。
「もう柿原君だけだから」
「はい、わかっているんですか」
「書けないの?」
「アイディアが」
どうしてもというのだ。
「湧かないんですよ」
「そうなのね」
「それで書けないんです」
書き手としてよくある問題にぶち当たっている、それで書けないというのだ。
「どうしても」
「ネタが出ないのね」
「はい、わかってるんです」
隼一郎の方でもというのだ。
「僕にしても。ですが」
「ネタが出なくて」
「どうしたものか」
困った顔で言う、彼にしても。
「あれこれネタを探してるんですが」
「出ないのね、ネタが」
「そうです、もうどうしてもなら」
「君の作品は抜きで?」
「発表出来ます?」
「そうもいかないのよ」
隼一郎がそう言ってもとだ、佳乃は彼に困った顔のまま答えた。
「うちの部の会誌は全員参加って決まってるから」
「部員全員のですね」
「ええ、だからね」
それでというのだ。
「どうしても書いて」
「そうしないと駄目ですか」
「そうよ、君は小説メインだけれど」
「もう何でもいいですか」
「ポエムでもいいのよ」
彼が主に書くジャンルではないがというのだ。
「それでもね」
「書かないと駄目ですか」
「ええ、絶対に書いてね」
そこは念押しする佳乃だった。
「いいわね」
「はいと答えるしかないですね」
「そうよ。いいわね」
「はい」
その一つしかない返事で答える隼一郎だった、文芸部でもこうなっていて演劇部でもだった。同級生の松崎杏にも言われていた。杏は茶色の髪の毛を肩まで伸ばしている、右の方にヘアピンがありそれで髪の毛を分けている。やや吊り目の大きな瞳がトレードマークで勝気そうな顔をしている。背は一六〇程ですらりとしたスタイルで脚が健康的な奇麗さを見せている。演劇部では裏方もするが舞台にも出る。演劇部では脚本担当の隼一郎とは違う。その杏も隼一郎に佳乃とほぼ同じことを言っていた。
「あんた今度の舞台の脚本担当でしょ」
「部長さんに言われてね」
演劇部のとだ、隼一郎は杏に答えた。
「そうなってるんだけれど」
「まだよね」
「一行もね」
それこそと言う返事だった。
「書けないんだ」
「そうなの」
「うん、何かね」
どうにもと言うのだった、ここでも。
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