ベル・クラネルが魔剣使いなのは間違っているだろうか
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2話
ここはギルド。多くの冒険者達の情報などを管理、運営をしている場所。
「ベルくん、無茶していないかしら」
「なに~、エイナ。彼氏の心配~?」
「ち、違うよ!まったく、ベルくんはどっちかと言うと手のかかる弟みたいな感じで…」
「はいはい、惚ろけは良いわ。聞きあきたし」
この一見普通のエルフのように見える女性。彼女の名はエイナ・チュール。ベルの担当アドバイザーであり、ヒトとエルフの間に生まれたハーフエルフ。あと、何気に冒険者から(特に男性から)人気である。
「エイナさーーーーーん!」
「ほらほら、早速来たわよ。愛しのカ・レ」
「もう!ミーシャ、自分の持ち場に戻りなさい!」
同僚を持ち場に戻させていつものように笑顔で迎える準備をしていた。
「どうしたの、ベル、く…んって!本当にどうしたの!?血まみれじゃない!」
「こ、これは良いんです!それより見られちゃいました!」
「見られたって……、え?」
「だから、僕のアレを他のファミリアの人に見られちゃったんです!」
エイナは何秒かフリーズした。
「ええええええぇぇぇぇぇぇ!」
彼女の叫び声がギルド内に響き渡ったのであった。
「それでなんで見られちゃったの?」
「えーっとですね……」
場所を防音万全の個室へと移動してエイナはベルから見られた経緯を聞き出した。
「なるほどね。この際、ベルくんが五階層にいたことは目をつぶるとしてミノタウロスが高層に現れるなんて異常ね。一応、報告しておくね」
「はい、よろしくお願いします」
ベルは内心ホッとしていた。エイナからの説教を受けずにすむからだ。
「それよりどこのファミリアの人に見られたの?」
「えっと、それが見られて慌ててたので名前は聞いてないんですけど、綺麗な金色の髪に金色の瞳の女性でした」
「金髪金眼……もしかしてロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンタイン氏じゃないかな?」
「アイズ・ヴァレンシュタインさんってえっと……」
ベルは自らの記憶の糸を辿りながら思い出そうとしている。
「確か『剣姫』の二つ名を持つロキ・ファミリア幹部の女性ですよね」
「合ってるわよ。でも、問題は何処から何処までを見られたかによるわね」
「多分最初からだと思います」
「これは厄介なことになったわね」
ベルの魔法は特殊だがそれだけが理由ではない。隠すにはそれなりの理由があるのだ。
「すいません、エイナさん。エルフ(じぶんたち)の敵である僕の魔法を隠してくれていたのに…」
「ううん、気にしないで。それにベルくんが酷いことをしたわけじゃないんだからベルくんを恨んだり、敵対するわけ無いじゃない」
「でも、僕は魔剣使いですから…」
魔剣使い。それはこの世界に存在する魔法を放つ剣ではなく様々な形をもした武器たちにそれぞれ意思があり魔法のような剣、『魔剣』を扱う者のことである。
そしてかつてまだ魔剣貴族クロッゾ一族が生まれる前にエルフの里を一人で壊滅までに追い込んだ存在でもある。故にエルフの血を引くものからは忌み嫌われている存在である。
「それでもよ。だってベルくんはそんな印象を変えたくてこのオラリオに来たんでしょ?」
「……はい。そうでした。ありがとうございます、エイナさん」
「気にしないで。それより問題はこの事が他の誰かつまり第三者に広がる可能性があるってことだよ」
「恐らく同じファミリアの人たちには知られてしまいましたよね」
「恐らくね」
二人はロキ・ファミリアのメンバーには知られてしまったと言う可能性を考えた。
「僕、明日無事に生きているでしょうか…」
「だ、大丈夫よ!」
「でも、ロキ・ファミリアには多くのエルフがいますし、なにより王族までも一緒ですから」
「リヴェリア様、ね。大丈夫だと思うんだけど」
このオラリオにはさまざまな種族が数多く存在しているがロキ・ファミリアには王族の末裔である女性が存在する。しかもLv.6だ。ベルでは到底相手に出来ない存在である。
「まあ、一応主神である神ヘスティア様にもちゃんと話すのよ」
「はい、今日もありがとうございました。エイナさん」
「良いのよ。それじゃあ、また明日ね」
「はい!それでは!」
ベルはそのまま走って帰っていった。
「うふふ、ああいう姿を見ると本当に弟みたい」
「エイナサーーん。大好きでーす!」
「ふぇ?」
立ち止まって振り返ったと思ったら行きなりの告白にエイナは再びフリーズした。
「あらあら、愛されてるね。エ・イ・ナ♪」
「ミーシャ!!」
再び同僚に弄られる嵌めになったエイナであった。
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