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から傘

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第四章

「雨はとりあえず今日まで」
「大阪の雨はだな」
「ああ、そうしてな」
 小僧はその傘に話していた。
「暫く大阪に雨は降らさせない」
「それが神様達のお考えか」
「それでおいら達は今から奈良に行ってな」
「今度はあっちに雨を降らせるか」
「ああ、そうしろってな」
「おめえが神様に言われたか」
「おめえもそれでいいよな」
 小僧は傘に尋ねた。
「それで」
「おいらは何処でもいいさ、それじゃあな」
「ああ、今からな」
「奈良に行って一緒に雨を降らそうぜ」
「そうしような」
 こうした話をしてだった、二人は八条鉄道の梅田駅の方に向かった。八条鉄道は奈良の方にも路線を持っているのだ。
 その彼等が視界から消えてだった、結衣は勇人に言った。
「ねえ、あれって」
「うん、妖怪だよね」
「あの子供はね」
「絶対に雨降り小僧だね」
「そうよね」
「それで傘はね」
「絶対にから傘よね」 
 こう勇人に尋ねた。
「目とお口と手足があったし」
「喋ってたしね」
「どう見てもね」
「妖怪で」
 それにと言うのだった。
「それでね」
「あの妖怪がね」
 まさにと言うのだった。
「ずっと大阪で雨を降らせていたのね」
「そうみたいだね」
「道理でね」
 苦い顔で言う結衣だった。
「雨がずっと続いた筈よ」
「実際に雨降り小僧がいたらね」
「しかもから傘も一緒だと」
 雨にまつわる妖怪達がセットならというのだ。
「その分ね」
「妖怪が多いのも当然だね」
「全くよ、けれど奈良に行くって行ってたわね」
「八条鉄道の方に行ったからね」
「あそこから難波に行ってそうして?」
「そこから奈良に行くんだろうね」
 勇人はそこまで考えた、路線の状況は近鉄線と非常に似ているのだ。
「そうだろうね」
「そうよね、それじゃあね」
「まずは雨がこれで止むかな」
「そうなることを願うわ」
 結衣はこの言葉を心から思って出した、この時はそう願っただけであったが実際にだった。
 暫くして、結衣が自分の家の最寄り駅に降りた時にはもう雨が止んでいた。それで家に帰ってから勇人にスマホで笑顔で言った。
「雨止んだわね」
「うん、こっちでもだよ」
 勇人も結衣に笑顔で応えた。
「雨止んだよ」
「じゃあやっぱりね」
「今の雨はね」
「妖怪の仕業だったのね」
「そうみたいだね」
「何かね」
 ここでこう言った結衣だった。
「道理で、よね」
「雨が多かったっていうんだ」
「ええ、妖怪だったら」 
 それこそというのだ。
「雨にまつわる妖怪だったらね」
「雨も降らせるっていうんだ」
「だからね」
 それ故にというのだ。
「これも仕方ないわね」
「そう言うんだ」
「ええ、けれど妖怪がいなくなったから」
「それでだね」
「明日から晴れるわね」
「うん、じめじめした日々もこれでね」
「とりあえずは終わりね。梅雨まではね」
 それこそと言う結衣だった。
「晴れていて欲しいわ」
「じゃあ雨降り小僧とから傘は」
「奈良に行くって言ってたし」
「暫く奈良か」
「他の何処か。出来たら日照りのところに行って欲しいわ」
「当分大阪にはだね」
「来て欲しくないわ」
 心から行ってだ、そうしてだった。
 結衣は勇人にまた明日と言ってそうしてからだった、これで明日から晴れると喜んだ。そして実際に次の日の朝は晴れていて結衣はこのことを心から喜んで勇人と一緒に学校に行った。


から傘   完


                  2018・5・23 
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