リング
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224部分:ラグナロクの光輝その七十八
ラグナロクの光輝その七十八
「全ては終わりました。クリングゾル=フォン=ニーベルングは倒れました」
「そうだったんですか。それで」
「それでとは?」
「いえ、それで」
若い将校が彼に答えた。
「帝国軍の動きが急に鈍くなりまして」
「ふむ」
「それをついて決着がついたのですが。そうした理由からですか」
「彼らもまたニーベルング族ですから」
パルジファルは虚脱状態に陥っている帝国軍の将兵を見て述べた。
「主が死んだならば。おのずとそうなるでしょう」
「既に館の周りでの戦闘は全て終わりました」
彼はまた述べた。
「そして惑星全体でも」
「総帥」
遠くからワルキューレ達がやって来た。
「貴女達も御無事でしたか」
「ええ。ニーベルングは倒れたのですね」
「はい」
パルジファルは彼等にも答えた。
「自ら命を絶ちました」
「そうですか」
「それでベルセルクもまた」
「抜け殻のようになったのですね」
「御存知でしたか」
「ここもそうでしたから」
パルジファルはまた述べた。
「そうではないかと思いました」
「その通りです」
「これで全ては終わりました」
彼女達は言う。
「ラグナロクはこれで」
「そして私達の輪廻もまた」
「戻りましょう」
パルジファルは彼女達と兵士に対して言った。
「ノルンへ。全てのはじまりの場所へ」
「わかりました」
「それでは時の女神達の庭へ」
七人と乙女達、そして将兵達はニブルヘイム及びラインから引き払った。その後には何も残ってはいなかった。そう、何も。神々の黄昏は終わったのだから。後に残るのは何もなかったのであった。
やがてクリングゾルと帝国軍の将兵達が葬られた。残った帝国軍の者達は一人残らず投降しここに帝国は潰えた。最後にあるのは人間達であった。
パルジファルはかってノルンにおいて自身の宮殿であった神殿にいた。そこで六人の同志達と相対していたのであった。
「全ては終わりました」
まずはパルジファルが述べた。
「何もかも。そして私達はここにいます」
「まず一つ聞きたいことがある」
ヴァルターが最初にパルジファルに問うた。
「何でしょうか」
「投降した帝国軍の者達はどうするのだ?」
「彼等のことなら問題はありません」
パルジファルはすぐにそれに答えた。
「最早ニーベルングは倒れました」
「うむ」
「その束縛も血脈も存在しません。彼等はもうニーベルング族ではないのですから」
「では彼等はこのまま解き放ってよいのか」
「はい」
パルジファルはこくりと頷いた。
「何も問題はありません」
「わかった」
「ではそのようにする」
「そしてだ」
今度はタンホイザーが問うてきた。
「何か」
「アルベリヒ教団もまた何もしなくてよいのだな」
「ニーベルング族が潰えましたから」
パルジファルはそれにも答えた。
「何も心配はいりません。ニーベルング族が潰えた今アルベリヒ教団も同じです。彼等もまた滅んだのです」
「アルベリヒ教団もか」
「そういえばホランダー族だが」
彼等と縁のあるローエングリンからの言葉であった。
「彼等はどうなるのだ?」
「彼等とのしがらみが消え去るのは長い時間がかかるでしょう」
それがパルジファルの言葉であった。
「第四帝国、そして狂った科学者達の悪行は深い傷跡を残しています」
「それは容易には消えはしないか」
「残念ながら。ですがもう第四帝国はありません」
第四帝国もまた輪廻の中に消え去ってしまっていた。もう影も形もなかった。
「しかしそれもまた解決されていくでしょう」
「私によってか」
「はい、ホランダーとアースの血を受け継いでいる貴方によって」
パルジファルはジークフリートに顔を向けていた。
「もう血脈による因果は終わったのですから」
「ニーベルングは確かに終わった」
「ええ」
「そして今度はアース、そしてホランダーということだな」
「そうなるのです。全ては定められています」
「ニーベルングがなくなったのか」
ジークムントはふと呟いた。
「こうこれで。メーロトみたいな奴はいなくなるんだな」
「そして貴方達の様な運命の持ち主も」
「それでよかったんだな」
ジークムントはそれを聞いてまた呟いた。
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