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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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切り札

 
前書き
今回は原作部分も多く巻き込んでのお話。ここからかなり面倒くさい展開になってくると思います。マジで。 

 
メイビスの鼓舞を受けて持ち直したフィオーレ軍。それを見ていたアイリーンは次なる一手を打った。


「おぉお・・・」
「おお!!」

エルザたちが交戦していたアルバレス軍に電撃のようなものが走ったのだ。それを受けた彼らは徐々に変化していく。

「何だ!?」
「敵兵の様子がおかしいぞ!?」

アイリーンの付加(エンチャント)を受けたアルバレス軍。彼らは姿が変化したかと思うと、一斉に妖精の尻尾(フェアリーテイル)へと襲い掛かった。

ガキィン

「くっ!!」
「エルザ!!」

これまでエルザに抑え込まれていたアルバレス軍が彼女を弾き飛ばしたのだ。それを皮切りに次々と彼らの猛攻に押されていく。










狂戦士(バーサーカー)はその者の能力を何倍にも膨らませる。思考を失うのは玉に傷だが」

アイリーンの付加により力を増したアルバレス軍の猛攻が始まった。ダメージを与えようとそれをもろともせずに向かってくる男たち。それに誰もが恐怖を感じてしまう。

「さぁ、どうする?メイビス」



















その頃そことは別の地では・・・シリルside

「カナさん!!」
「シリル!!セシリー!!」

地上に降り立った俺たちはすぐさまカナさんが抱えているギルダーツさんに駆け寄る。

「大丈夫!!まだ生きてます」

辛うじてだけど息がある。今ならまだ治すことはできるはず!!
すぐさま治癒魔法を開放してギルダーツさんの傷口へと当てる。しばらくすると、彼の怪我は表面上わからないほどには回復させることができた。

「これで大丈夫です」
「よかった~」

あと少し見つけるのが遅かったら手遅れだった。そう言う意味では運良く通りかかることができてラッキーだったかもしれない。

「ギルダーツ・・・よかった・・・」

安堵のあまり父であるギルダーツさんへと抱きつくカナさん。普段はそういう仕草を見せない彼女だけど、こればっかりは仕方ないだろう。

「うぅ・・・」
「ギルダーツ!!」

その時、ギルダーツさんが目を覚ました。でも傷は治ったとはいえダメージは色濃く残っているため、動かないようにしてもらわないと。
そう伝えようとしたその時だった。

「ここから離れろ・・・」
「「「え?」」」

目覚めたかと思った途端にその発言。彼がなぜそんなことを言うのかわからなかった俺たちは顔を見合わせた。

「早くしろ・・・ヤバイ奴が・・・」
「もう来ているよ、ギルダーツ・クライヴ」

その声が聞こえた瞬間に俺たちはそちらを向いた。そこにいたのは、黒装束で顔を隠している男。

「な・・・なんだこの魔力・・・」
「こいつヤバイよ~」

見た瞬間にわかる。こいつは間違いなく強い・・・それも、ハルジオンから攻めてきた天海と同等か、それ以上だ。

「何者だ!!あんた!!」

ギルダーツさんを守るような形で立つカナさん。俺たちも彼を守るような布陣になると、青年はわずかに見える口元を緩ませた。

「俺の名前はティオス。マカロフから聞いてるだろ?スプリガン16(セーズ)の一人だよ」
「「「!!」」」

ティオスって言えば確か神の子と称されるほどの実力の持ち主であるはず・・・そんな奴なら、確かにこれだけの雰囲気を持っていてもおかしくはないか。

「あんたがゼレフの子供って話の・・・」
「??子供?」

わずかに持っている彼の情報。それが突破口に繋がるかはわからないが、確認しておいて損はないはず。そう思っていたのだが、カナさんの発言を聞いたティオスは思わず吹き出していた。

「何笑ってるんだ!!」
「そりゃあ笑うよ。俺が黒魔導士の子供だなんて・・・」

マスターから聞いた情報ではゼレフには一人子供がいて、それがティオスなのではって話だった。確かにこいつはゼレフに似ている魔力を持っている。それなのに、今ので笑うってことは違ってことか?

「まぁ半分くらい正解だけど」
「「じゃあなんで笑ったんだ!?」」

急に真一文字に結ばれた口から放たれた強烈なボケに突っ込まずにはいられなかった。何なんだこいつ、誰かに似てる気がするぞ?

「ま、そんなことはどうでもいい。俺は俺のやるべきことをやらねばならない」

地面を蹴るティオス。その瞬間、俺は嫌な予感がしてすぐさまジャンプした。
すると、俺がそれまでいた場所は一瞬のうちに凍り付いてしまった。

「氷の魔法!!」
「それもかなり速いよ~!!」

地面を蹴ることで魔法を発動させたのは言うまでもない。しかし、それが一瞬のうちに離れていた俺にまで届いていたということは、相当のやり手であることがわかる。

「相変わらず勘がいい。いや、目がいいのか?」

一撃で決めたかっただけにこの失敗は彼にとって非常に大きいはず。ここからどうするべきか悩んでいるティオス。そんな彼に俺は気になったことを問いかけた。

「俺とお前は会ったことがあるのか?」

相変わらずという言葉がどうにも引っ掛かった。俺にはティオスなんて知り合いはいないし、ましてやこんな敵になる氷の魔導士なんて知りもしない。すると、彼は迷ったような仕草を見せる。

「・・・それはまだ知らなくていい。いずれわかることだから」

いずれわかる?この戦いの最中に知ることができるってことか?でも、それじゃあさっきの一撃で仕留めようとしたことと矛盾してしまうような・・・

「シリル・・・お前はここから離れろ」

なんて思っていると、倒れていたギルダーツさんが突如立ち上がりそんなことを言い出した。

「離れろって・・・それじゃあこいつはどうするんですか!?」

思わず口調が強くなってしまった。こいつが俺にターゲットを絞っているのなら、むしろ俺がこいつを引き受けた方が遥かに理に叶っているはず。

「こいつはお前に逃げられたら困るんだ・・・だから早々に万全の状態のお前を狙ってきた」
「「「!!」」」

言われてみるとそうかもしれない。この場面、後ろには瀕死のギルダーツさんがいた。カナさんもオーガストとの戦いのせいで大ケガをしている。二人を先に凍らせておけば邪魔をされずに俺を倒せるはずなのに、あえて先に狙ってきた。それは二人を抑えている隙に俺が逃げる可能性を危惧してのことか。

「俺が仲間を見捨てるはずないでしょ」

仮に二人を狙ってきたら俺はそれを絶対に阻止してみせる。そうじゃなければ、俺たちのために犠牲になったレオンに顔向けできない。

「それよりもお前はここを離れろ。もしかしたら・・・」
「もしかしたら?」

フラフラしているギルダーツさん。彼は満身創痍の体に鞭を打ち立ち上がった。

「こいつらを倒すきっかけになるかもしれねぇ」
「!!」

今戦いは劣勢になっている。オーガストを倒せる人間には限りがあるし、このティオスもまた同様だろう。それを打開できる方法があるから、こいつは俺を潰しに来た。

「おいおい、そんな状態でそいつを逃がしたらどうなるか、わかってるのかい?」

それでも俺がここを離れていい理由が見当たらない。こいつははっきりいってヤバイ。それは肌で感じられる。そんな奴に今のギルダーツさんで勝てるとは思えない。

「そうやってシリルを留めさせようとする辺り、やっぱり何か裏があるようだな」
「・・・」

しかし、それでもギルダーツさんは自分の考えが間違いではないことを確信している。隠しきれないと察したのか、ティオスは舌を出し苦々しい顔をする。

「・・・まぁいい。俺の考えを見抜かれていようと・・・」

そう言った瞬間、ティオスが視界から消えた。いや、消えたんじゃない。こいつは俺ですら捉えられない速度でギルダーツさんの目の前へと現れていた。

「お前を瞬殺すればいいだけだ」

今度は水を纏った拳を繰り出してくる。それは見えているのに、もう反応が追い付かない。

「ギルダーツさん!!」
「ギルダーツくん!!」
「お父さん!!」

もうどうすることもできないのか・・・そう思ったその時だった。

「雷竜の咆哮!!」
「!!」

ギルダーツさんの土手っ腹に拳が入る直前、雷撃が彼を襲った。

「・・・ここでも()()が起きてるのか・・・」

攻撃に出ようとしていた拳を咄嗟に開いてガードを固めたティオス。彼は自らに攻撃を放った人物を睨み付けた。

「さすがです、ラクサスさん」
「君のその香り(パルファム)も素晴らしいよ」
「俺たちも加勢させてもらう」

三頭のドラゴンに青き天馬。優れた実力者たちが強大な敵へと立ち向かう。

















ルーシィside

「あああああああ!!」

燃えたぎる黒炎を司る少年。彼は人間のそれとは思えないほどの常軌を逸した目で敵へと食らい付く。

「これがEND。聞いていたよりも遥かに強いわ」

その少年の異様なまでの攻撃を受けている少女は笑っていた。歳はシェリアと同じくらい・・・もしかしたらもっと幼いのかもしれない。それなのに、彼女はまるで長きに渡る戦いを制してきたかのような、無駄がなく、隙のない動きで回避し、攻撃を要所に入れていく。

「どけぇぇ!!」

それでもナツの勢いは決して衰えない。むしろその逆。どんどんその速度は増していき、敵の少女も余裕がなくなってきたのか、口数が減ってきた。

「ナツゥ・・・どうしちゃったの・・・」

そんな親友の姿を見た青い猫は目からボロボロと滴がこぼれ落ちている。でも、それは彼だけではない。私も同じように涙が止まらないのだ。

「うおおおおお!!」

技の名称も言わずに次から次へと魔法をただ繰り出しているナツ。それは感情的になっているからではない。純粋に思考が無くなっているからではないのかと思ってしまう。

「ラーケイドもブラッドマンも強かったけど、こいつは別格。さすがにゼレフ書最高傑作の悪魔ね」

自分を追い詰めていくナツを見ながら嬉しそうに口を開く少女。でも、それをあたしは肯定しない。

「ナツは悪魔なんかじゃない!!れっきとした人間なのよ!!」
「それを決めるのは君じゃないよ。彼自身だ」

彼女はそう言うとナツの顎に蹴りを入れる。思わず彼はその衝撃で動きが止まり、少女はすぐさま距離を開けた。

「弱点、見~つけたッ!!」
「「え・・・」」

親指と人指し指でナツを見据える少女。彼女の言葉の真意が、あたしたちには理解できなかった。



















第三者side

倒しても倒しても立ち上がり攻めてくるアルバレス軍。エルザたちはそれに次第に押され始めていた。

「ここまでか・・・」

持病もあり苦しい表情のマカロフが呟く。

「マスター!!諦めてはなりません!!道は必ず私が・・・」
「ここまでじゃよ。ワシの旅は」

諦めたかと思われたマカロフ。しかし、彼は両手を合わせある魔法の体勢を作る。

「その構えは・・・」
妖精の法律(フェアリーロウ)!?」
「そっか!!その手があった!!」
「勝ったぞこの戦!!」

妖精三大魔法とされる内の一つ、妖精の法律(フェアリーロウ)。術者が敵と認識した相手を全て倒すことができる言わば究極の魔法と言えよう。だが・・・

「なりません!!」
「初代!!」

そこに駆けつけたメイビスがマカロフを止めようと叫ぶ。それにはある大きな理由があった。

妖精の法律(フェアリーロウ)は対する敵が多いほど自らの命を削るのです!!こんな大軍に使ったらあなたの体がもちません!!」
「そんな・・・」

強力であるがゆえの欠陥。それは何事にも決して切り離すことができないもの。

「初代、そんなことは承知の上じゃ。止めんでくだされ。ワシの花道」

そんなことはマカロフももちろん知っている。それでも彼には絶対に引くことができない理由があった。

「策はあります!!必ずこの状況を脱する策が」
「黙っとれぇ!!」

怒声を上げるマカロフ。その迫力にメイビスは思わず口を閉ざした。

「目の前でガキ共が苦しんでるんじゃ。ガキ共がキズついているんじゃ。あんたにとっては“兵”の一人かもしれねぇが・・・ワシにとってはかけがえのないガキ共なんじゃ」
「私は・・・そんな・・・」

メイビスももちろんそんなつもりは毛頭ない。しかし、マカロフは今持てる昂る感情を抑えることができなかった。

「わかってますとも、初代の策があれば勝てることくらい。じゃがワシはこの瞬間、血を流しているガキ共をこれ以上見ていられんのじゃ!!
老い先短い老兵の命でガキ共の未来が作れるとあらば、安い仕事じゃ」
「マスター!!」

腹は決まった。しかし、それを受け入れなければならないのは彼だけではない。

「エルザ、よく聞け」
「いいえ聞きません!!一緒にギルドに帰りましょう!!」

マカロフの覚悟を聞いた妖精たちはそれを受け入れるのに時間がかかった。だが、もう彼は止まらない。

「この先どんなに辛いことがあっても、仲間と共に歩いていけば道はある。仲間を信じよ。自分を信じよ。
ギルドは家族。忘れてはならん。
貴様らのおかげで我が旅は実に愉快であった」
「マスター!!」
「思い残すことはなし。みんな、仲良くな」

悲しみに暮れる妖精たち。涙を溢す彼らに見送られながら、マカロフは最後の魔法を解き放った。


神々しい光に多くの敵が飲み込まれ、倒れていく。その光は遠く離れていた全ての者が目視できるほどの凄まじいものだった。
そして、それと引き換えに、マカロフはその人生に幕を下ろした。
















妖精の法律(フェアリーロウ)・・・もうそんな時間なのか」

その光に気が付いたこの青年は奥歯をギリギリと噛み締める。

「ますますシリル(こいつ)を逃がすわけには行かなくなった」

初めて見せた神の子の焦り。それが何を意味しているのかは、まだ誰にもわからない。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
原作で言うと残るは59巻の後半から63巻となりました。
つまり原作的には残り40話しかないんですよ!!早ッ!!
このままどうなってしまうのか、お楽しみに。 
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