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レーヴァティン

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第五十四話 吟遊詩人その七

「これからね」
「ああ、こちらこそな」
「この世界に来たのが運命なら」
「それならだな」
「私もやるべきことをやるわ」
「この世界を救うんだな」
「その為にやるべきことをするわ」
 是非にという返事だった。
「今だってそうしてきたつもりだし」
「これからもか」
「そうしていくわ、ではね」
「ああ、一緒に旅をしような」
「そうしましょう、けれど見たところ」
 こうも言った清音だった。
「女は私だけね」
「今のところな、しかしな」
「増える予定があるの」
「元々ここに来たのはミラノに行く為だったんだよ」
「ミラノ、獣使いがいるそうね」
「ああ、その獣使いが女らしくてな」
 久志は新たに仲間に入った清音に明るい声で話した。
「それでな」
「あの獣使いもなのね」
「俺達と同じって話があるからな」
 他の世界から来た者だというのだ。
「会いに行くつもりだったんだよ」
「それでここまで来たのね」
「この島の北からはるばるな」
「ああ、北ね」
 そう聞いてだ、清音は久志に微妙な顔になって述べた。
「あそこは私もいたことがあるわ」
「何処にいたんだよ」
「オスロよ、港町のね」
「オスロ?島の北でもかなり北だよな」
「そこにいて歌っていたこともあるの」
「そうだったのかよ」
「いや、寒かったわ」
 少し苦笑いになっての言葉だった。
「あの街は」
「そりゃ寒いだろ、あそこは」
「その寒さのせいでリュウマチにもなりかけたわ」
「リュウマチ?」
「ええ、それにね」
「リュウマチって冷えてなるのかよ」
 久志はその話に怪訝な顔になって清音に問うた。
「そうだったのかよ」
「知らなかったみたいね、このことは」
「ああ、更年期生涯だって思ってたよ」
「それが違うのよ。若くてもなるのよ」
「身体が冷えるとか」
「そうよ、それになりかけたわ」
 そうだとだ、清音は久志に話した。
「危うくね」
「そうだったんだな」
「元々冷え性だし」
「冷え性の女の人って多いよね」
 剛は清音が自分で言ったことについて考えこう言った。
「どうもね」
「ええ、多いわよ」
 清音は剛にはっきりと答えた。
「私だけじゃないわ」
「そうだよね」
「だからよ」
「リュウマチにもなりかけたんだ」
「そうだったのよ」
「じゃあ今もなんだ」
「一見して計装でしょ」
 清音は剛に笑ってこう言った。
「そうでしょ」
「まあそれはね」
「けれどこれが違うのよ」
「その服の下になんだ」
「タイツも履いてるし」
「ズボンの下にだね」
「服も重ね着してるわ」
「そうなんだ」
「あとコートも持ってるし」
 今着ている服以外にもというのだ。 
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