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妖精の尻尾所属の戦闘民族(旧)

作者:貝殻
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第13話 師匠の役目

衝撃的すぎるミストガンの新事実を知ってからレッドは手に口を覆ったまま数分固まっていた。
そんなレッドと相反して右目になんらかの紋章をしている青髪の美少女――ジェラールは懐かしそうに、そして微笑んだままレッドを見つめる。

そして、漸く状況を取り込めたレッドは我に返り、そして深呼吸してからジェラールに対して謝罪を述べた。

「…悪い、話している途中に驚いてしまって…」

「いいや、大丈夫だ。貴方が私の顔を見たら必ずこうなることを予想していたから」

「そ、そうか…」

主にジェラールは彼女と同じ顔をした人間をレッドが出会っていることを知っているからこそ、レッドが彼女と同じ顔をしている自分を疑問に思っていると理解しているつもりだ。それに今自身が明かした別世界の住民が何よりも壮大すぎたことを伝えたのだ。そこも含めて今から説明をするつもりでいる。

…のだが…生憎レッドはそこではなく、ミストガン元いジェラールが女…おまけに綺麗な色をした青髪でストレートに伸ばした美少女だったことに一番の衝撃を受けている。
だから彼女の顔を見て「誰かと似ているような」といった疑問しか沸かず、むしろ男じゃなかったことの方が一番の印象的になっている。

両者共、別のことですれ違ってはいる。

ジェラールは自身の顔に対してレッドが驚愕したことに対して。
そしてレッドはミストガンは美少女(大事)だったことに対して。

それで二人共がすれ違っていることに気づくのは、また別の話である。






◆◆◆◆◆◆



SIDE:レッド・パッペ


いかん、ミストガン…じゃなくて、ジェラールが女…しかも美人なことにびっくりしすぎて思考停止状態になりかけた。

あ、危ねえ…最後まで名前を聞いてよかったぜ…じゃない本題に入る前にまた名前を聞かせてもらわなきゃならなかった。

しかし…オレがここで固まることを予想されていたなんて…普段は男装を意識していたってことなのか。
それならもう少し胸を隠したほうがいい。何故なら息を吐く時に胸が動いたのは見逃せなかったぞオレ。
…意識なものではなく、オレの目が動くものに対して一瞬に向いたりしてしまうからであって、別に元々男女関係なくその胸を見ている訳じゃない。それでは只の両刀使いの変態だ。

しかし、最後に聞かされた別世界の住民か…誰かと似ているような顔を似ている…もしや、転生者の類いか?

「今から貴方の疑問も含めて全てを明かそう。貴方になら…いや、貴方にしか明かせないことだ」

そう言葉を発するジェラールの目はどこまでも真っ直ぐ、オレに対して偽ったりしないと言っているようでオレは疑おうとは思えなかった。

それに、彼女を信じようと思ったのはその彼女の曲がるつもりのない姿勢があったからだ。
だからこそ今更疑おうなんて思っちゃいない。

「わかった。オレにしか話せないってことは他言無用ってことでいいか?」

「ああ、頼む」

オレは首を縦に振って肯定と返す。これでも口は堅いほうだから人の秘密をばらすなんて行為はする気もない。…うっかり話さなきゃいいだけの話だしな…酒を控えるか…?

「それじゃ、早速説明してくれてもいいか?ミスト…ジェラールが今言った別世界のこととか」

「さっきも言ったが、そこも含めてているから勿論話す…まずは――」

ジェラールの口から出た説明に対しては、こうだった

・此処は別の平行世界、”エドラス”と呼ばれる世界がある。

・この世界は”エドラス”から”アースランド”と呼ばれている。

・エドラスの世界は此処のアースランドと違って別の歴史があるようだが、両方の世界に同じ名前や容姿をしている人間は存在するという。

・エドラスは現在魔法が枯渇しており、エドラスはそれを恐れていて魔力が満ち溢れているアースランドの魔力を魔水晶に捕え、エドラスの魔力へと運用をしようとしている。

・恐らくリサーナはアースランドの魔力を吸い込むアニマによってエドラスに居るかもしれないこと。


ここまでの説明を聞いてオレは絶句せざる得なかった。オレの予想では異世界とか、転生者とかを聞くと思っていたが、話を聞いている限りそこに繋がるところはなく、下手に質問したら「なんだ、それは?」と返されるのが目に見えた。
だが、話を聞くと彼女の故郷である”エドラス”は魔力がなくなりかけていて、魔力を完全に失わないためにこの世界にある魔力をエドラスで魔水晶に変えてそれをエドラスの魔力源にしようとしている。

…それはつまり

「――今リサーナはその”エドラス”に吸い込まれて、魔水晶に変えられているってことか」

「…それは大丈夫かもしれない」

「…ちゃんと理由があるんだろうな?」

なかったら今すぐそのエドラスに向かわなければならない。そして早く助けに行かなければ本当に間に合わなくなる。それではギルドの皆やエルフマンとミラは本当に辛い思いをこれから一生の内に味わせなければならない羽目になる。

そしてオレの疑問の声にジェラールは真剣な表情のまま頷いて、答える。

「恐らく彼女を吸い込んだアニマは小さい。小さいアニマなら王国ではなくどこかに事故としてエドラスに行ってしまったはずだ。」

「…その心は?」

「私はアニマの感知ができる。だからアニマを感じた時には王国に繋がる前に塞いでいる」

「…そうか、ならリサーナが今王国で魔水晶にさせられているって可能性はないんだな」

「ああ、安心してくれ」

ならリサーナが今そのエドラスの王国で囚われている訳じゃないんだな。…まだ安心できないがこれを聞けただけでもまだ助かる見込みがあるか。

「そして、今レッドさんが疑問に思っているであろう私のことだが…」

…あ、そういやこのジェラール…誰かと似ているよな。確かエドラスとここは同じ存在が居るって言ってた…

「貴方が前に会っているジークレインは、もう一人のアースランドで存在する私であり、私が彼女のエドラスでのジェラールだ」

…ゑ?

…。つまり、どういうこと?ややこしいんだけど…?あ、いや何を言いたいかは分かるけどね、分かるけどね?

…ふぅ、と溜息を吐いて一旦頭を整理する。

つまり、彼女は前に顔合わせしたことのある…ジークレイン…?と同一人物…エドラス版のジークレインってことでいいのか?

「…そして、もう一つ、私のことを貴方に伝えたいことがある」

…んん?今度はなにかね…またややこしい一言だったらもうついていけないぞ?そこまで良い頭はラクサスにしか任せてないもんオレ…。

「私は5年前にこの世界にやってきた…」

ああ、5年前か…なんかナツがギルドに入ってきた年じゃねえか…

「そして、エドラス王国の王女(・・)であり――」

「ファッ!?王女!?」

ちょ、王女ってなんだよ!?国王とか居るからお姫様も同じ様に居るんだろうな―って思っていたけど目の前にいるってどうなんですかね!?



「――平行世界に居た、貴方の弟子だ」


「―――――――」


――――アタマが、イタイ。



◆◆◆◆◆◆





目の前で彼は頭を抱え始めた。元からこの話を聞いて頭を抱えないわけないだろうけど、彼はもう一人の自分が弟子を取ったことに対して疑惑しかないのだろう。

それもそのはず。この世界の彼と私の世界のあの人は年齢が違う(・・・・・)

彼が私を弟子に取った時はもう50歳以上になっていて、外見は変わらずだがあの人は青年などよりも年配の雰囲気があった。

どこまでも優しく、何よりも病に犯されながらも戦った彼は強く、最後まで戦闘民族らしかった。

…その時のことを思い出せば胸が苦しくなる。

やはり私は、5年経ってもあの人のことが忘れられないらしい。

年齢が離れていても、私に勇気をくれたあの人を私はやはり―――


だが、目の前の貴方は、やっぱり違う存在なのだな、と実感させられる。


あの人は年配だったからこその特有の落ち着き感があったのに、彼は年齢に合わせて慌てふためくところが数々見られる。
実際、ギルドで一目見る時にはよく見慣れた光景だったりした。

…だが、人を信じ、想うあの人と同じなところはちゃんとあった。

びっくりした時に口を手で覆うその仕草も、仲間を助けようとするその意思も。

だから、私は彼の力が――彼が必要なのだ。

戦力的にも、そして私のためにも…


これは私のエゴなのは知っている。私が彼を求めるのはお門違いもいいところだろう。


貴方は、”アースランドにオレが居たら、頼ってくれ”と言ったのは力のことだろうけど、私は私のために、彼を必要とする心のほうが大きいみたいで


やっぱり私は、貴方のことが誰よりも必要だと、思ってしまうのです――先生。






◆◆◆◆◆◆




「それで、貴方は私に協力してくれないか」

「…え?」

問いかける青髪の少女――ジェラールにレッドは間抜けな声を出す。

だがジェラールはそこを指摘すること無く、彼の返事を待つように見つめるだけ。

彼女の中には様々な感情がせめぎ合っている。

果たして彼を、私は求めてもいいのだろうか?先生と重ねては失礼なのに、このまま先生の代わりとして求めてはいけないのに。

先生が言ったから私は彼に協力を仰いでいるのか?いや違う、私のエゴで求めているから頼んたのではないか。

その様に、彼女の中には迷いがある。未練と言ってもいいものを抱え込んでいる彼女は目の前の青年に重ねている別の世界の彼に対してこれでは失礼だと、これはただの我儘だと言って自身に憎悪感を上げる。

戦力的なら頼りになる。まだ平行世界の彼とは違うが、それでも十分にも力になってくれる。

なら戦力的にも協力を求めるのは間違っていないことはない。

それでも…気持ち的には整理出来ないのが、今まで師弟関係を結んでいたであろうジェラールには難しいこと。

だがその気持ちは収まる。何故ならもう目の前の青年は答えを決めていたし、なによりもやはり同じ存在だからか――


「勿論、協力するぜ。同じギルドの仲間だし…あー…そっちのオレとは師弟関係だったんだろ?オレはジェラールの知っているオレとは違うと想うけど…まぁ弟子に手を差し伸べるのが師匠の役目だしな」

そう、彼は弟子を助ける。

弟子が危ない状況であったり、手助けを求めているのならそれに手を差し伸べるのが師匠の役目。
大切な弟子のために人肌を脱ぐのも、当然の行為だから――


だから彼女の中には協力する理由の言葉を聞いたときには、もう迷いがなくなったのだ。



(ああ、やはり貴方は…どこの世界でも貴方(先生)なんですか…?)


(先生…私に手を差し伸べるのは、いつも…そう、いつも貴方だったから…私は…)




もしこうして誰にも頼ることはない場合だったら彼女は今も孤独にアニマに対策し続けたのかもしれない。

原作のように、ギルドに頼むのはまだ先になっていたのだが、彼女は早めに手を求めた。

故郷の世界では先生であり、この世界では同じギルドの仲間(家族)となった彼に。

例え、別世界の彼だったとして変わらない彼に、彼女は手を求めれば彼はその手を取る。

それが、当然のことだと思っているのだから。

そして、彼女は願った自分の名前を呼ぶ声を聞く…その声はまだ若々しくも、求めていた声に――


「ってことで、これからよろしくな。ジェラール(・・・・・)

「…よろしく…おねがいします」





ああ、私は…まだ頑張れそうです…先生―――――。 
 

 
後書き
唐辛子がジークレインと会う時はアレ、ギルドの問題が起きたときやSS級のクエスト、誇り高き猿の尻尾での評議員の手伝いの時に評議員に伺うときがあるからドランバルトやラハールだけじゃなく、ジークレインとも遭遇する時もある。因みにウルティアも(無慈悲)
舐め回すような視線を食らった唐辛子にとっては青髪が異常に見てきたので印象的だったらしい。

…そろそろ原作…長かったなぁ…ここまで…下手しちゃ時間がもっとかかって――なんでもないです。
次回もよろしくおねがいします(震声) 
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