魔女の付き人(仮)
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ウィスの告白
前書き
皆さんはドロシーとディオナのどちらが好みですか?
まあ、作者は断然ドロシーだがな!(揺るがない事実)
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4話目です
ではどうぞ
ディアナとの邂逅を終え、再び空へと飛翔したウィス。
遥か遠方に感知できるギンタとドロシーの魔力を頼りにウィスは今、天を飛んでいた。
白銀の光に包まれながら、途轍もない速度で大陸上を横断している。
既にウィスの目的は達した。
この世界の成り立ち、ドロシーの姉である女性との邂逅、ARMと呼ばれる神秘の結晶の調査、そしてこの世界を脅かす存在の確認。
ウィスはドロシー達と別れてからたったの数日で、それら全てを調べ終えていた。
それ以降の行動指針は今のウィスには存在していない。
ならば後はドロシー達と再会するだけだ。
そしてウィスは宙を浮遊することで飛翔し、大気を突き抜け、大陸を途轍もない速度で横断し、瞬く間に目的の場所へと辿り着く。
だがウィスは突如、飛行を中断し、何かを確認すべく遥か上空から眼下を見下ろした。
眼下にそびえ立つは氷漬けにされた白亜の居城。
見れば周囲には魔力が迸り、大気を凍り付かせ、極寒の環境が創り出されている。
感知できる魔力はドロシー、ギンタ、バッポ。
残りの幾つもの魔力はウィスの知り得ないものだ。
その半数は邪悪なる魔力を有し、今やギンタ達と交戦している。
「─。」
幾ばくかの逡巡の後、ウィスは宙から降下し、眼下の白亜の居城へと向かった。
♕♔♘♗♖♙
同時刻、白亜の居城内。
周囲は凍え、廊下の至る箇所が氷漬けになっていた。
「ふーん、成程ね。ギンタ達はそういった理由でこの場に来たってわけか。」
今、この場にはドロシーを含めたギンタ、ジャック、バッポ、エドがいた。
そんな緊迫とした状況の中、ドロシーが静かにギンタ達の前に座している。
「そうなんだよ、ドロシー。」
「き…綺麗な人っすね!ギンタのお友達っすか!?」
「ふん!また、現れおったわ、この無礼女めが!」
ギンタは困り顔になり、ジャックは鼻の下を伸ばしてしまっている。
バッポは心底嫌そうに、エドはただ彼らの遣り取りを視界に収めている。
「でも急いだほうが良いわよ。熟練の術者でもこの状況では半日も命が持たないだろうから。」
「は…半日!?」
ドロシーの言葉にギンタは思わず狼狽する。
あと半日、あと残り半日で1人の少女の命運が決まる。
想像以上に彼女に残された時間は少なかった。
「何じゃその言い草は!?まるで他人事の様に!?」
「だって他人事だもん。私が此処に来た目的はあくまでARMなのよ?」
ドロシーの余りの冷たい言い草にバッポは苦言を申し立てるが彼女は真面に取り合わない。
彼女が此処に赴いたのはあくまでARMを確保することなのだから。
「それに此処にウィスもいるかなーって思って来たけど、結局いなかったし……。」
ドロシーは肩をすくめながらも嘆息する。
全くウィスは何処に行ってしまったのか、ドロシーは切実にそう思う。
「まあ、今はそれよりも……」
そんな中、ドロシーはギンタ達との会話を打ち切り、背後へと振り返った。
彼女は視界がまともに働かない状況で廊下の奥を覗き込む。
「……9人?出ておいで。」
魔女としての顏を出し、ドロシーはその紅き鋭い視線を飛ばす。
この場に赴いた時から感じていた魔力を放つ集団へと。
突如、ドロシーの高まる魔力に反応するかのように面妖な仮面を付けた集団が現れた。
彼らの登場にドロシーは笑みを浮かべながら立ち上がり、魔力を高まらせ、臨戦態勢へと移行していく。
「本来なら私が人助けをすることなんて滅多にないんだけど……」
「ウィスもこの場にいなかったし……」
「消化不良だから私が貴方達の相手をしてあげるよ。」
魅惑的な笑みを浮かべるドロシーにギンタ達は戦慄し、言葉が出てこない。
誰もが魔女ドロシーの放つ雰囲気に圧されていた。
こうしてドロシーと謎の仮面の集団が遭対しようとした刹那……
途端、城の城壁が崩壊した。
否、派手に吹き飛ばされ、仮面の集団が軒並み蹴散らされた。
強固な城壁が易々と破壊され、全てが粉微塵と化していく。
「お取組中、失礼。」
丁寧な言葉とは裏腹に件の人物は仮面の男達の顔をぞんざいに踏み付け、蹴飛ばしながら足を進める。
言うまでもなくその人物はウィスであった。
普段の悠々とした態度を崩さず、微笑を浮かべている。
「何だ!?手前ェは!?」
「お忙しい中申し訳ありません。」
ウィスは親指で抑え込んだ中指をはじき出す。
途端、その男は途轍もない速度で廊下を突き抜け、その姿を瞬く間に消失させる。
「何なんだ、貴様はー!?」
「はいはい、邪魔ですよ。」
ただ射抜くだけでウィスと対面していた男がまた1人為す術無く城壁をぶち破り、城外へと放り出される。
ある男は額を小突かれただけで地面へとめり込み、残りの男達はウィスが周囲に波及させた魔力の本流によって皆仲良く壁へと陥没する。
言うまでもなく一人残さず戦闘不能な状態である。
「あ──!ウィス──!」
当然、そんなウィスの登場に過敏に反応するはドロシー。
周囲の目を憚ることなくドロシーは前方のウィスへと勢い良く飛び付いた。
「いや──!また会えた──!元気してた──!?」
ドロシーはウィスの首回りへと思い切り抱き着き、嬉しさの余りドロシーはぴょんぴょんと飛び跳ねる。
ウィスは為すがままに彼女の頬ずりを受けている。
ドロシーの積極的なスキンシップを一身に受けているウィスはそんな彼女の頬を押し返し、ギンタ達と向き直った。
「久し振り、ギンタ?」
「おう、久し振りだな、ウィス!」
「えっと、この人もギンタのお知り合いっすか…?」
「うむ、また会ったな、ウィスよ!今からでも遅くはない!儂の子分にならんか!?」
ジャックを除く全員から好意的な反応がウィスに返ってくる。
バッポは何処か何か違う気がするが。
「む、ウィス反応悪ーい。」
当然、軽く無視されているドロシーはウィスに苦言を申し立てる。
ドロシーは此方を見ないウィスの顏を強制的に振り返らせ、自身と見つめ合う形で頬を押さえつける。
ギギとウィスの首から鳴ってはいけない音が鳴り、ウィスは力づくでドロシーの方へと向き直らされた。
「俺の首を捻らないでくれ、ドロシー。」
「だってウィス、私に見向きもしないじゃない。」
先程までの緊迫とした雰囲気を霧散させ、ドロシーは拗ねた子供の様子でウィスの紅き瞳を覗き込んだ。
「そ れ で !」
休むことなくドロシーはウィスへと捲し立てる。
「…?」
「ウィスは今まで何処に行ってたの!?」
「少し遠い場所だ。」
ドロシーの姉であるディアナに出会ってきたのだ。
彼女に正直に言う訳にはいかないが。
「それでこの場に来た理由は!?」
「ドロシーと会うため。」
そこに嘘はない。
ウィスはドロシーに伝えたいことがあり、この場に赴いたのだ。
「ふーん。って私に…?」
ドロシーはコテンと首を可愛らしく傾げる。
因みに今なおウィスの首の拘束は続いている。
途端、真剣な表情を浮かべたウィスが繊細な手付きで彼女の両手を包み込む。
ウィスはドロシーの紅き瞳を見据えながら、告白した。
「単刀直入に言う。ドロシー、俺と共に生きて欲しい。」
「……え?」
途端、周囲の空気が止まった。
否、凍った。
この場の誰もがウィスの突然の独白に理解が追い付かない。
「……いや、その言い方だと少し語弊があるな。」
ウィスは少し逡巡した様子を見せながら、顎に手を添える。
対面するドロシーはウィスから目を離せない。
ウィスは瞳を閉じ、ドロシーに自身の気持ちを如何に率直に伝えるかを思考する。
誤解が起きないように、最適な言葉を選び出すべく。
そして幾ばくかの時間が経過し、遂にウィスが言葉を紡ぎ出した。
先程よりも真剣な思いをその紅き瞳に内包しながら。
「ドロシー、これからは俺の傍にいて欲しい。」
訂正、先程から何も変わっていなかった。
それどころかより酷くなっていた。
正にウィスは言葉を着飾ることなく、直球でドロシーへと告白していた。
ただウィス本人の基準で紡ぎ出された言葉であったが。
交錯する両者の紅玉の瞳。
「…!?…!?」
ドロシーは酷く取り乱し、狼狽することしかできない。
今、自分はウィスから何を言われたのか、何故一世一代の告白の様な言葉を突如ウィスから告げられたのか、ドロシーは全く理解できなかった。
そんなドロシーに構うことなくウィスは言葉を紡ぎ出す。
自身の思いをドロシーへと伝えるべく。
「ドロシーの傍でドロシーの人生の軌跡を、在り方を見ていたい。」
「ドロシーが紡ぎ出す物語を共に紡いでいきたい。」
「えっと…、ウィス。もしかして……」
ドロシーは此処で漸く自身がウィスから告白されている可能性に行き当たる。
ウィスの表情は正に真剣そのもの。
その瞳に一切の曇りなど存在せず、心からの言葉を紡ぎ出していることが伺える。
ウィスと自身の手は胸の前で固く結ばれ、今にも顔と顔がくっ付いてしまいそうな距離だ。
思わずドロシーの頬は赤く染まり、先程から心臓の鼓動が抑えられなくなっていた。
ドロシーはこれまでここまで嘘偽りのない言葉をぶつけられたことなどない。
切実に、魔女である自分を想う言葉など。
こうなれば必然的にウィスから目を離せなくなるのは自明の理であった。
決してロマンチックとは言い難い状況であるが、ウィスは今、心から自身の思いの丈をぶつけてきている。
ならばウィスの想いに応えるのが筋というものであろう。
そう決意したドロシーは顔を引き締め、呼吸を整え、ウィスへと向き直った。
「ドロシーの人生の行く末を見てみたくなった。」
だが、ウィスから聞き捨てならない言葉が吐き出された。
「……え?それって」
ドロシーの時が止まる。
否、周囲のギンタ達の時も再び停止している。
そんな空気に耐え切れなくなった周囲の群衆達が騒ぎ出す。
「のう、ウィスよ。今の言葉に嘘偽りはないのじょろう?」
当然だ、今の言葉に嘘偽りなど存在しない。
全て自身の本心から紡ぎ出された言葉に他ならない。
「…。」
見れば何処ドロシーの様子がおかしい。
何か言葉の選択を間違えてしまっただろうか。
「まさかとは思うんすけど、今の言葉は純粋な決意の表明だったんすか?」
「…そうだが?」
何か語弊があっただろうか?
「ウィ…ウィスの……」
ウィスの…、何だ?
見ればドロシーはワナワナと肩を大きく震わせ、顔を伏し、手を大きく振り上げ─
「ウィスの馬鹿──!」
次の瞬間、ドロシーの張り手がウィスへと炸裂した。
後書き
最近、ウィスのキャラを描くのに苦労しています
原作のウィスを見ているとただの善悪二元論で動いているわけではありませんし、本人はあくまで破壊神の付き人であり、私欲による戦闘行為は禁止されています
決して今作のウィス=原作のウィスというわけではありませんが…
それにその気になれば今作のウィスは何でもできてしまいますからね(困り顔)
うーむ、難しいです
作者はウィスらしさと、オリ主らしさをこの物語で描けていますかね?
感想と評価を頂けると作者としてとても嬉しいです
執筆の励みになります
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