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リング

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20部分:ファフナーの炎その十九


ファフナーの炎その十九

「確かこのナイティングはこの辺りの帝国軍の拠点でしたよね」
「うむ」
「それなのにこの手薄さは。どういうことでしょうか」
「ある場所に戦力を集中させているのかもな」
「ある場所とは」
「ヴェルズングの方にだ。それで我々には兵をあまり向けてはいない」
「まずはヴェルズング提督を相手にしているということでしょうか」
「おそらくな。だが彼を倒せばその戦力はすぐに我々に向けられる」
「それは当然ですね」
「これはもう言うまでもないな。それでは我々が採る方法は一つ」
 彼は言った。
「ヴェルズング提督の部隊と合流するぞ。いいな」
「了解」
「詳しい場所はわかるな」
「はい」
 オルテルがそれに頷いた。
「ここから暫くの場所です。すぐに向かいましょう」
「よし」
「その際主力を前面に出して攻撃を仕掛けましょう。それで宜しいでしょうか」
「任せる。では行こう」
「はっ」
 こうしてヴァルターは兵を率いてジークムントの方へと向かった。そして暫くして盆地において包囲されている僅かな者達を見つけたのであった。
「どうやらあれのようだな」
 ヴァルターの兵はその盆地を取り囲む帝国軍の将兵をさらに見下ろす山地に位置した。そしてそこから両軍を見ていたのである。
「ですね」
 それにオルテルが頷いた。
「盆地にいるのがヴェルズング提督の軍ですね」
「かなり減っているな」
「それだけ敵の攻撃が激しかったということでしょう。あれではもう持ちませんよ」
「そうだな。ところで帝国軍はどうしている」
「ヴェルズング提督の軍に意識を集中させているようです」
 彼は答えた。
「その為か今も我々のことには気付いてもいないようです」
「そうか。好機だな」
 彼はそこに勝機を見ていた。
「それでは」
「うむ。一気に攻撃を仕掛ける。すぐに降りるぞ」
「はい」
「総攻撃を仕掛ける。それでかたをつける」
「わかりました。それでは」
「そして敵を殲滅した後でヴェルズング提督の軍と合流するぞ。いいな」
「了解」
「よし、では総員攻撃用意」
 指示が下る。
「射撃を浴びせながら駆け下りる。よいな」
「はい」
 こうしてヴァルターの軍は攻撃に取り掛かった。まずはサイレンサーをつけ一斉射撃を浴びせる。それで先頭にいる何人かが倒れた。
「どうした!?」
「敵襲か!?」
 敵軍はそれに浮き足だった。何処から攻めて来たのか、誰が来たのか最初は完全にわからなかった。ここに隙ができてしまった。
 ヴァルターはその隙を見逃さなかった。なおも攻撃を続ける。次はサイレンサーを外させて派手に音を鳴らさせる。
「敵だ!」
「後ろから来たぞ!」
「何だと!」
 帝国軍はこれにすぐに反応した。だがこれを叫んでいたのはヴァルターの軍であった。彼等は咄嗟のことであり誰が誰の声なのか確認を忘れてしまった。そしてこれもヴァルターの狙いであった。
 
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