リング
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196部分:ラグナロクの光輝その五十
ラグナロクの光輝その五十
「ムスッペルスヘイムからの道は帝国も知っている道です」
彼はまた述べた。
「つまり。帝国はその道に沿って防衛ラインを固めています」
「だろうな」
「そう予想するのが妥当だ」
「百個を越える艦隊と七匹の竜。それは決して容易な相手ではありません」
「だが破らなくてはならない」
「その為にヴァルハラへ向かうのだからな」
「しかしその道を単に行ったのでは犠牲を増やすだけです」
パルジファルは六人に対して述べた。
「違うでしょうか」
「確かにな」
「それは否定しない」
六人もそれは認めた。それは彼等の戦術及び戦略センスが自身に教えていた。
「このままではな」
「それへの打開策というわけだな」
「そうです。その為に分進合撃策です」
「一方に主力を回し、もう一方に高速機動部隊を回して攻める」
「簡単に言えるが実際にやるのは難しい」
こうも言う。
「そう、そしてニーベルングは」
「かりにも帝国軍において宇宙軍総司令官を務めていた男」
「実際に武勲も数多く挙げている」
クリングゾルは実は優れた軍人として第四帝国にその名を知られていたのだ。若くして宇宙海賊や叛乱勢力に対して次々に鮮やかな勝利を収めてきているのだ。そして瞬く間に元帥にまでなっている。それは無能な者、凡庸な者では決して成し得ないものであるのは誰の目にもわかった。そう、彼は明らかに軍事の天才でもあったのだ。
「彼に気付かれてもまたなりません」
「ことは慎重にか」
「はい」
パルジファルの言葉も何時になく硬いものになっていた。
「最後の最後まで気付かれてはなりません」
「勝利の為に」
「そう、勝利の為に」
飾りつけは要らなかった。全ては勝利の為に。今七人はこうして集まっているのであった。
「その為の道は何処なのだ」
「そう、まずはそれだ」
トリスタンとジークフリートがパルジファルにまた問うた。
「どの道を使うか」
「我等の全く知らない道にしろ」
ジークムントとタンホイザーもそれに続く。
「それでこの作戦の成否が決する」
「どの道なのだ、それは」
ヴァルターとローエングリンも。六人は彼等を取り纏める存在であるパルジファルその人を見据えて問うてきた。パルジファルはその問いに対してゆっくりと答えた。
「ビブロストです」
「ビブロスト」
「そう、それはワルキューレだけが知っている道」
彼は言う。
「ヴァルハラとこの世界、ノルン銀河を結ぶもう一つの道なのです」
「その道を使い攻めるのだな」
「だが」
六人にはまだ疑念があった。それは容赦なく述べられた。
「その道は卿はまだ知らないようだな」
「ワルキューレ達は本当に知っているのか」
「はい、それは」
六人の質問に答えようとする。ここでグルネマンツが彼等の部屋に入って来た。
「失礼します」
「どうしました?」
パルジファルが彼に顔を向けた。そひて尋ねた。
「報告に参りました。只今我が軍はムスッペルスヘイムに到着しました」
「そうですか、遂に」
「そしてワルキューレの方々も来られています」
「丁度いいな」
六人はそれを聞いて互いに顔を見合わせていた。
「今度は彼女達から聞けるな」
「うむ」
「そしてそれで全てが決まる」
「この戦いの行方が」
「勝利か敗北かが」
「ワルキューレの方々に連絡を入れて下さい」
パルジファルはその声の中グルネマンツに対して述べた。
「何と」
「すぐにグラールに来て欲しいと。そして話がしたいとお伝え下さい」
「わかりました。それでは」
「はい。ではいよいよ全てがわかります」
パルジファルはグルネマンツに指示を出し終えると六人に顔を向けて述べた。
「これからの勝利への道がどの様なものか」
それはまるで全てを知っている者の様な声であった。若しかして彼の中に蘇っているのは過去だけではないのかも知れない。現在も、そして未来も蘇っているのではないだろうか。六人は今彼を見て心の中でそう思うのであった。
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