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レーヴァティン

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第五十四話 吟遊詩人その一

                第五十四話  吟遊詩人
 グリマルディ家の屋敷の敷地の中は緑だけでなく赤やオレンジで華やかな色彩だった、正はそういった色を見せている薔薇やオレンジ達を見て言った。
「華やかだな」
「ああ、北の方と比べるとな」
 ずっとそちらにいた芳直が応えた。
「もうな」
「ずっと違うよな」
「華やかだよ」
 芳直は正に応えてこうも言った。
「本当にな」
「あの白だけの世界じゃなくてな」
「緑があってな」
 芳直はまずその色を見た、庭の草木のそれを。
「そしてな」
「薔薇の花にオレンジの実にな」
「豊かだな」
「色がか?」
「いや、場所自体がだよ」
 色だけでなくというのだ。
「もうな」
「ああ、そうしたものがある様なか」
「場所自体がな、いいな」
「あっちはもういつもか」
「ほんの少しだけ他の季節があってな」
 春や夏、秋がというのだ。
「それでな」
「後は冬か」
「全部な」
「そんな場所にいたらか」
「ああ、本当にな」
「こうした場所に来るとか」
「豊かだって思うよ」
 芳直は正にしみじみとした口調で話した。
「街を一歩出るとモンスターが出たりする世界でもな」
「街の中は違うからな」
「その街の中でこうだとな」
 様々な色彩を出せるだけのものがあればというのだ。
「俺っちは豊かだって思うよ、それにな」
「それに?」
「こうした場所にいたいって思うな、ずっとな」
「そうも思うか」
「ああ、豊かで暖かくて景色もこうだ」
 様々な色があるというのだ。
「こうした場所にな」
「ずっといたいか」
「出来るだけな、日本だと瀬戸内だよ」
「広島の方が」
「あそこにいたいな」
 芳直の気候の好みとしてはというのだ。
「暖かい場所にな」
「じゃあ鹿児島はどうだよ」
「あそこはいいさ」
 正に即座に返した。
「あそこは桜島があるだろ」
「いつも噴火してるな」
「火山灰があるからな」
 それでというのだ。
「あっちはいいさ」
「暖かくてもか」
「それなら沖縄の方がいいな」
 鹿児島よりもというのだ。
「俺っち的には台風は我慢出来てもな」
「火山は駄目か」
「火山灰も嫌だし何時大噴火するかって思うとな」
「地震も駄目か」
「大嫌いだよ」
 そちらもというのだ。
「地面が揺れてものが壊れるだろ」
「あれが嫌か」
「正直ぞっとする、俺っちはあれが一番嫌いなんだよ」
「そうか、けれどな」
「ああ、起きたらな」
「日本にいるとな」
 それこそとだ、正は地震を忌み嫌う芳直に話した。庭は広く邸宅まで歩くにも結構な時間がかかっている。 
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