魔女の付き人(仮)
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伝説のARM バッポ
前書き
連載開始です
ではどうぞ
あ、ちなみに自分"君の思い描いた夢 集メル HEAVEN"にドハマりしてます
大好きなOPです
大自然が蔓延る草原にてウィスとドロシーの2人が向かい合っていた。
否、好奇心に駆られたウィスがドロシーに迫っているのである。
「その伝説のARMであるバッポは今、何処に?」
「あ…あのえっと、その……。」
肩を抑えられ、ウィスの端正な顏を近付けられているドロシーは今、狼狽していた。
先程までの勢いが嘘のように消え、目をウロウロと彷徨わせている。
正直な話、普段グイグイ来る性格であるドロシーはこのような攻めに耐性はない。
彼女は攻めに弱いタイプなのだ。
だがそんなことは今、ウィスには関係なかった。
この世界の伝説のARMのことでウィスの頭の中は一杯なのである。
悠久の時を生きるウィスにとって娯楽は常に求め続けているものであり、愉悦なのだから。
「さあ、そのバッポとやらは何処に?」
「え…えっと、ここより先に存在する……。」
そして遂に、頬を染めたドロシーがそのバッポの居場所を喋ろうとし……
「……!」
突如、ウィスの知覚範囲に強く感じる気配が現れた。
この世界と対立するように存在する世界、否、平衡世界とも呼ぶべき世界との繋がりが生じたのだ。
この世界と密接な関係を有しているにも関わらず、明確な壁とも呼ぶべき隔たりが存在し、互いに不干渉な関係を築いている此処とは異なる世界からの来訪者がこの場へと辿り着いた。
そしてウィスがこの世界へと辿り着く契機となったあの門の魔力と、とある一人の人間の気配も同時にウィスは感じる。
「…。」
「え…えっと、どうしたの、ウィス?」
先程までの攻め入る様な勢いは消え、ウィスはどこまでも真剣な表情を浮かべる。
紅玉の瞳は此処ではない何処かを見据え、当人の放つ雰囲気も一変していた。
ドロシーはそんなウィスの変貌に戸惑わざるを得ない。
だがウィスは応えない。
「……え?」
ドロシーが気付いた時にはウィスの姿は消え、この場の何処にも存在していなかった。
♕♔♘♗♖♙
ウィスは空を駆け、宙を跳び、高速移動を行うことで異なる世界からの来訪者の下へと赴いていた。
呆けるドロシーをあの場に残し、ウィスは心の内から湧き上がる好奇心の下この世界を闊歩する。
「……見つけた。」
年は15歳前後。
身長は160後半。
髪は黄色、服装は学生服。
現在、その少年は眼下の草原を走り回っている。
ウィスは目的の人物を発見し、遥か上空から眼下の大地へと降り立った。
「凄ぇ!凄ぇ!スゲー、この世界ワクワクが一杯だ!!」
その件の少年である"ギンタ"は内から吹き出る好奇心と長年の夢見た異世界の存在に心躍っていた。
そんなギンタの目の前に……
「どうも、こんにちは。」
ウィスがその場に現れる。
「うおおぉぉぉ───!?」
突然のウィスの登場に悲鳴を上げ、ギンタは大きく後退する。
足をもつれさせ、転んでしまう。
「あ…あんたは!?」
「私の名はウィスです。丁度貴方がこの世界に来訪したことを感じ取ったものでこの場に伺わせて頂きました。」
恐らくウィスが存在していた世界とは異なる位相の存在であろうが。
だがそれもでウィスの好奇心が消えることはない。
「あ、これはご丁寧にどうも。」
ペコペコと会釈しながら、ウィスとその少年は向き直った。
「それじゃ今度は俺が名乗る番だよな。俺の名前は虎水ギンタだ!」
驚きから一転、その少年"虎水ギンタ"は活発さを感じさせる満面の笑みで自身の名を名乗る。
元気な少年だ、ウィスは素直にそう思う。
「ええ、よろしくお願いしますよ。」
そんなギンタに微笑を浮かべながらウィスは挨拶を返す。
「なあ、なあ!それよりもウィスは今、空から降りてきたよな!?」
「つまり空を飛べるってことだよな!?」
「それにその服装、まるで魔導士みたいでカッコイイ───!!」
「あとその奇抜な杖は何なんだ!!」
ギンタはウィスにとても興奮した様子で詰め寄り、多くの質問を投げ掛けてくる。
好奇心を隠せない性格のようだ。
「ええ、確かに私は空を飛べます。あと私は魔導士ではありません。そしてこの杖については秘密事項です。」
冷静に、焦ることなくウィスはギンタの質問に答えていく。
実に微笑ましい少年だ。
「ああ──!やっと見付けた、ウィス!」
箒に跨り、ドロシーが遂にウィスの下へと辿り着く。
随分と遅い到着だ。
「おや、遅い到着ですね。」
「ウィスが何も言うことなくあの場から消えたのが悪いのよ!」
「ほほほ、すみません。」
「全く心がこもっていないわよ!」
すみません、とウィスは彼女に謝罪する。
無論、言葉だけの謝罪であるが。
そして当然、そんなドロシーに興味を持たないギンタではなかった。
「スゲー!あんた箒で今、飛んできたよな!」
「それにその服装良く分かんないけどカッコイイ───!!」
勢い良くドロシーに迫り、言葉を捲し立てるギンタ。
全く警戒心というものが存在しない。
「……この坊やは一体?」
ドロシーはギンタの余りの勢いに冷静になる。
「俺の名前は虎水ギンタ!よろしくな!」
「ギンタね…。私はドロシー、魔女よ。」
魅惑的な笑みを浮かべながらドロシーは自身の名を名乗る。
実に上手い切り替えだ。
「それよりもバッポを探しに行きましょう。」
「あ、そうね、ウィス。では早速行きましょうか。」
ギンタとの邂逅も済ませた。
後は伝説のARMであるバッポの確保だ。
「当然、私は手を貸しませんよ?」
「そんなこと言わずに手伝ってよー。」
「丁重にお断りします。」
自分はあくまでバッポの探索に付き合うだけだ。
別に手に入れようとは思っていない。
「なあ、なあ!その探索に俺も言っていいか!?」
そんなウィスとドロシーに声を投げ掛けるはギンタ。
好奇心がありありと現れている。
特に彼の提案を断る理由など無かったためウィスとドロシーの2人は了承した。
♕♔♘♗♖♙
古風溢れる洞窟に辿り着いたギンタ達。
此処が伝説のARMであるバッポが眠る場所である。
待ちに待ちきれない様子であったギンタはドロシーの静止の声を振り切り、洞窟の入り口をぶち破る。
この世界に来た恩恵かギンタの身体能力は飛躍的に上昇していた。
彼の進行を阻む者は存在しない。
訂正、落とし穴に落ちていた。
「はあー、やっぱり連れて来るべきじゃなかったかしら。」
ドロシーは嘆息してしまっている。
「まあ、良いではないですか。」
後方でギンタの奮闘を見るのもかなり面白い。
異なる世界からの来訪者であるギンタの実力を見るのも愉しいものである。
「でもギンタは何も考えずに進んでいるわよ。」
「最悪の場合は私が何とかしますから、心配は無用ですよ、ドロシー。」
「え…じゃあ、私に協力してくれたり……。」
「しませんよ。」
これはこれ、あれはあれである。
「うー、ウィスのいけずー。」
拗ねるドロシー。
ウィスはそんな彼女に構うことはない。
「ね、少しだけ!少しだけで良いから!私に協力して、ウィス、お願い!」
「ドロシーのARM集めとやらにですか?」
「そ、お願い!」
「まあ、一考しておきましょう。」
我先にと先行するギンタ。
後方にて談話するウィスとドロシー。
なんだかんだ言って仲の良い一行であった。
そして遂に一行はバッポが眠る洞窟の深奥に辿り着く。
「此処がバッポが眠る場所……。」
「それにしても……」
「伝説のARMが眠る場所なのにトラップも何も無いわね……。」
伝説のARMが隠された場所にしては警備が手薄であり、余りにも不自然だ。
途端、前方の玉座に置かれている宝箱が怪しく光る。
そして大地が揺れ、一線を画す大きさを誇る巨大なガーディアンが顕現した。
「うおぉぉぉ───!?」
「出たわね、宝の番人が!」
各自臨戦態勢に移行し、突如現れた敵を見上げる。
ドロシーは箒を、ギンタは拳を構える。
ウィスは見据えるだけ。
「おおぉぉぉ───!!大きいし、おっかねぇ!でも…!」
「でも何、ギンタ!?」
「カッコイイ───!!」
「やっぱ帰れええェェェ───!!」
ドロシーの悲痛なる叫び。
ウィスは大爆笑である。
ヤバイ、面白過ぎる
「…!回避!」
「うおっと!」
そのガーディアンはその巨大な石作りの拳を振り下ろし、ギンタ達を攻撃する。
ドロシーの叱責を受け、ギンタはドロシーと共にその場を回避する。
「…ウィス!?」
「直撃したぞ!?」
だが今なお爆笑を続けるウィスがそのガーディアンの攻撃を躱すことなく、叩き潰されてしまう。
途端、大きな地響きが鳴り響き、周囲を震撼させる。
容赦することなくウィスが埋まった場所を踏みつぶし、そのガーディアンは足を進める。
「手前ェ!よくもウィスを!」
「こら、待ちなさい、ギンタ!無策に突っ込んではいけないわ!」
怒り心頭の様子でギンタはガーディアンへと肉薄し、拳を振るう。
だが……
「痛ェェェ───!?」
「…流石にあのガーディアンには効かないか。」
至って冷静にドロシーは敵の実力を分析する。
だが彼女の心の内は怒りで燃えていた。
「来なさい、フライングレオ!」
呼び出すは背中に翼を生やした巨大なライオン。
ドロシーの魔力が膨れ上がり、自身のARMを行使する。
自分が魔女だと知りながらも態度を変えることなく接してくれたウィス。
そんなウィスの存在はドロシーにとって素直に嬉しかった。
久し振りであったのだ。
ありのままの自分を受け入れてくれた存在は。
ぶっきらぼうで此方を引っ掻き回してもくれたがそれではウィスの存在は大きかった。
全く自分らしくない。
誰かの為に奮い立つなんて。
だがそれも悪くないとドロシーは思う。
「ドロシーに質問!」
「何、ギンタ!?」
此方は現在進行形で戦闘中だ。
集中力を切らすわけにはいかない。
見ればギンタはドロシーが目の前のガーディアンと闘っている最中に、バッポの奪取に向かっていた。
「喋るARMってあるのか!?」
「そんなもんあるわけないでしょうが!いたら気持ち悪いわよ!!」
「気持ち悪いとはなんじゃ───!!無礼者めが───!!」
宝箱から顔を出すは見事な顎髭を蓄えたダンディーなおっさんであった。
けん玉の姿で絶叫している。
「……は?」
ドロシーは思わず呆けた声を上げ、硬直してしまう。
何だ、あれは。
あれが伝説のARMだとでも言うのだろうか。
その一瞬が命取り。
「く…!しまった!?」
刹那の油断と気の緩みがもたらした隙をガーディアンは逃さない。
即座にドロシーのフライングレオを叩き落とすことで無効化し、ドロシー本人を捕まえる。
ドロシーは抵抗を行うが巨大なガーディアンの怪力の前では意味を成さない。
「ヤバイじゃねーか!?ドロシー、今、助けるぞ!」
ギンタがドロシーのピンチにバッポの顎髭を掴み上げ、駆け出そうとするも……
突如、ガーディアンがその巨体を揺らした。
その巨体を大きく態勢を崩し、バランスを崩していた。
否、何者かがその巨体を足元から持ち上げられているのだ。
当然、こんなでたらめなことをするのはただ一人しかいない。
巨大なガーディアンの身を易々と持ち上げるなど。
「いやー、なかなか刺激的な経験でしたね。」
ウィスは片腕のみでその巨体を持ち上げ、笑っている。
「…って嘘おぉぉ──!?持ち上げてる───!?」
ギンタは余りのでたらめな光景に空いた口が塞がらない。
「ドロシー、交代です。」
「…え…ええ、分かったわ。」
途端、ウィスのエネルギーが膨れ上がる。
認識し、知覚できるレベルにまで現れ上がった膨大なまでの魔力の本流が周囲一帯に吹き荒れた。
その暴力的な魔力がウィスを中心に天へと吹き荒れ、周囲へと波及する。
「…何て魔力なの…!?」
突如膨れ上がったウィスの魔力の強大さに驚愕を隠せないドロシー。
ウィスの魔力が爆発的に膨れ上がる。
「先ずはドロシーを解放してもらいますよ。」
途端、ウィスの魔力の本流がガーディアンへと直撃し、吹き飛ばす。
「…って、きゃああああ───!?」
ガーディアンの拘束から解放されたドロシーが為す術無く宙を舞う。
ウィスは宙に投げ出された彼女を即座に救出する。
「大丈夫ですか、ドロシー?」
「…ええ、大丈夫よ、ウィス。というかウィスって飛べたのね。」
ドロシーはもう突っ込み切れないとばかりに嘆息する。
もう驚くのも疲れたといった様子だ。
「さて、それでは……」
続けてウィスは緩慢な動きで左手を前方へと突き出し、親指で抑え込んでいた中指をはじき出す。
「─バン。」
途端、周囲の大気が震え、震撼し、凄まじい威力の衝撃波がガーディアンへと直撃した。
波紋状の衝撃波が生じ、周囲諸共あらゆるものを吹き飛ばす。
当然、そのガーディアンは為す術無く吹き飛ばされ、壁へと激突する。
必然的にARMとしての機能が停止し、そのガーディアンの動きは停止した。
一発KO。
「…って嘘ォォォ……。」
何あれ、強すぎィィィ。
ドロシーは唖然とするしかない。
─こうしてギンタ含むウィス一行は伝説のARMであるバッポを手に入れた─
その後、バッポはドロシーの趣味に合わないとしてギンタへと譲り渡された。
実質、重過ぎたのだ。
残るウィスと言えば……
「やっぱり私と一緒に行動しましょうよ、ウィス!」
「…。」
首越しに抱き着きながら頬を擦られながら、何故かドロシーに気に入れられていた。
どうしてこうなった
後書き
メルヘヴンはやはり面白い
そしてドロシー可愛い、もうヤバイです
次回もご期待を('ω')
感想と評価にもご期待
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