魔女の付き人(仮)
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異世界への扉 ─門番ピエロ─
前書き
修正版です
ではどうぞ
時間神殿が崩壊し、全てが終極へと誘われていく。
ゲーティアという存在を構成する72柱の魔人柱が瓦解し、ゲーティアが崩壊の苦しみに悶え苦しむ。
ウィスはロマニとマシュ、そしてキャスパリーグを救うべく、ソロモン王の最後の指輪の能力を発動した。
ウィスの生命の灯が崩壊し、世界との誓約が解かれていく。
その身を襲うは存在そのものの消滅と、魂の崩壊に伴う凄まじい程の激痛
次第に聴覚が─
嗅覚が─
身体の感覚が─
視力が完全に無くなり─
下半身が粒子となり瓦解し─
次第に上半身も光の粒子となり周囲へと霧散していく。
此処がウィスの長きに渡る人生の終極にして、旅路の終着点
だがそこに後悔はない。
だがスカサハには本当に申し訳ないことをした。
彼女はこんな自分勝手な自分を許してくれるだろうか。
何も言わず消えてしまうような、こんな自分を。
もしいつか彼女と再会することがあれば誠心誠意謝罪しよう。
そして二度と彼女の傍から離れないようにしよう。
「─。」
立香やマシュ達はもう自分がいなくても大丈夫だろう。
『またな。』
遂にウィスから発せられていた生命の粒子が周囲へと霧散し、その存在そのものが完全に消失する。
ウィスは今度こそこの世界から消滅した。
─だがウィスの旅路は此処で終わらない。始まりは終わりにして、終わりは始まりだ─
"トンネルご開通で~す。このような形での異世界人のお招きは初めてですがあなたは偶然にもこの門を通る資格を与えられました。それではどうぞ、お入りください。あなたのこれからの旅路に幸が多くあらんことを願って……。"
ウィスの眼前に顕現するは巨大な門。
門の頭部に取り付けられたピエロがだらんと舌を突き出し、巨大な門の扉を固く閉ざしている。
─これは?─
強靭な鎖にて閉ざされていた門が今、開かれた。
門の鎖が周囲へと無残に砕け散る。
まるでこの場に現れたウィスを歓迎しているかのようだ。
理解が追い付かない。
だが身体の自由は効かず、ウィスは為す術無く眼前の門へと引き寄せられる。
異世界へと通じる門が迫り、ウィスを呑み込み、新たな旅路の警鐘を鳴らした。
刻一刻と迫る歪な門
それは此処とは異なる位相に存在する異世界へと通じる扉。
─こうしてウィスは人知れず新たな世界へと旅立った─
♕♔♘♗♖♙
「─。」
意識が覚醒すれば遥か上空。
冷気が肌を刺し、ウィスは宇宙を一望できる程の高さに放り出されていた。
大気に溢れるは神代には及ばずとも潤沢なる魔力が満ち溢れている。
間違いない、完全なる異世界だ。
そしてウィスは現状、途轍もない速度で眼下の地面へと落下していた。
大気との間で生じた摩擦熱によりその身を炎が包み込み、破門状の衝撃波を生み出しながらウィスは墜落していく。
その身に掛かる膨大な重力はウィスを勢い良く墜落させ、大地との激突により肢体は爆発四散─
─することはなく地面すれすれで不自然に急停止した。
「ここは─」
見渡す限りに広がるは広大なまでの大自然。
大気に溢れるは神代以降の廃れたモノではなく、まだ神秘が存在していた時代と似たような魔力が大気に満ち溢れている。
そんなウィスの後方から迫る影が。
ウィスは何と無しに振り返る。
そこには……
ロボットにも似た敵が佇んでいた。
その身を強固な鋼鉄のアーマーが覆っている。
無言のままウィスへと勢い良く突進してくる敵。
此方と対話をするつもりは毛頭ないようだ。
奴はその強固な腕を振りかざし、無防備なウィスを軽々と吹き飛ばす─
─ことはなく、ウィスの姿は虚空へと幻影のように掻き消える。
無論、それはウィスが創り出した残像であった。
一瞬にして両者の立ち位置が逆転する。
敵背後にはウィスが佇んでいた。
正に神速。
瞬きも許さない程の高速移動である。
見れば感情を有さないはずの敵が驚愕したかのように肩を震わせていた。
ウィスは掌の中指を折り曲げ、親指の腹で抑え、敵の額を打ち据える。
破門状の衝撃波が周囲へと波及し、頭部を大きく陥没させた後、遥か上空へと吹き飛んだ。
そして宙に無残に放り出された鉄クズへと右手の人差し指と中指を突き出し─
鉄クズは空中で無残にも爆発四散。サヨナラ!
鉄クズは粉微塵になり、跡形もなく消え失せる。
宙にて飛散した銀の粒子が周囲を幻想的に照らし出す。
「ふーん、あれを簡単に倒すなんてやるわね、あんた。」
上機嫌なウィスに声をかける者が。
頭上から響くは澄み切ったソプラノ声。
見れば箒に乗った女性が宙に浮きながらウィスを見下ろしていた。
その魅惑的な肢体を露出が激しい服装が包み、腰まで届く長さのピンクの髪をツインテールへと編んでいる。身長は女性にしては高く、ウィスと同じく紅玉の瞳を有している。
そんな2人の間に緊迫した空気が流れ─
「貴方は?」
─ることはなくウィスは全く動じることなく言葉を返した。
「あたしの名前はドロシー。魔女よ。」
ドロシーは慣れた様子で箒から降り立ち、自身の名を名乗る。口元は円を描き、此方をどこか図る様子で見つめている。
「……魔女?」
魔女とはあの魔女のことだろうか。
いまいち要領を得ることができないが。
「そっ、あの魔女。」
「魔女ですか…。私の名前はウィスです。よろしくお願いしますね。」
第一印象、挨拶大事。
ウィスは握手をするべく右手をドロシーに差し出す。
「─。」
固まるドロシー。
先程までの人を食ったような様子は見られず、ウィスの手と顔を交互に見てどう反応すればいいのか迷っているように見られた。
一体どうしたのだろうか。
「どうしました?」
ウィスは怪訝に思い彼女に問いかける。
「…あんた私が魔女だって聞いて驚かないの?」
「…いえ、別に。」
魔女など聞きなれている。
実際に出会うったこともある。
そもそもウィスはこの世界の住人ではない。
彼女が魔女だとしてもとやかく思うことはない。例え彼女がこの世界で恐れられている存在であったとしても。
ウィスにとっては魔女?あー魔女ね、知ってる、知ってるという程度の認識でしかない。
それにウィスは魔女よりも余程恐ろしい存在を知っている。
キャスターのジルとか。
キャスターであるジルとか。
セイバーであるはずのジルの面影が全く存在しない、あのギョロギョロとしたキャスターのジルの目はトラウマものだ。
"ジャンヌは素晴らしと思いませんか!!?ウィスううぅぅぅ!!"
"おおー!!邪ンヌうううううう!!邪ンヌううぅぅぅ!!""
うっ、嫌なことを思いだした。
やめろ、その肥大化した眼球を近付けるな。
ウィスは顔を僅かに顰める。
そんなウィスに対してドロシーは……
「そう…。ふふっ。」
笑っていた。
楽しそうに、愉快そうに、実に愉しそうに、面白いものを見たというように。
「…?」
見ればドロシーはどこか嬉しそうな表情も浮かべている。
ただウィスは彼女と自己紹介をしただけなのだが。ウィスは彼女が頬笑む理由が分からず思わず首を傾げるしかない。
「私、何か変なこと言いましたか?」
「いえ、別に。ふふっ。私が魔女だと知って普通に私に接してくるウィスが可笑しくて。」
やはり魔女という存在はこの世界で恐怖の象徴なのだろうか。
「私の名前を……」
「これからはあなたのことはウィスって呼ばせてもらうわ。私のことはドロシーって呼んでくれない?」
「いえ、別に構いませんよ……。では、ドロシー。これで構いませんか?」
「ええ、これからよろしくね、ウィス。」
アキトとドロシー改めて握手を交わす。
「そう言えば私が粉微塵にしたあの鉄クズは何なんですか?」
「鉄クズって…、あれはARMよ。」
溜息を吐き、此方をジト目で見てくるドロシー。
「ARM?」
「ウィスは何らかのARMを使って最弱とはいえ私のガーディアンARMを倒したんじゃないの?」
「いえ、ただの身体能力ですが?」
ウィスさん嘘つかない、信じて。
「─。」
ドロシーは信じられないとばかりに此方を訝しげに見てくる。
だが残念、嘘は言っていないのだ。
「本当にウィスはARM無しで倒したの?」
「ええ。」
どこか得意げな表情のウィス。
「はぁ……、その軽装じゃARMは持っていないだろうし、魔力も僅かにしか感じられないから嘘は言っていないのだろうけど……。」
「初対面のドロシーに噓を言ってもしょうがないでしょう?」
「まあ、そうだけど……。」
ドロシーはどこか腑に落ちない表情を浮かべる。
「ふーん。じゃあウィスは素の身体能力でARMを倒す力を持っているわけだ。」
顎に手を当て、魅惑的な笑みを浮かべるドロシー。
この顔は何か悪だくみを企てている顔だ。
「ねぇ、ウィス。私はこれからある洞窟に向かおうと思っているんだけどウィスにも来てほし…」
「では、ドロシー。縁があればまた会いましょう。」
男・ウィスはクールに去るぜ。
ウィスは後ろのドロシーに手を振りながら歩きだす。
面倒事に関わるのは御免だ。
「ちょっと待ってよ、ウィス!?」
「…離してください!ドロシーの話からは面倒事の匂いがプンブンするんですよ!!」
ウィスは背中に抱きつくドロシーを振りほどこうとする。
「そんなこと言わずに!?」
「体のいいこと言って私を囮にするつもりですよね!?」
魂胆は見えているのだ。
背に抱き着くドロシーを引きずり、ウィスは歩き続ける。
「そっ…そんなことは考えていないわよ!?」
「なら私と目を合わせて話してください!?」
図星を突かれ目を泳がせるドロシー。
「あ、そうだ!!その洞窟にはバッポっていう伝説級のARMがあるって噂よ!!?」
ウィスを引き止めようと必死なドロシー。
「……。」
「わぷっ。」
突如、ウィスは抵抗を止め、歩みを止める。
ドロシーは急に立ち止まったウィスの背中に自身の顔をぶつけてしまう。
ウィスはドロシーの両肩を掴み、顔を近づけた。
ドロシーの顔が赤く染まっているがウィスに気にする余裕はない。
「ふぇ!?」
「その話もっとkwsk。」
異世界の至宝。とても興味深い話である。
─こうしてウィスの新たな旅が始まった─
後書き
最近メルヘヴンのOpとEdを聞いていると、無性にメルヘヴンの今作を執筆したい気持ちに駆られ筆を執りました
……つまり、連載決定!
他の作品と共に今作を執筆していく所存です
よろしくお願いします
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