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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第六十四話

 
前書き
どうも、ツイッターの物書きさんたちとクトゥルフ神話TRPGしてきました。想像の斜め下を行く行動にあっけにとられてました。フリーダムすぎだ。 

 

―二階 防火扉前―
 
 
 
「…………もうさ、今日は二階だけで良くないか?」
 
俺は、防火扉の前で袋一杯に入っているバルサ○を眺めながら呟いた。
 
「いや、四階に資料とか置きっぱなしだし、最低でも明日からは作業したいことがあるから…………。」
 
拓海は、両手に水の入っているヤカンを一個ずつ持っていた。
 
現在、二一三○。俺と拓海は二人で二階より上の階にいるGを退治するために、バ○サンを使おうとしていた。
 
「一応、軍刀も持ってきたからなんとかなるとは思うけど、せめて冬華は連れてきても良かったんじゃないか?」
 
あれはまだ俺たちが呉にいた頃の話。俺たちが廊下を歩いていると、
 
「あ!ゴ○ブリっぽい!」
 
と、廊下をカサカサしていたGを手掴みで捕まえていたことがあった。女の子がGを手掴みで捕まえるんじゃないとか、そもそもなんで捕まえれたんだとか、色々言いたいことはあったが、飲み込むことにした。
 
まさかこれほど冬華が居て欲しいシチュエーションがあるとは思わなかった。
 
「いやー、あの場に春雨一人は心許ないからなー。引っ込み思案だからね。」
 
…………ぐうの音も出ない正論だった。
 
現在、アイツ達は食堂で色々と話したり、買ってきたトランプとかで遊んでいる筈だ。
 
そんな中に人見知りな春雨を一人で居させるのはなかなか恐ろしい。下手したら会話が無くなる。
 
「それに、彼女達は少しでも話をした方がいい。まずは心を開いてもらえないとね。」
 
「…………それは自分自身じゃないのか?」
 
「千尋もだよ。」
 
俺たちは笑った。
 

 
 
 
「…………余裕だな。」
 
 
 
 
 
 
彼女は笑ってなかった。
 
「全く、指揮官さまがこんな感じで大丈夫なのやら。」
 
彼女…………若葉はポケットに手を入れて歩いてきた。
 
「よぉ若葉。さっきはありがとな。」
 
俺は少し前の光景を思い出す。
 
あれは、Gを三十匹ほど切り捨てた頃だった。そろそろカレーを作り始めないと間に合わないなーってなったときだった。
 
「…………軍刀貸して。お前達三人は提督の任務を進めるといい。」
 
そんなことを若葉が言い出した。若葉は俺が返事をする前に、俺の手の中から軍刀を奪い取り、食堂の外へ出ていった。
 
そして…………俺は驚いた。
 
彼女が、異常なスピードでGどもを切り捨てていく様子を見たから。あれは恐らく、天龍以上の腕前だった。
 
「…………他のみんなには黙っててくれ。」
 
全てのGを切り捨てた後、若葉は俺達に向けてそう言った。断る理由もなかったから、俺はあれだけのGを自分で処理したことにした。
 
なぜこいつがそんなことを考えていたのか、よくわからなかった。むしろ、自慢してもいいレベルだと思うのに。
 
「…………別に。それじゃ、私は花摘みに来ただけだから。」
 
若葉はそう言うと、俺達に背を向けて去っていった。
 
その背中は、寂しそうでも何でもない…………ただ、歩いているだけ。俺達に何も伝わってこない、無感情な背中だった。
 
「…………めんどくさいのが居るな。」
 
「…………めんどくさいのが居るね。」
 
俺達はため息をついた。
 
……いや、何も若葉だけじゃない。この鎮守府には、めんどくさいことが山積みだ。
 
「…………なぁ、拓海。ここの鎮守府の艦娘ってさ、本当に劣悪な環境にいたってだけなのか?」
 
だから、それらを一つずつ解決していこう。
 
俺がそう尋ねると、拓海は深く思案しているような顔をして黙った。
 
「…………詳しくは、立場上言えない。でも、どんなことが彼女達の身に起きているのかは言える。」
 
立場上。
 
その言葉を、拓海から聞く日が来るとは思わなかった。正直、納得行かないと言えば納得行かない。
 
でも、仕方ないことだ。
 
俺は艦娘。拓海は提督。
 
俺たちの仕事は戦うことだけだ。それ以外の全てを提督に押し付けているんだ。隠し事ぐらい許されるだろう…………と、自分に言い聞かせる。
 
拓海はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、一部分だけは教えてくれた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ここの鎮守府…………いや、今まで艦娘になってきた女の子達の半分は、無理矢理、もしくは仕方なく艦娘になった娘たちだ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―食堂―
 
 
 
「あれ、千尋さん?拓海さんは?」
 
俺が食堂に帰ってくると、食堂の電気は既に消えていた。どうやら、全員寝てしまったらしい。
 
「執務室だよ。あそこの中のGだけは処理して、他の部屋や廊下には○ルサンしてきた。」
 
どうやら、いくらか書類整理があったらしい。それに、男である拓海がみんなと一緒の場所で寝るのは些か問題があるだろうとも言っていた。
 
俺も男だけどな。
 
「そうですか……お疲れ様でした。」
 
春雨はそう言ってニッコリ笑ってくれた。
 
…………可愛いなぁ。
 
俺はそんなことを思いながら、改めて春雨をまじまじと見た。
 
長い横で纏められたピンクの髪の毛。
 
真っ赤な瞳。
 
明らかに常人の物ではないそれを生まれつき持っている春雨は、今までどんな風に世界を見てきたのだろうか?
 
…………多分、拓海はそれを考えて、春雨をここに連れてきたのだろう。
 
「…………頑張るぞ。」
 
俺は春雨の頭を軽く撫でると、食堂の椅子を部屋の隅に移動させ、それに腰掛けた。
 
今日分かったことがあるとすれば…………敵は深海棲艦だけではないということが判明した、ということだろうか。

「…………とっ、当然ですよ!絶対、若葉ちゃんと一緒に外を散歩するんですから!!」
 
春雨は、俺が考えていたこととは全く違うことを頑張ろうとしていた。うん、春雨はそれでいい。
 
「…………フフッ、そうだな。頑張れよ。んじゃ、おやすみ。」
 
俺は春雨にスコシダケ微笑むと、目を閉じた。
 
長い、佐世保鎮守府での生活。その一日目が、ようやく終わった。
 
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。ここで拓海が千尋にした話は後々に話すとして、数日後になりますが、僕の方からご報告がございます。どんな報告なのか、楽しみにしていてくださると幸いです。

それでは、また次回。 
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