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蒼穹のカンヘル

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二十九枚目

[『白音』の保護が完了したよ☆]

という嬉しいメッセージと…

[おい篝テメェ!俺のコレクション燃やしやがったな!?]

というエロオヤジからのメッセージが枕元に届いたのは、黒歌を保護し、小猫…白音の保護を依頼した翌日の朝だった。

アザゼルからのメッセージを読んでいると、俺よりも随分と大きくなったヴァーリが後ろから覗き込んだ。

「篝…何したの?」

「アザゼルが秘蔵してたエロ-異本を燃やした。
まぁ、アザゼルの事だから予備があるだろうがな」

「ふーん…」

するとヴァーリは増大した筋力で俺を抱え、膝の上に乗せた。

悪魔が人間よりも素の体力で勝り、更には体格差も有るとはいえ、ヴァーリに抱かれるのは変な気分だ。

「ヴァーリ、何度も言うが危ないぞ?
鱗で怪我したらどうするんだ?」

「そのくらいならディバイン・ディバイディングで『傷』を半減したら治るよ」

まさかそんな使い方が有るとは…

『ディバイン・ディバイディングとブーステッド・ギアは概念干渉系神器だからな。
【概念的半減】と【概念的倍増】だ』

「赤龍帝なら『傷の治りの速さ』を倍加したりするのか?」

『ああ。ただし、どちらも致命傷は治せん』

「ふーん…。
ま、リバースすればいいか…」

二天龍の能力については、今はそこまで重要じゃない。

本題は…

部屋の隅っこで丸くなってる黒猫だ。

「おーい起きろ黒歌。黒歌ー?」

起きない…

「仕方ないなー」

というヴァーリの声の後。

『Divide!』

ディバイン・ディバイディングが展開され、半減のボイスエフェクトが聞こえた。

ん?今度は何を半減したんだ?

と思っていると、ヴァーリの腕が伸びた、ように見えた。

そのまま黒歌の首を掴んでぷらーんと持ち上げた。

「今度は何をしたんだ?」

「私と黒歌とのあいだの『距離』を半減したんだよ。
それによって見掛け上私の腕が伸びたようにみえてただけだよ」

便利だなー…二天龍。

「にゃ?にゃー…にゃー?にゃおーん…」

「ヴァーリ、取り敢えず下ろしてあげたら?
この状態じゃ人化できんだろ」

「そうだね」

ヴァーリが黒歌を布団の上に下ろすと、直ぐに人化し、黒髪ロング、猫耳猫尻尾のロリになった。

「にあー…せっかく寝てたのに何の用かにゃ?」

「白音を保護したと報告が入った」

「ほんとう!?」

「ここで嘘を言うはずないだろう?
それに連絡を寄越したのはセラフォルーだ。
内容がちとアレだし口約束だが一応契約してるからな」

悪魔の契約とは、契約者から破れば悪魔に命を奪われ、悪魔側から破れば悪魔はその力が弱まる…と言うのがセオリーだ。

まぁ、今となっては契約者が契約を破棄しても命は取らないらしいけど…

「つー訳でメシ食ったらセラフォルーの所行くぞ」











姫島神社境内

「えーっと、帰っちゃダメかにゃ?」

「えぇい!面倒くさいぞ黒歌!
白音が追われたのはお前のせいじゃねぇっつってんだろーが!
つーか帰るって何処にだよ!?」

「いや、でもにゃぁ…」

ロストで跳ぼうとしていたが、先程からずっとこの調子である。

「篝、どうするの?」

「あー!もう!めんどくさい!無理矢理連れてく!」

ごねる黒歌に抱き付き、翼でくるむ。

「にゃっ!?」

「ヴァーリ!」

「はいはい」

その上からヴァーリが覆い被さるように俺と黒歌を抱き締める。

「カンヘル!」

祝福の龍杖を召喚し…コツンと石畳を叩く。

【ロスト】

視界が暗転し、再び光を取り戻した時には、セラフォルーの執務室。

「おや少年。早かったね☆」

「ああ、ちとコイツを連れてくるのに手間取ったがな」

黒歌の頭を鱗で傷付けないよう、ポフポフと撫でる。

「ふーん…その子が黒歌?」

「おう。で、白音は?
ここにいるのか?サーゼクスの所か?」

「今はリアスちゃんと一緒に居るよ☆」

「今から跳んで大丈夫か?」

「勿論だよ☆ あ、それと例の件頼むよー☆」

えー?あれだろ?<レヴィアたん>に出ろってヤツだろ?

「元から拒否権ねぇだろうが」

「そうなんだけどね☆」

ウゼェ…

「所で…なんでリリンの孫は1日でそんなに大きくなってるの?」

「まぁ、色々あるんだよ」

昨日は俺の後ろに隠れていたが、今のヴァーリは俺と黒歌をセラフォルーから護るように抱いている。

「んじゃ、グレモリー城に跳んでくる」

姉さんも居ると思うし…

「はいはーい。いってらっしゃい☆」

カンヘルで、床をコツンと叩く。

【ロスト】

再び視界が暗転。

そして目に入ったのは国会議事堂の数倍はあろうかという城。

スゥと息を吸う。

「リーアちゃーん!居るー?」

「篝、後で怒られるよ?」

「え?なんで?」

「まぁ、いいや…。
ほら、グレイフィアさんが来るよ」

見れば正面玄関が開かれ、グレイフィアさんが歩いて来ていた。

「お待ちしておりました。篝様」

綺麗な一礼がとても様になっている。

「あ、お邪魔します。
で、コイツが例の黒歌です。
妹の白音を保護したって聞いたので連れてきました」

「畏まりました」

案内された部屋には、赤髪の少女と白髪の猫耳ロリがいた。

「白音!」

「ねぇ…さん…?」

黒歌が白音に飛び付いた。

「あ、カガリ…」

リーアちゃんが部屋から出て来て、そっと扉を閉めた。

「久しぶり、リーアちゃん」

「ええ、久しぶりね…」

「姉さんは?」

「ちょうど入れ違いでグリゴリに行ったわ…」

あらぁ…

「それで…どうしてヴァーリはそんなに大きくなってるのかしら?」

「さっきの猫から身長を奪ったんだとよ」

「ペットの調教はしっかりしないとね!」

「そ、そう…」

リーアちゃんがすごく微妙な顔をした。

「あ、リーアちゃん」

「なに?カガリ」

「セラフォルーから領地貰ったんだけどさ、なんかヒントちょうだい?」

「領地?もう?」

「正確には管理を押し付けられたんだがな」

「見てみないとわからないわね」

そか…

「暇なときに連絡してくれ。出迎えてやるから」

「ええ、朱乃と一緒に行かせてもらうわ」

今度アザゼルとかもこっそり呼ぼうかな…

「あ、忘れてたわ」

ん?

「カガリ、ヴァーリ」

「「何?」」

「貴方達って12歳よね?」

「うん」

「学校行ってねぇけどな」

「知ってるわ。だから…」

だから?







「貴方達二人には学校に行ってもらいます」
 
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