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ランス ~another story~ IF

作者:じーくw
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第12話 鬼畜王戦争の記憶Ⅱ






――目も眩む光は完全に消失し、そして魔人姉妹は動揺を隠せないでいた。



『わ、私達の最強の攻撃を―――』
『掻き消した……?』

 それは突然起こった。だからこそ、動揺し、驚きを隠せられない。
 人間側もそうだが、それ以上にサイゼルやハウゼル側もだ。何せ、彼女達の紛れもなく全力攻撃であり、最強の業。更に今まで修行を重ねて完成させたもので、本日初公開。つまり、これまでに見た事の無かった業だ。


 それがその身に迫る瞬間に 光の攻撃は完全に消失した。そして 光の先に男が立っていた。

 人類を守る――と言わんばかりに。あの特徴的な姿で。



『――マスク・ド・ゾロ、此処に降臨。魔人共よ。ここからはこの私が相手だ』



 その後ろ姿を見た者達は、皆思い返していた事だろう


――以前もこうだった、と。

 
 あの時は、魔人レイと相対していた時の事だった。

 志津香とかなみ、そしてフェリスとハンティに加え、パットンとリック、カーマのバランスの良い部隊に分かれていた時に魔人レイと対決した。
 討伐隊においてただ1人、魔剣カオスを使う事が出来たカーマ。だが、幾ら魔人の無敵結界を斬る事が出来るとは言え、所詮は武器だ。使い手の力量次第で最強にでも最弱にでもなる。接近戦を好み、喧嘩三昧をしてきた魔人レイ。素人とは言わないが、まだまだ発展途上の女剣士の攻撃など容易に読み取る事が出来、全く攻撃が当たらなかった。
 そして、カオスも取り上げられてしまって絶体絶命の状態。

 そんな時に、この男は 全く同じ様にこうやって現れたんだ。

 まるで狙ったかの様なタイミング登場した。凝りに凝った台詞で、芝居がかった台詞でこんな具合に。

 その姿を見て、最初は正直白けた気もする。痛い男だ、とも思えた。だが、その強さに、戦う姿に、そして何よりも護ってくれている後ろ姿に、志津香もかなみも……いや その場にいる全員が感じ取った。


――()の姿を。


 言動や仕草、性格等はまるで見る影もないが、それら全てが妙に芝居がかっている所があって、そのおかげで更に思えたのかもしれない。


『あーーーっ!! あ、あいつは!! 確か変態マスク!? 魔王様が言ってた奴だ!』
『貴方が噂に聞く現在の人間界における英雄……。でも、まさかあの攻撃を防ぐなんて……いったいどうやって』

 サイゼルとハウゼルも姿が確認できたようだ。
 だから、合点がいったらしい。自分達の最強の攻撃を掻き消したと言う事も。魔王ランスを城まで追い返した、と言う実績の持ち主であれば、自分達程度の力など防ぐ事は出来るだろう、と。

『う、うぐぅ…… ほ、ほんとだったんだ。ほんとにこんなヤツがいたんだ。無茶苦茶な戦闘力を持ってるって言ってたけど……。あーーー、折角完成した魔法だったのにぃぃぃ!! せーーっかくハウゼルと頑張って完成させたのにぃぃ く、くやしいぃ! あんなの、ただ人間が作ったデマだってお、思ってたのにぃ!!』

 きぃぃ、と地団駄を踏む……事は、宙にいるから出来ないが、まるで空気を蹴っているかの様に聞こえてきたのは気のせいではない。先程の絶望感が漂う空気が台無しになってしまっているが、それ程までに悔しかった様だ。 
 

『さて、私が時間を稼ごう。他の者達は負傷者の手当てを。そして、一度態勢を整え直すのだ』


 サイゼルがパニックを起こしている隙に、ゾロは満身創痍の状態の討伐隊に向かって言った。死者こそは出ていないが、長時間の戦い。攻撃は通じず、ただ只管防ぐだけの戦闘。身体よりも精神に重くダメージが残った事だろう。
 魔剣や聖刀と言った対魔人武器を持っていない状態での魔人との戦いは絶望の二文字だ。人間よりも遥かに強固な身体を持った闘神たちでさえ、かすり傷1つ付けられず、最後は敗北した歴史があるのだから。

 だが、ゾロの指示を――そのまま実行に移す者はいなかった。

 あの光の魔法を放たれたその瞬間から、死を覚悟した者も多く、助かった、と意識できていないのかもしれない。……特に前衛を務めていた戦士達は、後衛の者達を何度も庇った事もあり、相当な重症を負っているからだ。

 そして、これは事前にもミラクルが言っていた事だ。恐らくこの男、マスク・ド・ゾロは今回の魔人戦で現れるだろう、と。だが、激しい攻撃の嵐の中で、懸命に防ぎ、防衛を続けていて、それらを考えている暇など無かった。

 だから 少し放心してしまった、と言える。
 

『ヘルマンの長。シーラ・ヘルマン』
『っ……、は、はい』
『この中で動けるヒーラーは君だけだ。無傷とは言い難く、辛くきついかもしれないが、今の内に早く対処を。このままでは死者が出るかもしれぬぞ。ここは私が請け負った』
『わ、わかり……ました』

 瞬時に全員の状態を確認したのか、ゾロはシーラに指示を出した。指名されたからか、或いは声を掛けられると思ってもいなかったからか、シーラは最初こそは驚きの表情をしていたのだが、直ぐに気を引き締め直した。最低限の治癒を自身にかけて、後は全員を助ける為、ヒーリングを使用した。

 それを見届けた後、改めてゾロは魔人姉妹の方を見る。

『ふんだ、ふんだ、ふーーんだ!! こっちは空から攻めてるのよ!! どんだけ強かったって、届かなきゃ意味ないってもんよ! じわじわ追い詰めて、ぜーーーったい殺してやるんだから!』

 魔人ラ・サイゼルの怒りが武器に宿るかの様に、出力が増した。絶対零度近い冷気が周囲の空間を包み込み、軈て武器の先端部分が輝き出す。

『なんでアンタに効かないのか知らないけどね! 絶対、ぜーーーったい当ててやる! 魔法を消す? いや二つに割った? 何したか知らないけど、何かトリックがあるんでしょ!? 大体そんな事出来るやつがいる……わけ、が……、……ぁっ!?』

 怒りのままに声を上げていたサイゼルだったが、自分が口走った事で、ある可能性を見出していた。そう、先ほどの魔法を、最大最強の魔法をこの男は消滅させた。
 左右にあの光が分かれ……消滅した。そう、消すと言うよりは割る。……否、まるで魔法を斬ったかの様だった。そんな真似ができるのは、長く生きた時間の中でも1人しか知らなかったから。

『まさか、姉さん。……彼は』
『……そ、そんな訳あるか! アイツはもうずっと前から行方不明! 生きてるか死んでるかも判らない状態だって聞いてる!』

 ハウゼルも同じ気持ちだった様だ。だが、認めたくないのか、サイゼルは 最後まで言っていないハウゼルの問いに首を思い切り左右に振った。 

 頭に確かに過った。脳裏に、あの10年ほど前の記憶が蘇った。

 妹のハウゼルを助けた。妹だけではない。当時 魔人ケイブリスに敗れ、幽閉されていた魔人ホーネットまで救い、最後は人類を勝利へと導いた男の姿を。
 現魔王ランスと肩を並べていた一世代前の人類の英雄の1人。

 中でもハウゼルの衝撃は大きい。

 当然だろう。最初見た時は全く連想しなかった。自分が知っている彼とは程遠い印象だったからだ。あんな格好をしてたりしないし、あんな言動だってしない。ただ出鱈目に強い、と言う噂以外は共通点がなかったから。

 だが、一度でも連想させてしまうと、もう止められなかった。

 大恩のある相手――とこの戦いが始まる前にサイゼルに言っていたが、その中でも突き抜けている、と言って良い程の恩がある。返しても返し切れない程の恩がある。あの時の主ホーネットを救出。主を盾に取られ、やむを得ず魔軍に従い、リーザス侵攻をさせられていた自分、ラ・ハウゼル、そして魔人四天王の一角シルキィ・リトルレーズンを解放してくれた人物。
 人間と言うものを心から信頼し、心から尊敬した初めての相手。

『ば、ばか! ぜったいに違うって! 見ろハウゼル!! あれ、だろ!? かお、かおが違う!』
『……い、いえ、マスクをしてて、お顔までは確認が出来てないでしょう?』
『だーかーら、そのマスクが一番の理由だって! あんな変なの、アイツ付けてなかったでしょ!? あんな変人格好の趣味なんか無かったでしょっ!?』

 物凄く失礼なことを言っている、のだが とりあえず行動。
 あーだのこーだの言っている間、ずっと待つ義理は無いのだから。

 ゾロは、両手を構えた。



『右手に炎の翼、左手に氷の翼。合わされ―――――氷炎の双翼』



 攻撃に移ろうとしていた。
 それは、先程あの魔人姉妹の2人が放とうとしていた魔法に酷似している……否、全く同じ魔法を放とうとしていた。



『さぁ 行くぞ。お前達の力を、返そう―――』




 魔法を合成し、白く光り輝く球体を作り出した。光線状に放った先程とは違って球体。それを思い切り――投げつけた。



『ま、まさかっっ、はう、ゼる!! よ、避けて!!』
『きゃあああああぁぁぁ!』



 高速で迫るボールは、ハウゼルとサイゼルに当たる寸前の所で弾けて光った。着弾し、爆発するのではなく 自分の意思で変えられる、と言う事だろうか。もしも、無敵結界が無ければ消し飛んでいたであろう一撃だ。サイゼルとハウゼルのいる空が、白く染まり……すべてが見えなくなってしまったから。


『う、うぐぐぐぐ、な、何なのよ、アイツ……!! わ、私達のを真似た?? 一回見ただけで?? む、むちゃくちゃ、過ぎ……、こ、こーなったら……』
『ま、まって姉さん。視界不良の状態で、不用意に近づくのは危ないわ』
『大丈夫よ! こっちには無敵結界だってあるし、空を飛んでるん……だ、……から?』


 驚愕し、激昂し、……そして最後には唖然とする。

 先程まで、あの宙を浮くランス城の所で魔法を使っていた筈の男が、目の前にいる。
 そう、何もない空間に――空を飛んでいるのだ。


『悪いな。空を飛ぶのはお前達の専売特許ではないのだ』
『な、ななな!!??』
『っっ!?』


 魔法で宙に浮く。
 出来ない、とは言えない。人間達の中でも空を自由自在に飛び回った規格外の魔法使いが存在していたから。でも、それは高難易度の魔法。魔法Lv3の魔力が無いと無理だと言われている力。

 呆けている間に、ゾロは2人に近づく。

『今一度、戻れお前達。魔の王の元へ』

『ひゃんっ!?』
『ひあっ……、な、なななっ!?』

 右手と左手をハウゼルとサイゼルの豊満な胸に……(別にイヤラシイのが目的じゃないです)密着させると同時に、また光った。その光は――転移の光だった。

 それを見たサイゼルとハウゼルは悟る。ただのセクハラ……攻撃などではない、と言う事が。


『『!?』』


 以前の人間界での大事件、勇者災害の時に 魔王はマスク・ド・ゾロを〆ようとして攻撃を開始したのは知っている。実際には人間側のデマだと思っていた様だが、それでも話くらいは聞いていた。



 その結果は―――返り討ちにあった、と言えば良いのか……、攻撃をした筈の魔王ランスがアメージング城まで飛ばされてしまった、と言う事。


 その力の正体が、この強制転移魔法だと言うのなら、何処かへと飛ばされてしまうのは目に見えていた。


『っっ! ふせげ……ないっ!?』

 ハウゼルは、瞬時にそれを理解し、サイゼルを引っ張って逃げようとしたのだが、まるで溶接でもされたかの様に身体が離れなかった。

 そして その転移の光が自分達を包み、軈て全てが消失する刹那の時間に聞えてくるのは、眼前の男の言葉。



『先程の力――。ラ・バスワルドの力を今の状態で体現したか。見事だ。ハウゼル、サイゼル』


 それは まさかの賛辞の言葉だった。
 そしてもう一度聞こえた。それが……最後だった。
 

『人間達はお前達に殺らせない。彼女達の命を奪おうと言うのなら、このマスク・ド・ゾロが全てを止めよう。魔の王に、……ランスにそう伝えよ。魔人たち』











 次の瞬間には、まるであらかじめ決められていたかの様に、とある場所に移動させられていた。飛んでいたのにも関わらず、しっかりと立っていて 目が慣れた頃には何処に飛ばされたのかが分かった。

 そう――ここはアメージング城。更に言えば魔王の玉座の間。

 その玉座に鎮座しているのは魔王ランス。

 あからさまに不機嫌な様子だった。普段の魔王ランスであれば、ハードなお仕置きが待っている……と青ざめる思いなのだが、近ごろは魔王化の傾向が激しく、もう殆ど魔王の血に支配されている状態だ。そんな魔王ランスを見たからこそ、サイゼルは死を覚悟した程だった。

 だが、意外や意外。お仕置きも何もなく、全くのお咎めなしで終わった。
 
 そして、サイゼルやハウゼルが知る由もないが、その理由はただ1つだった。魔王ランスも悟ったからだ。ハウゼルとサイゼルに何があったのかを。……そう、あの男がまた現れたのだと言う事を。




















 全てが終わった。魔人たちを撃退する事ができ、ゾロはランス城へと降り立つ。
 非戦闘員のヒーラーたちも集まり、どうにか全員が無事だったのを確認したゾロは、ほっと息をつく。

『皆、無事で何よりだ。では、私はこれで――』

 そして、そのまま去ろうとしたその時だった。


『いや、まだ帰ってもらう訳にはいかぬな。貴様とは少々話したい事があるのだ。――ゲート・オープン』
『……?』

 ゾロの後ろに、ミラクルが異界へとつながるゲートを展開させた。

『ふはははは! 今だ! 余の配下たちよ!』

 ミラクルの号令もあり、一斉にゾロをゲートへと押し込む。魔法を使って身体能力を上げた志津香が。城内を掛けまわり、皆の世話をしていたヒトミが。同じく、先ほどの戦いででは傷もあり、参戦出来なかったが、その身体に鞭を打って 脚を引き摺りながらやってきた かなみが。瞬間移動を駆使し、背後よりゾロを捕らえようとしていたハンティが。兄のパットンに背を思い切り押されて駆け出したシーラが。

 即ち、彼を慕う者全てが 聊か強引ではあるが ゾロを異界へと飛ばす事に成功させたのだ。異界のゲートはゾロを飲み込み、扉は閉じた。それを確認したミラクルは高笑いをあげる。

『ふはははは。よくやったぞ。さぁ ここからが本番。実に楽しいお茶会になりそうだ』
『……ミラクル。もう逃げれない、のよね? ここに入れたら。アイツは、何処かへ行ったりしないのよね?』
『うむ。ゲートの先は異世界。そして一方通行。異界内での追いかけっこは出来るが、外へは叶わぬ。……余と同等の魔法使わなければな』
『………ッ!!』

 最後に気になる言葉を訊いた志津香だったが、それでも良いと直ぐに入り込んだ。

『わ、私も行く……っ!』
『か、かなみお姉ちゃん。私が肩を貸しますから、気を付けてー』
『あ、ありがとう、ヒトミちゃん。……ヒトミちゃんも行こう』
『………うん。行く。絶対行く』  

 続いて、かなみとヒトミが。

『………』
『ほら、シーラも行くよ。ぶつかるんだろ? 思いっきり言ってやるんだろ?』
『それは、ハンティ様も……でしょう? ヒーロー君は……』
『まぁー、そりゃあね。……養育費、がっぽり請求しに行こうじゃないか。お互いに』
『……はいっ』

 ハンティにシーラ。

 集うな彼を慕う者ばかり。

『私も行こう。……あの男がそうなのであれば。行かねばな。清十郎はどうする?』
『……あの娘たちに任せる。ここの防衛を穴だらけにする訳には行かんからな。オレを含めた男達は城を守ろう。娘たちと共に、あの男を連れて帰って来い、アームズ』
『ああ。そのつもりだよ。………』

 清十郎だけではなかった。
 男達全員が、見守っていた。女達に託して。

 彼を慕うのは男女関係ない。ランスであれば沢山の仲間達が集まった所で、男だったら、『男はいらん!』の一言で終わるかもしれないが、彼は違い、信頼を深めていくから更に慕う者増えていくから。
(見る者が見れば、ランスも彼と同等、まではいかないかもしれないが、信頼は厚いので、実際はそこまでの差は無かったりする。その彼がランスを信頼してたから、連動して繋がっていった、と言うのが大きいかもしれない)

 誰もが、彼の帰還を心待ちにしていた。――絶望の世界で、一刻も早く光を。否そうではない。力を欲したのではない。ただただ皆が……友の帰還を心待ちにしていただけだった。

『……よぉ ヒュー。アイツは戻ってくるかねぇ? 寧ろ……本当にあの仮面の男が、アイツ……なのかね』
『さぁてな。……だが、ハンティがあそこまで言ってるんだし、可能性は高いだろう。……それに あのハンティを惚れこました男だ。それだけで信じるのには十分だ。……ヘルマンにもでっかい恩がある。……まだ、返し切れてねぇぞ。返し切れるかもわからねぇ。とっとと帰ってきて貰わねぇとな』
『だな。同じくだ。……オレも、ハンティを救ってくれた(・・・・・・)礼。まだし足りてねぇから』

 信じて帰還を待つヘルマンの総司令ヒューバートと、元皇子、皇帝のパットンは、1つの大きな事件を思い返していた。


 LP6年 ヘルマン革命。


 国を取り戻す為に、腐敗政治を打倒する為に。その為に彼の力を、ランスと共に借りた。その時の恩は決して忘れられるものではない。

『かっかっか! そういやぁ、ランスのヤツにもメチャ恩はあるよなぁ! 言わないと、魔王状態でもアイツ、怒り狂いそうだ。……ってな訳で、アイツもどーにかしてやらんと。その辺も戻ってきてくれたら有り難いってもんだ』
『まぁ……、否定はしねぇけど。あれじゃないか? 何年も暴れてんだから、その辺はもう貸し借り無し……どころか、貸しばっかりだって思ってんだけど』

 陽気に笑うパットンと呆れるヒューバート。

『それを言うならば、ゼスも同じよ。彼には、返しても返し切れない恩がある。ランス共々、人類にとって無くてはならない男だった故に。……彼がいなければ、我々は間違いなく、あの戦争で命を落としていただろうからな』
『……はい。ガンジー様の言う通りです』
『ランス……は、兎も角、あの人は間違いなくですね。同感です』

 そこに加わったのは、元ゼス国王 ラグナロックアーク・スーパー・ガンジー、そしてその側近のカオルとウィチタ。征伐のミト、カクさん、スケさんの3人組だ。

『おっ? ガンジー国王。それに側近の嬢ちゃんたちもか』
『いや、私は元・国王だ。今はマジックが国王だからな』
『はははっ そっか、そうだったな。アンタ見てたら、国王ってイメージが強くて。いや、征伐のミト、って方が強烈か? 3人衆だし』

 大きな男達がここに集って談笑を始める。
 ヒューバートは それを客観的に見て ぼそりと一言。

『ここにランスのヤツがいたら、暑苦しいから止めろ、って言いそうだ。……前にもあったし。……ま、嬢ちゃんたちがいるから、緩和されたり……か?』

 遠い目をしていた。
 あの第二次魔人戦争の記憶。今でも鮮明に覚えている。色々と大変だったが、それでもどうにか回っていたのは、ランスと……あの男がいたからだ。

『………とっとと戻って来いよ。あの子達にも、オレ達にも、……いや、ランスにだって お前が必要なんだ』

 ゲートの扉を眺め続ける。
 城の防御は決して解かず、それでも時を見てはその扉を誰もが注視していた。

 真の意味での英雄の帰還を皆が望んでいたから――。
 
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