レーヴァティン
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第五十三話 水の都にてその七
「むしろね」
「そうだよな」
「僕実はこのことが気になっていたんだ」
「俺達が男ばかりだってか」
「それがどうかってね」
「確かにな、どうもな」
「男ばかりだとね」
さらに言う剛だった。
「色気がなくてね」
「面白味がないな」
「八条学園って女の子も多いじゃない」
「大体半分だな、高等部の商業科や農業科なんてな」
こういった場所はというと。
「それこそな」
「女の子の方が多いよね」
「ずっとな」
「ああしたところもいいよね」
剛は高等部の商業科や農業科等女の子が多い場所への憧れも見せた。
「僕心から憧れるよ」
「御前もてないとかか?」
「いやいや、高等部は普通科でね、彼女も六年越しの娘がいるけれど」
「それじゃあいいだろ」
普通科で彼女もいるならとだ、久志は剛にそれならいいだろと実際にそうした顔を見せてそのうえで言った。
「別に」
「いやいや。彼女がいてもだよ」
それでもとだ、剛も負けじと返す。
「やっぱり女の子が多いと華があるじゃない」
「それでか」
「そうした世界にも憧れるよ」
「そういうことか」
「後宮とかもいいよね」
「あれな、ハーレムな」
「いい場所だよね」
「あれ男はよくてもな」
つまりそのハーレムの主にとってはだ。
「それでもな」
「女の子同士はだよね」
「ああ、大変らしいな」
「女の子同士の争いって怖いらしいね」
「壮絶で陰湿で陰惨でな」
「見ていられない位だっていうな」
久志はこのことは達観した顔で述べた。
「歴史でも女同士の争いが一番えぐいしな」
「はい、欧州でも中国でも」
順一がその話をしてきた。
「恐ろしいお話があります」
「何かドイツ辺りで女王か何か同士の争いがあったな」
「ブルンヒルデですね、ニーベルンゲンの歌の元にもなった」
順一はこの名前をすぐに出した。
「あれは凄かったですね」
「何か血生臭くてな」
「執念も桁が違い」
そうした争いでというのだ。
「歴史にその名を残しています」
「そんなに凄かったんだな」
「猛女だったと言われています」
「何か物語でもな」
久志はそのニーベルンゲンの歌のことを思い出して言った。
「結構以上にな」
「猛女ですね」
「そうだよな、どうにも」
「愛だけでなく復讐にも全力を注ぐ」
「有り得ないまでの力をな」
「そうして生きていますね」
順一もニーベルンゲンの歌の中でのブルンヒルデについて述べた、尚この物語からドイツの作曲家ワーグナーは四部から成る大作ニーベルングの指輪という歌劇を作っている。
「そして死んでいます」
「凄いな」
「女同士の戦いとなりますと」
「そうなるか」
「それも女性です」
ブルンヒルデはその一面を表しているというのだ。
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