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歌集「冬寂月」

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四十




 小夜更けて

  憂きし心は

    友となり

 独りかたぶく

   月を見しかな



 夜が更けるほどに…ただ寂しさが増すだけの日々…憂う心だけが友であるかのようだ…。

 あれこれと考えても詮ないことだが、もし愛しい人と在れたならと…そんな愚かしいことを考えてはため息をつく…。


 空の月は傾き…短い夜の終わりが近づく…。



 徒然に

  物そ思へば

   明けにける

 短き春の

    夜に夢もなく



 やっと春になったかと思えば、瞬く間に過ぎ去ってゆく…。

 夜さえも足早に過ぎ…少し昔を振り返っている間に朝になってしまう…。

 恋しい人に夢でさえ会えないのに…もはや想うことさえ儘ならないようだ…。



 
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