レーヴァティン
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第五十三話 水の都にてその三
「そうして焼き肉屋行くじゃない」
「そこで買ったお祝いにか」
「お肉どんどん焼いて」
そしてというのだ。
「お酒もね」
「しこたま飲んでか」
「で、翌朝ね。焼き肉の時はビールだけれど」
この組み合わせを楽しんでいるというのだ、焼き肉や串カツにはこちらの酒だという者も多いであろう。
「その時にはね」
「二日酔いか」
「ビールの二日酔いも辛いからね」
淳二は笑ってこの酒の二日酔いの時も話した。
「だからね」
「それでか」
「うん、おいらもね。朝風呂に入って」
「二日酔い解消させてるんだな」
「起きた世界でね、また麻雀で買ったらね」
「嬉しいんだな」
「大抵勝ってるけれどね、強いよ」
淳二は自分から笑って話した。
「実はプロで九段だし」
「プロかよ」
「そうなんだ、まあ大学を出たらね」
「まさかそれで食うつもりかよ」
「いやいや、お店に正規の店員としてスカウト受けてるから」
それでというのだ。
「そっちで生きていこうかなってね」
「思ってるんだな」
「麻雀しながらね」
「そうしていくか」
「こっちもいいよ、将棋とはまた違うけれど」
将棋の世界は表の世界とされている、そして麻雀は裏となるだろうか。ギャンブルの世界であるとみなされて。
「面白いしね」
「麻雀な、俺はな」
「君トランプはしてもギャンブルはね」
「こっちはそれしか遊びないからな」
そのせいでというのだ。
「するけれどギャンブル自体にな」
「興味ないんだ」
「そうなんだよ」
実はというのだ。
「だからな」
「麻雀もだね」
「しないんだよ、ルールだって知らないさ」
「面白いのに」
「面白くてもルール知らないんだよ」
もっと言えば興味もない、久志は他のギャンブル競馬や競輪、スロットやパチンコやルーレットにも興味がない。
「どうもな」
「おいらとはそこが違うね」
「仲間で同じく酒と風呂が好きでもな」
「二日酔い対策も同じでもね」
「そこは違うな」
淳二とはこうした話をした久志だった、そしてだった。
一行は湯舟だけでなくワイン風呂やサウナ、そして水風呂にも入ってそうして酒を完全に抜いてから外に出て朝の市場で果物を食ってだった。そのうえで。
吟遊詩人についての情報を集めにかかった、それは丁度朝食の果物を買って食った市場で行った。その市場でだ。
ヴェネツィアに来たというその吟遊詩人の話を聞くとだった、市場に出店を出している香辛料屋の親父が一行に話した。
「ああ、あの人最近有名だな」
「そうだよな」
「凄い歌が上手で琴の演奏もな」
「琴を使ってるのか」
「そうさ、それがまた逸品らしくてな」
「逸品か」
「噂によるとな」
こう前置きしてだ、香辛料屋の親父は立派な口髭がある顔で話した。
「オルフェウスのな」
「オルフェウスっていうとあの、か」
久志はその名を聞いてすぐに言った。
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