ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~
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偵察-リコンナイセンス-part3/残された虚しさと疑心
前書き
自分でも迷走していると思ってます。自分で積み上げた状況のせいとはいえ、地下水の扱いとか難しい…
でも書きたい部分があるから最後まで頑張ります。
ティファニアたちウエストウッド村のみんなと炎の空賊団。彼らをクロムウェルに化けたアンチラ星人の魔の手から救い出したサイトたち。そしてその間、ダークメフィストが魔法学院に現れ、それをウルトラマンネクサスが迎撃した事件。
それに続いて、アンリエッタが立案した、炎の空賊団とトリステイン軍の合同で行われたアルビオン潜入作戦。
しかし、トリステイン正規軍が目の前の名誉と手柄に眼がくらむあまりの独断行動によって…いや、それ以前にアルビオン大陸そのものが正体不明の結界で覆われてしまったため、失敗に終わった。
「申し訳ありません。私の監督不行き届きでした」
サイトたちから報告を聞き、トリステインを束ねる者としてアンリエッタは、協力に応じてもらいながらトリステイン軍に裏切られた空賊たちに謝罪せざるを得なかった。
「いや、あんた個人のことは恨んどらん」
「じゃが、あんたの部下からの仕打ちははっきり言って許せん。悪いが、わしらはあんたらの軍と共闘すんのはやめさせもらうぞい」
ガル、ギル船長はアンリエッタにそう言った。確かにアンリエッタ一人を悪人のように見立てる気はない。自分たちと交友関係のあったウェールズの愛した女性ということもある。それにどんなに優れた為政者であっても、ド・ポワチエたちのような者たち『全て』の貴族至上主義の考えを改めさせることは不可能だ。
「待ちなさいよ!確かに私たちの方に非があるのは否定できないけど、あんたたちだけであのアルビオンの結界を突破できると思っているの!?」
ルイズが盟の解消宣言を下したガル船長たちに抗議を入れる。続いてサイトもルイズに同調して話に割り込んだ。
「俺もルイズに賛成です!あのバリアは簡単に突破できるもんじゃない!あのバリア実際に見たことがある!」
サイトがそこまで言ったところで、同席していたハルナも、サイトの言葉を下に記憶をたどり、該当した光景を思い出す。
「そういえば地球にいた頃、GUYSが移動基地もろとも捕獲されたことがありました。そのときあの人たちを捕らえていた結界と、似ているような…」
3、4年前の地球にて、月面から帰還したGUYSの移動基地『フェニックスネスト・フライトモード』もろとも、エンペラ星人に仕える暗黒四天王の一人『策謀宇宙人デスレム』によって中にいるGUYSのメンバーたちが捕まってしまうという事件があった。それを知った民衆が手のひらを返すように失望と罵倒を浴びせる光景を、デスレムはメビウスに見せ付けて戦意をつぶそうとした。その後GUYSの通信越しの激励と、それを聞いて心を改めた民衆の激励、そしてウルトラマンジャックの参戦によってデスレムはメビウスに倒された。そのときに展開されたバリアと、今回アルビオン大陸を包み込んだ結界は非常によく似ていたのである。
『だとすると、デスレムの同族…デスレ星系人の可能性があるな。厄介なことになりそうだぜ』
ゼロも直接デスレムを見たことこそないが、メビウスの一件もあってデスレムを知っている。しかも自分が生まれる前にも、エンペラ星人と共に光の国を襲撃したことがあると聞いている。その同族が、この星への侵略に加担していると考えると、より一層気を引き締めなければならない。
なんにせよ、このままトリステインと空賊の共同戦線がなくなることは、たとえ今アルビオンへの侵攻はおろか偵察もできないのならば同じことであっても、いずれアルビオンに救う脅威を取り除かない限り平和が訪れない以上、危険の方が高い。
「確かにお前さんの言うとおりかもな。じゃがまたそっちの馬鹿な部下共に裏切られたんじゃかなわんからの。そうなっては共闘も何もないわ」
「我等だけで、あのアルビオンの空を取り戻すこととする」
しかし、ギル・グルたちの言うとおり、どちら一方に共同戦線の障害となる者が味方のうちにいるのなら、共闘以前の問題だ。
「…わかりました」
自分に引き止める権限はない。異なる組織同士自分の部下の不始末は責任者である自分が負わされる。それを重く受け止めたアンリエッタはそれを受理し、去っていく船長たちを見送った。
「私は、まだ未熟な女王ですね。いまだに配下のことを把握しきれていないなんて…これではウェールズ様の使者の一人に、ルイズたちに加えて裏切り者を選んだ頃と何も変わらないわ」
「姫様、そんなことは…!」
「陛下、ミス・ヴァリエールの仰るとおりです。僭越ながら、陛下もまた一人の人、全てを把握するというのは無理があるかと」
去っていった後で自嘲気味にそうつぶやくアンリエッタに、ルイズはフォローを入れようとするが、アンリエッタは首を横に振った。
「ルイズ、アニエス。その心遣いはありがたいわ。でも、私もリッシュモンのような反逆者を排除したことで油断していたかもしれません。共に戦うべき戦士からの信頼を失い、結果として民を危険にさらすという王族としてあるまじき失態を犯してしまいました。
ですが、女王である以上今回の失敗は逃げずに受け止めなくては」
かつてアルビオン王党派と共に、反逆者レコンキスタと戦ったという炎の空賊団。それほどの力を持つ集団からの信頼を失ったことは残念だ。だがここでくじけては敵の思う壺だ。空賊団が抜けた穴を、何とか埋めなければならない。同盟国でありながらいつまでも共闘に応じようとしないゲルマニアとも、レコンキスタのことで話をつけなければならない。
「…ところで、ミスタ・クロサキとミスタ・ハルノは?」
ふと、アンリエッタがこの場にシュウとムサシの二人がいないことが気になり、サイトたちに尋ねる。
「それは…」
「彼なら現在、水のメイジ代わりに彼が持ってるインテリジェンスナイフが診てくれてますよ」
サイトに変わってジュリオがそのように答える。
「もしや、彼に何かあったのですか?」
アンリエッタは、シュウがウルトラマンだと知りながらも、自分や国そのものが何度も危機から救われた恩義から隠している。そのウルトラマンの一人であるシュウが突然医者に見てもらうほどの事態に陥るなど予想だにしていなかった。
「クロサキ君は、肉体と精神の両方において酷く消耗しているようで、帰還直後に倒れてしまったんです。ただ、命に別状は見当たりません。ミスタ・ハルノも同伴でそちらにいますよ」
あの戦いの際、再び敵となったカオスヘッダーに憑依されたネクサス=シュウ。ムサシはそのことが気になり、付き添っていったのでここにはいないのだ。
「そうだったのですか。でも、無事なのですね」
「……」
アンリエッタがそれを聞いて安堵するが、サイトは鋭い視線をジュリオに向けていた。
「サイト君、僕にそんな熱い視線を送られても困るんだけど?」
「てめえ!!」
「平賀君!?」
わざと挑発的に、ともとれるジュリオの軽薄な態度にサイトは切れ、ハルナたちをどけて彼に詰め寄ろうとすると、アニエスがジュリオと彼の前に割って入って止めた。
「サイト!やめんか!!」
「けどアニエスさん!!こいつはネクサスがカオスヘッダーに憑依された時、仲間を見捨てて逃げたんですよ!!」
確かにカオスヘッダーを相手に、怪獣使いのジュリオはまさに彼らの格好の餌食にされかねない。それはムサシからカオスヘッダーのことを聞いていたサイトも理解している。だがジュリオのリトラなら十分に、ホーク3号のルイズたちを守りながら連れ帰る余裕はあったはずだ。
「助けようともしないで、こいつは…!!」
「やれやれ…僕は別に見捨てたつもりじゃないよ。君たちやウルトラマンの力なら、たとえ僕がいなくたってどうにかできた。証拠にネクサスは助けに入った新しいウルトラマンの危機さえも救って君たちを守った。それなのに僕を薄情者として扱うなんて、君こそ人でなしじゃないか?」
「いけしゃあしゃあと…!」
「サイト、やめなさい!ここは姫様の御前なのよ!!」
「ルイズ!でも……」
「平賀君、やめよう。あの人、平賀君が何を言っても適当にあしらうと思う」
「…わかったよ…」
ルイズからも差し止められ、一度はそれでも反抗しようとするも、続いて宥めてきたハルナの言葉も加わったことで、大人しく下がることにした。
「それじゃ、僕はここで去るとしよう、これ以上僕がここにいると、サイト君のイライラが余計に募るみたいだからね。
女王陛下、僕には後で別の方からお知らせください」
ジュリオは最後にサイトに向けて薄い笑みを浮かべ、一足先に退室した。サイトは最後に彼が浮かべた笑みを見て、ジュリオ本人が何一つ自分が悪いと思っていないことを察し、さらにジュリオに対してむかつきを覚えた。
「…ミスタ・クロサキの話の途中でしたね。話を戻しましょう」
アンリエッタがそう言って皆に気を取り直させた。
「気になるのは、アルビオン大陸を包む結界ですね。現在その中に、独断専攻したド・ポワチエらの乗る小型艦が閉じ込められ、ウルトラマンの光線でさえ寄せ付けない…
正直、今の我が軍であの結界を打ち破ることは不可能です」
「姫様、それなら私が虚無であの結界を破って見せます!」
前回の戦いでは、結局自分の出番といえることがなかったので、今度こそ自分の力を振るわねばとルイズは名乗り出たが、アンリエッタはただ一言、
「なりません」
と切り捨てた。
「ど、どうしてです!?」
「今回の作戦で、我が軍がアルビオン上空の雲海に身を潜め、小規模の偵察を行ったことがわかった以上、敵もそれを警戒してくるでしょう。同じように偵察に向かったところで、今度は雲の中に姿を隠している怪獣に見つかる可能性が高いです」
アンリエッタがそういったところで、今度はデルフが鞘から顔?を出して補足を入れる。
「それに加えて、虚無は一度の魔法で精神力を一気に使い果たすもんだ。あの結界を破ることができるにしても、何年も待つ必要があると思うぜ」
「ぐ…」
自分の頼みの綱である虚無でさえ、あの結界を破ることは不可能ということだ。結界を破壊するだけの精神力をチャージするにしても、何年も待っている間に、敵はトリステインどころか、世界を支配するだけの力を十分に蓄えられる。そんなに待てるはずもない。女王の力になるどころか活躍の場さえ厳しい状況に、ルイズは歯噛みする。せっかく手に入れた伝説の系統も、変なところで役に立たないとつくづく思わされる。
「以前、タルブ戦役で確保した、始祖の遺産の一つであるあの鉄人に頼るのは?」
アニエスがそのように提案したが、アンリエッタは首を横に振る。
「あれも、改造されたロイヤル・ゾウリン号共々一切解析が進んでいません。ミスタ・クロサキに頼むとしても、今の彼は…」
そこでアンリエッタは言葉を途切れさせた。
今回までの戦いで、シュウはほとんど安息といえるような時間がなかった。肉体的もそうだが、それ以上に彼は精神面に支障をきたしてしまっている。その状態で、高度なオーパーツでもある始祖の遺産…ジャンバードの解析などできるはずもない。
「仕方ありません。ミスタ・クロサキにはサイトさんとルイズたちと共に、学院でしばらく休養を取ってもらいましょう。それまで我々の方は、これまで通りレコンキスタに備えて軍備を整えましょう」
これまでシュウにこの国や自分のことをまとめて救われた恩を返すという理由も含め、アンリエッタはひとまずシュウとテファの二人を学院に置くことを許した。
これまで襲撃を幾度も受けた学院なので二人をここにおくことについてはお勧めできないことなのだが、それを言ってしまえばルイズに対しても同じことが言える上、現在のアルビオンが謎のバリアで封鎖されていることと、何度も同じ場所を連日で襲撃するような明確な理由も見られないので、学院に置くことを反対することはできなかった。逆に町に置いたら置いたで、テファの持つ虚無、そしてウルトラマンであるシュウを狙って再び町が襲撃され、ただでさえ復興に時間がかかっているというのにまた被害が出てしまい、キリがなくなる恐れがあった。冷たいが、シュウとテファは敵の手に渡していい存在でもなく、失っていい存在でもないが、同時に侵略者に狙われる理由でもあったのだ。だから少しでも、万が一また事件が起きても被害が少なく、学院の生徒たちもまだ十分に戻っておらず、そして目の届く場所でもある魔法学院へ留めることをアンリエッタは決めた。トリスタニアの兵を警護につけなかったのも、テファがハーフエルフであることや、あまり大げさに配備させてしまうと、かえって敵味方両方に対して不信感を煽る恐れがあったので配備しなかった。
「サイトさん、ルイズ、ハルナ。貴方方はミスタ・クロサキのことを見てあげてください」
「…大丈夫です、いわれなくても、そのつもりです」
「姫様の命令とあらば」
「は、はい!」
これでシュウの身の安全はある程度確保された。しかし、敵側はシュウの正体を知っている。アルビオン大陸を覆うバリアが展開されているとはいえ、後はそのうえで何かを仕掛けてこないかが心配である。
そうなった場合、当然ながらサイトは戦うつもりだ。ウルトラマンとして。
城内の医務室にて、水の魔法で地下水が治癒の魔法をかけてシュウの傷と疲労と癒していた。終わったところで地下水はシュウの手によって腰のホルダーにしまわれた。
「これで少しは体力が戻ったと思いますぜ」
「どう?体の調子は」
「…少しは楽になった」
ムサシから容態を聞かれ、シュウは頷いた。
ここしばらく、本当に肉体的にも、それ以上に精神的にも苦痛だらけだった。
だがこんなところでぬくぬくしていても意味はない。すぐにでもアスカを助けに行きたい。自分は戦わなければならない。ただ人を守るために、償うために。
しかし…何度も誰かを守ることを願って戦い続けているのに、結局何度も悲劇の発生を許している。どれだけ願っても、どれだけ粘っても、どれだけ体を張り続けても…何度も…。
「……ねぇ黒崎君、カオスヘッダーに憑依された後遺症とか、何か体に異常を感じないかい?」
「…いや、今は疲れしか感じない。痛みとか…何もないんだ」
「本当に?」
「ああ。嘘は言っていない」
シュウの表情が翳り始めたのを見たムサシは、あの戦いでシュウが変身した状態でカオスヘッダーに取り付かれたときのことを思い出した。以前、自分も同じことを経験し、カオスウルトラマンという凶悪な敵を作らせるのを許してしまったことがある。シュウも同じことをされたから、当然ネクサスをベースにした新たなカオスウルトラマンが誕生していたはず。だが、新たなカオスウルトラマンは現れなかった。それどころか、憑依されたときに発生した、カオスヘッダーの放つ光と異なる…赤黒いオーラ。
(あのオーラはカオスヘッダーさえも飲み込んでいた。何かあるのか?彼の体に…)
ムサシは、そこについては不気味に思っていた。
「…そう、わかった。けど、何かあったらすぐに誰かに言うようにして。絶対に無理をしたらだめだ。もう今回のことで、君一人でアスカさんを助けに行くことは不可能だとわかっただろ。
それに、今の精神が疲労している状態で戦っても、体が思うように動かないはずだ。これを機会にしばらく休んだほうがいい。サイト君やティファニアちゃんが心配しているだろうから…ね?じゃあ、皆を呼んでくるよ」
「…」
静かに部屋を後にしたムサシに対して、シュウは無言だった。ただ何も言わず、この世界に召喚されたことよりも、生気が抜け落ちたような足取りでベッドに伏せた。
ティファニアたちを結局自分の戦いに巻き込んでしまい、かといって自分がウルトラマンとして戦うことを捨てることができず、そのまま自分の身に鞭を打ち続けて戦ってきた。だが戦い続けるほどに、彼の求めた形とは異なる結果ばかりが残る。自分の戦いに巻き込まれたせいですぐそばにいるテファやリシュも傷つけ、学院も危険にさらし、さらには別のウルトラマンであるアスカもまた邪悪な組織に捕まるという失態を犯した。今回も、結局助けるどころか、不測の事態もあったとはいえ、アスカが囚われているであろうアルビオンへの侵入もできなかった。
悔しさと、自分に対する怒りと無力感ばかりが募る。なぜ自分はいつまでたっても、誰も救えないままなのか。考えれば考えるほど、また自分の中に負の感情が芽生えていく。カオスヘッダーに憑依された時、それらの感情がさらに爆発し、そしてあのどす黒いオーラを誘発したのでは?タイミングとしてはそのように考えられる。そして一瞬のうちに怪獣たちを一掃した。強力で、恐ろしい…力。
もしや……あのまま負の感情を抱いたまま戦っていたら…俺は…?
負の感情を抱いた自分の行き着く果てに、メフィストやムカデンダーと戦ったときの凶暴かつ獰猛な自分の姿を思い出した。
膨れ上げる負の感情を吐き出すかのように、敵を殺すためだけに常人を超えた力を振るって暴れる。ウエストウッド村の時も、ロサイスの時も、そして今回の件でも……自分は抑えきれない感情のままに、自分の成し遂げたいことを成せられないことへの焦りといら立ち、怒りから…自分を失いかけた。
誰かを守りたくて戦うという自分の願いと裏腹に、獣のようにただ心のままに暴れる。そんなことは、この世で最も無意味なことだとシュウは考えている。しかしその混乱しか招かず、寧ろかつての自分が防げなかった悲劇を、己の手で引き起こすところだった。
もしあのまま戦い続けていたら、俺は……
それはもはや、メフィスト…メンヌヴィルの言っていた通りの、『血の匂いがする者』。
自分が倒すべきと強く想っていた、スペースビーストたちと何も変わらない、生きているだけで全てに害をなす、平和を乱す愚かな存在だ。
(俺は…なんのためにビースト殲滅兵器を設計した?
なんのためにナイトレイダーに入った?
なんのために光を手にしたんだ…)
自分が何かをしようとしても、逆に自分は次第に平和を乱す存在になっていく。そうとしか思えない現実が続き、果てしない虚無感が彼の心を支配していった。
(俺のやってきたことって…なんだったんだ。
そもそも、今の俺は、何だ?)
「シュウ…いる?」
ベッドに腰掛け、俯くシュウ。すると、ムサシから呼ばれてここへ来たのか、サイトとティファニア、ルイズ、ハルナが彼の元を来訪した。
「体の調子は平気か?」
「…今のところは、何ともない」
サイトからの問いに、シュウは目を逸らしながら答えた。目にかつての生気がない。これまで共に戦ってきた中で、彼が見せてきた覇気が感じられなかった。やはり、自分を助けるためにアルビオンへ囚われてしまったアスカ=ウルトラマンダイナを救えなかったことがかなり堪えていたようだ。それに加えて…サイトたちの脳裏に、シュウがネクサスとなった時、カオスヘッダーに憑依された問に湧き上がったあの赤黒いオーラを身にまとった姿が浮かんだ。この二つの点が、今の彼から本来の毅然とした心を失わせていたことが予想された。
「…平賀、ティファニア」
消え入りそうな声で、彼は口を開いた。
「俺はもう…どうすればいいのかわからない。これから、俺は何をすればいい…何をしても、誰かを傷つける結果しか生まなかった俺は……」
今までに見たことのない、弱々しいシュウの姿。サイトたちは絶句する。
(これが、あのウルトラマンに変身した男なの…?)
ルイズはにわかに信じられないと言った様子だった。成り行きという形だが、彼とは何度も共闘してきた。生意気な平民だとは思うが、それでも彼は己の体を常に張りながら戦ってきた。それが、今では見る影もなかった。すべてを諦めようとしている、堕落寸前の人間に見えてくる。
ティファニアは、強く心を痛めた。ここまで自らの身をと心を削ってまで、ウルトラマンとして誰かを助けようとした彼。もはや、見てられなかった。
ムサシから背中を押された時のことを思い出し、それで勇気を振り絞って、彼女は口を開いた。
「…ねぇ、シュウ。すぐじゃなくていい。でも今度こそ話して。あなたに何があったのか…愛梨さんって、貴方にとってどんな人だったのか」
「…愛梨のことを、か?」
少し驚いたように、わずかに目を見開いてテファを見る。今すぐにでも聞きたそうな真剣な目を向けられていた。それだけなら、以前までの自分なら適当に話すのを拒んでいたかもしれない。だが、このときのシュウは虚無感を抱いていたためか、口を閉ざし続けるほどの気もなかった。
「…わかった」
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