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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と職場体験編
  NO.040 合同職場体験・三日目 vsステイン

 
前書き
更新します。 

 
ワイドショーやちまたでは悪名轟くほどの名を持つ『ヒーロー殺し・ステイン』。
殺したヒーローの被害履歴が6割が人気のない死角で発見される事がある。
出久はそれもあるだろうが、やはり一番は飯田をずっと付けていた猫の功績でもある。
それですぐに辿り着く事に成功したのだ。

「飯田君! 無事!?」
「い、いや……奴の個性なのか体が動かせない……体を切られてからだから……」
「やっぱり……情報通りだ。斬るのが条件なのかな……? とりあえず、猫さん達は逃げて!」

まずは手伝ってくれた猫達を退避させた後に、ステインから目を離さずに観察しながらも出久は飯田以外にも一人ヒーローが倒れている事に気づいて苦い顔をする。
飯田一人なら高速移動をかませばすぐに逃げうせることは可能だ。
だが、二人も担ぐとなれば速度が落ちて追いつかれてしまう。
どうすればこの現状を打破できるのか出久は頭の中で隙を作らずに警戒しながら考える。
だが、そこで飯田から思いもよらない言葉が発せられた。

「緑谷君……君は手を出すな……君は、関係ないだろ!!」
「なんで!? 飯田君は今動けないから動ける僕がいないと!」
「それでも……だ」

飯田はすでに意固地になってしまっていて出久の助けを必要としないほどまでに頭に血が昇ってしまっていた。
そんな飯田の事をつまらなそうにステインは見ながらも、

「『助けに来た』か……いいセリフだ小娘」

ステインは出久を真っすぐに目に据えながら『だが』と問う。

「俺は今からそいつらを殺さなきゃいけない。ヒーローの偽物は排除しなければならない。
女といえど、ぶつかり合えば……弱い方が淘汰されることになるが……さぁ、お前はどうする……?」

ステインの威圧に出久は圧倒された。
そういう犯人たちはなにかしらの『圧』を持っているものだと以前にオールマイトに聞かされていた出久は、それでもどうにかして時間を稼いでヒーロー殺しを食い止める。
そう言う考えに至ったために、裏手で現在位置の情報を仲間のみんなに一斉に送信して携帯は仕舞った後に拳を構えて、だがそこでまだ意固地の飯田が「君には関係ない事だ。逃げろ!!」と宣ってくる。

「飯田君、友達でしょ? それにヒーローの何たるかを十分に知っている飯田君からそんな独りよがりの言葉なんて聞きたくない……他にも言いたいことは色々ある……。でも後にする……」

助けは呼んだ、守る命は二つ。逃げるなんて言う選択肢は最初から除外。
出来る限り足掻こう。
出久は再度拳を構えながら、

「オールマイトが前に言っていた……“余計なお世話はヒーローの本質”なんだって……! だから飯田君が何と言おうと僕は飯田君達を守るよ!」

ステインにそう言って睨みを効かせた。
その出久の言葉に、覚悟にステインは久しく喜びの感情を抱いた。

―――そうだ。ヒーローとは戦う相手に恐れはあれ、力量の差はあれ、それでも勇気を持ってヴィランには背を向けずに守ろうとするものを定めて立ち向かっていくものだ。
この小娘はヒーローたる資格を持ちうる人間だ、と。

「小娘……ハァ……おまえ、良いな」
「ッ!」

出久は実力の差は当然あってしかるものだと判断して最初から全力で挑む決意をして、

「一気に詰める!」

瞬間的な脚力強化による高速移動をして出久は何度も路地裏の壁を跳ねていき、ステインは 何度も視線を彷徨わせて出久の動きを捕えようとする。

「そこか!」

ステインが振り向いた先は己の目の前だった。
刀を振り抜いたステインだったが、もうすでに出久の姿は掻き消えていた。

「ぬぅ!?」

気づけばステインの足下を潜り抜けたのか背後へと移動をしていたのだ。
そして、

「はぁっ!!」

一気に手のひらをかざして炎を噴き出してステインを覆い尽くす。
さすがに多数の個性を持つ出久にステインも一瞬思考を停止するが、すぐにバックステップして避けることに成功する。
隠しナイフを出久に放とうとするが、

「にゃあああああああ!!」

それをさせまいと出久はハウリング・インパクトを放ち、すべてを叩き落とす。同時にステインも衝撃波で壁まで叩きつけられる。

「ぐぅ……ハァ……なんだ、お前……? その複数の個性は?」
「そう簡単に教えると思いますか?」
「だろうな……ならば手数で圧倒するとしよう」

ステインは鍛えた自慢の移動速度で出久に接近戦を試みる。
刀は仕舞い、両手にナイフを構えている。
ならばと出久も爪牙を展開して、接近戦を行う。
それが、ステインの狙いだと気づかずに……。

「シッ!」
「はっ!」

それからナイフと爪がぶつかり合う。
ナイフによる刺突で、ぶつかるたびに鋼鉄化しているにもかかわらず衝撃が伝わってくる。
やはり油断できない!そう出久は判断して一気にステインへの間合いを詰めていく。

「間合いを詰めるのも戦略的にはいい……だが」

出久が気づいた時には手のひらが少しだけ切られていた。
いつの間に!?と言う思考をする出久だが、なぜかまだ動けることに違和感を覚えた。
斬られる事で発動する個性ではない……?
それでステインに視線を送ってみると、なんとステインはナイフについた出久の血を舐めていたのだ。

「ッッッ!?」

瞬間、出久はその場で足をついて動けなくなってしまった。

「(そうか! ステインの個性は血の摂取による相手の束縛!!)……くっ!」

やられる!と思った出久だったが、ステインは動けなくなった出久を素通りした。
目指すは飯田が倒れている方向だった。

「お前は良い……志と言い、度胸、覚悟、技量も……口先だけの人間ではないと判断した。こいつらとは違い、お前は生かす価値がある……」

そう言いながらもステインは飯田を刺し殺そうとする。

「飯田君! やめてーーーー!!!」

出久が叫んだ時だった。
そこに燃え上る赤い炎が通過していきステインはなんとか避けた。

「今日はよく邪魔が入るな……」

ステインがそう愚痴って見た先には、

「…………緑谷。こういうのはもっと詳しく書いてくれないと分からないだろう? 遅くなっちまったじゃねぇか」
「轟君!!」

そこには轟焦凍の姿があったのだ。

「どうして轟くんがここに!?」
「どうしてっていうのは俺の方だ……緑谷は違う場所だったろう? それに少しだけ考えさせられた。一括送信で位置情報だけってことは……緑谷が意味なくこういうことする奴じゃないから、救援を呼べってことだろ?」

そう言いながらも轟は氷を展開して動けないでいる全員を滑らせて自身の背後へと運ぶ。
そして炎を使ってステインに放つ。

「大丈夫だ。すぐにプロが来る。そして情報通りだな。俺の友人たちは……やらせねぇぞ。ヒーロー殺し!」
「轟くん! ステインに血を摂取させちゃいけない! それで動けなくなっちゃう!」
「なるほど……それでか。しかし、女の血を飲むなんて……お前、変態だな」
「ぐっ……」

轟の的確なセリフにステインは少しだけだがたじろぐ。
そんな隙を見逃さなかった轟はすぐに仕掛けようとして……飛んできたナイフを頬に掠らされていた。

「(ッ!? すぐに復帰していつの間にかナイフを投げただと!? やべぇ!)」

血を出してしまった事に焦る轟。
ステインはすぐに接近してきて血を舐めようとして来る。

「インゲニウム……いい友達を持ったじゃないか」
「くっ……!」

ナイフを投げたり、刀を宙に投げたりしてなんとか轟の動きを封じに駆けようとして来るステインに、なんとか凌いでいる轟。
だが、力の差は歴然であるのはもう分かった。
なんとか凌ぐしかないという出久と同じ判断をした瞬間だった。
しかし、ここでまた飯田が意固地のまま轟に言う。

「二人とも、やめてくれ! そいつは僕が! 兄さんの名を継いだ僕が仕留めるんだ!」
「継いだのか……だがおかしいな。俺が見た事があるインゲニウムはそんな顔をしなかったぞ? お前んちも色々あるんだな……」

自身の家の事情も相まって轟は飯田にシンパシーじみたものを覚えていた。
されど戦闘はしっかりとこなす。でないとやられてしまうからだ。
格上の相手……隙など見せていられないからだ。

出久はなんとか動けないかと思っていた。
その時だった。

「(動かせる!)」

一方で、ステインは轟の頭上をとっていた。
だが、そこで出久のハウリング・インパクトがさく裂してまたしてもステインは吹き飛ばされる。

「緑谷!?」
「なんとか動かせるようになった! なにかの条件があるみたい!」
「ってことは……血液型か!?」

それで倒れているヒーロー『ネイティヴ』はB型。飯田はA型。
そして出久はO型であることから。

「ってことは血液型で決まりだな」
「ハァ……正解だ。だが、それが分かったからと言ってお前たちに勝ちを譲るつもりはないぞ」

そう言ってステインはまたナイフを構えている。

「奴の反射速度は半端ねぇ……」
「うん。轟君と僕の炎も避けられるほどだからね」
「だから二人を担いでの移動は難がある。だからどうにか粘ってプロが来るまで耐えるぞ」
「うん! 頑張る!」
「ああ。頼りにしているぞ緑谷。二人で守るんだ……!」

こうして出久と轟のタッグが成立したのであった。
飯田はそんな光景を見せられて涙を流しながらも、

「もう、やめてくれ……僕は」
「やめてほしけりゃ立て! なりてぇもんちゃんと見ろ!!」

轟の気持ちがこもった叫びに飯田は心に火が付いた気がした。



 
 

 
後書き
ここで切りです。
次回で決着かな?


轟くんはしっかりと出久の事も考えてのステインへのセリフを言っています。
女性の血を舐めるなんて変態ですからね。 
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