SAO -Across the another world-
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四話 不可視の世界
東京都台東区には、防衛省がある。
俗に「市ヶ谷」と呼ばれているその組織は、日本国の防衛に関する事を一手に司り、自衛隊の上に立つ組織である。国民の平穏な日常を保っていながらも、国交省や文科省のように表で目立つ事はあまりなく、治安組織なりに日陰者として扱われる事の方が多い組織である。
市ヶ谷駐屯地と称される防衛省の敷地内には、大きく分けて建物が二つあった。一つは旧館と呼ばれる建物。そしてもう一つは、新館と呼ばれる薄い緑色の装飾が目を引く建物である。その新館の、隠された特別なエレベーターを下った先にある地下施設は、十一月の季節通りに肌寒い。そこには蛍光灯が無く、赤色に点灯した非常灯しか光源が無い為か多少薄暗い。その地下の一角に、その部屋はあった。
入り口のドアを開ければそこには地上にある一般企業のオフィスがものが現れる。見た目は普通に一般企業のオフィスである。グレーを基調としたデスクが並んで設置されており、その上にはパソコンやら書類を挟み込んだファイルやらが置かれている。部屋の隅にはホワイトボードが、その反対側の壁際にはコーヒーメーカーなどが置かれた棚があり、そこには数人のスーツを着た男女が、コーヒーカップを片手に談笑していた。知らない人がこの部屋を見れば、きっと外の青空が見渡せる窓の無い、不便な一般企業のオフィスだと思うだろう。
しかし、そこはオフィスなどでは無い、この日本という国のアンダーグラウンドを司る場所であった。名を「防衛省情報本部傘下 第一情報局」と言った。
その部屋のデスクに置かれた一台のノートパソコンの前に、かつて「鼠」と呼ばれた女は居た。
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東京都新宿区・防衛省 [10:10]
鼠/アルゴ・DAIS所属二等特曹
彼女は「あの時」とはまるっきり姿が違っていた。まずトレードマークであったヒゲのペイントは描いておらず、「鼠」のイメージはそこで大きく損なわれている。髪も金髪では無く、しっかりと整えられた茶髪である。服は地味な色合いの私服であり、目にはブルーライト遮断の為か、度が入っていない、所謂pc用の眼鏡をかけていた。
かつての小賢しい雰囲気とは違い、今では知的なイメージが漂う元「鼠」。流石にあの世界での出来事をこちらの世界に引っ張って来る程、本来の姿の「鼠」は馬鹿では無かったという事だ。本当の馬鹿であったのならば、「鼠」はここに存在する事すら容認されない者となっているからだった。
防衛省情報本部傘下第一情報局、通称DAISと呼ばれる諜報組織に、「鼠」は籍を置いていた。入しょうした理由の詳細は長くなるので省くが、要約すれば実力が認められてのスカウト、である。
「DAIS」、諜報の世界では日本のCIAと称されるその組織は、日本国内外あらゆる所に情報網を巡らせており、そこに引っ掛かった案件には実力行使を含む対応を行使し、警察や自衛隊の一般部隊等では対応出来ない様な大規模犯罪の芽を一つ一つ摘み取って行くのを主な任務としていた。所謂、CIAやFSB、MI6等と同じ情報機関であり、その国のアンダーグラウンドを司っているとも言える組織であった。
普段は防衛省情報本部を隠れ蓑としており、常時世間には非公開の組織であるDAISは、警察や自衛隊等といった既存の治安維持組織と違い、超法規的活動が政府によって容認されていた。勿論それは、テロ予備犯だと断定された被疑者を国家の名の下、法機関の許可無しに始末できるということだ。それによって、大規模犯罪を起こす可能性がある対象者を礼状無しに逮捕、あるいは実力行使によって強制排除することが、この組織には許されていた。
組織のモットーは「法を越えた悪には法を越えた制裁を」という任務内容に対してどストレートとも言える内容の文であった。そのモットーを「鼠」は気に入っており、任務を遂行する時にはいつもその文を心の中で唱えていた。といっても、彼女は対象者に対して実際に手を下し、その手を血で汚す普通警補官や特別警補官と称される者とは違い、諜報警務官と呼ばれる電子諜報のスペシャリストであった。
テログループや犯罪組織のコンピューターのハッキングは勿論の事、脱税や麻薬取引に関わっている個人のコンピューターにもまるで本物の鼠の様に忍び込み、その証拠を第三者に送信して対象者を検挙していた。その活動スタイルから組織内では彼女の事を「マウス」と渾名する様になり、彼女自身もその渾名を昔の自分と重ね合わせ、気に入っていた。
高校を卒業してすぐの十八歳の時に国家公務員試験を受け、見事合格した「鼠」は、入省時に防衛省の幹部に披露したハッキングの腕を買われて防衛省情報本部へと配属。そこでサイバー防衛関連で著しい功績を残し、一年足らずで特務部隊であるDAISへと栄転したが、配属されてから二年後に世間を賑わせた「SAO事件」に巻き込まれ、約二年半のキャリアを棒に振るうことになった。だから経歴上では四年半のキャリアの筈なのだが、実際は二年少しと短い。
だが、「鼠」はSAO事件に巻き込まれた事はマイナスでは無く、寧ろ良い経験だと思っていた。常時最前線に赴くSAPやAPと違い、任務時にはずっとDAISのオフィスに籠り、コンピューターとにらめっこしながら遂行している彼女にとっては、「死が隣り合わせの世界」で戦える初の機会であった。
だが「鼠」ことプレイヤーネーム「アルゴ」は、あまり前線に出る事をよしとはしなかった。それは、諜報部員であることの保守性だったのかもしれないし、或いは彼女自身の内面に、「死にたくない」という願いがあり、それが現実の行動にも影響を現したのか。どちらにしても、彼女は前線へは出ずに情報収集をして攻略に貢献していた。情報屋としての気質が抜けなかったのかもしれないが、とにかく彼女は戦うことをなるべく避け、他人に情報を渡して生き残り、そして二年の月日を費やしてあの異世界から無事に生還してきたのであった。
彼女はリハビリが終了したと共に職務に復帰していた。だが、役割的には前までのSOではなく、今度はレーダー波の解析によって情報収集を行う「RO」というポジションが宛がわれていた。
専門分野であるSOの、ポストからすれば左遷とも言える配置転換だが、それはそれで仕方が無い事であるから、彼女は再度の配置転換までに実績を残して栄転してやろうと息巻いていた。
だが、運命の歯車はすぐに狂い始めた。それは必然であったのかもしれないし、偶然であったのかもしれない。しかし、仮想世界の生還者の「行動力」に魅せられた者にとっては、必然的な変化であった。
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人生なんて、どう転ぶか分からない物だ。栄える方向に転がる事もあれば、逆に墜ちるように転がる場合もある。
それは決して予想出来るものではなく、時の流れに従い、勝手に流れて来て、勝手に自分の運命に干渉してしまう。嫌でもそれをぶつけてくる時間というものは、自分にとって、一種の敵である。
創作物ではタイムマシンなどという便利な物があり、それが現実にあればどれほど良いだろうな、と思う人も居るかもしれない。現に自分もその一人だ。人生が安泰にやり直せるのならば、どんな手段を用いてもタイムマシンを使って過去の自分に邂逅しにいくだろう。だが、そんな便利な物はあくまでも創作物に過ぎない。多分、人類が滅びるまで開発されることは無いだろう。何故なら、時間は、人間が抗う事の出来ない、唯一の力であるからだ。
自分は、あくまでもその抗えない力に翻弄された、大多数の中の一人に過ぎない。しかし、決して無限では無い時間を、十八年も費やして作られた「自分」は、果たしてその時間に見合うだけの価値があるのだろうか。
そんな自問を、答えの無い疑問だ、と牧田は結論付け、一旦頭の中をリセットした。
自分の出自に関する疑問は、事あるごとに頭の奥深くから湧いてくるのだが、出来るだけ無意識の内に応えないようにしている。何故かは分からない。自分の頭は時々主の意思に従わない時がある。先程の自問もその一つだが、先程の自問はいつも通りの無意識の内には何故か消えず、意識して消さなければならなかった。
それもこれも数奇な運命を辿ったのが原因であるのだが、今更過去を変えることなんて出来はしない。開き直って、数奇な運命などは受け入れるまでだ。今は自己の確執なんかに囚われている場合ではない。目標は、未帰還者の救出、ひいてはユーリを助け出す事だ。そのためになら、何事にも躊躇わない。たとえ、人を殺す事になろうとも。
自分は、戦う為に作られた存在であるから。
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東京都 新宿区市ヶ谷 [10:15]
牧田玲/デルタ・DAISエージェント
約二年ぶりに防衛省へ訪れた牧田は、訪れた足のままに地下へと降りた。いつになっても慣れない放射線のボディチェックを通り抜け、地下直通のエレベーターへと足を踏み入れる。B10のボタンを押すと、重苦しい音が鳴り、牧田にマイナスGを感じさせながらエレベーターが下っていく。
エレベーターのドアが開くと、目の前には薄暗い空間が広がっていた。光源は一定間隔で配置されている赤色の非常灯しか無く、不気味な雰囲気が漂っていた。その中を牧田は進んでいく。
そして、一つのドアの前で突然歩を止めた。そこのドアからは、内部の光が漏れだしていて、薄暗い廊下に光の道筋を作り出していた。ドアノブの部分にある、指紋認証装置へと指を置き、ロックを解除してからドアを開けた。室内へ入ると、強烈な光が牧田の網膜を照りつけた。だが、すぐにそのホワイトアウトは回復し、辺りを見るとそれほど室内に強烈な光源は無いと確認する。多分、外の薄暗さに慣れていたせいで、LED灯の明るい光に目が対応出来なかったのだろう。
二年間訪れなかったからか、光源を始める様々な所が変更されているところに気付き、改めて時間の経過を感じた牧田は、廊下の不気味な雰囲気とは打って変わって普通の雰囲気となったオフィスのような部屋....実際にはDAISの任務の一つである諜報を司る作戦室....へ出た。各々のデスクにはエリートサラリーマン風の人間....実際はDAISの諜報員....が付き、PCのモニターへと噛りついていた。それを視界の端で捉えながら、牧田は再び指紋認証が必要なドアをくぐった。
その部屋も、先程と同じオフィス風の部屋であった。だが、そこに詰めていた人間は華奢な諜報員ではなく、屈強な男達であった。自衛隊の制服を一寸の隙も無く着こんだ彼らは、牧田が部屋に入室してきた途端に突き刺すような視線を牧田に浴びせたがそれは一瞬で、入室してきた人物が牧田だと感知するとそれは和らいだ。
「久しぶりだな、牧田」
「帰ってきたか」
DAISのエージェント達からその見た目に似合わない優しい言葉を受け、はにかみながら会釈で返した。それから牧田は、その部屋の奥にあるデスクに居る人物へと向き直った。
「本島三佐、おはようございます」
深緑色の制服を着、デスクに掛けていた男は牧田の方に椅子を回転させ、俯いていた頭を上げた。
「おう、おはようさん。そして久しぶりだな」
男の名は本島。下の名前までは知らない。それは本島だけでなく、ここにいる者の名は全員、名字と階級、そして役職しか知らない。それはこの組織の特殊性故だろう。本島の場合、階級は三等特佐で役職は729SOFの隊長であり、牧田の上官であった。
「菊岡二佐はどこに?」
「アレなら今総務省に出向いてる。もう少しで戻るからここに居ろ」
「了解です」
牧田が応じた瞬間、部屋のドアがガチャリ、と音を立てて開いた。開いたドアの目の前に居たのは、ここに居るのには似つかわしくない、若い男であった。彼は本島らと同じ制服を来ているが、胸に付いている徽章の数が違った。左胸に付けられた、色とりどりの防衛記念徽章の数は本島らと比べて二倍ほど多い。そして見た目がひょろりと細いのにも関わらず、この部屋にいる者全員が所持している甲レンジャー徽章と空挺徽章、そして射撃、格闘、体力と様々な徽章を着装していた。
「あ、ごめんごめん牧田君。ちょっと総務省での打ち合わせが遅れちゃってね。悪い悪い」
さらにこの場に似つかわしくない軽々とした口調で歩いてくる彼の名は、菊岡誠二朗。国語教師のような顔に黒いメガネ、華奢な身体と文官のような見た目であるが、胸に着装している徽章の通り、現場でも十二分に活動できると聞いているが、牧田は現場での姿を見たことが無い。それもそのはず、彼は現DAISの副局長を務めている管理職であるからだ。
「いや、大丈夫です。俺もさっき来たばかりなので」
「そうかい、それは良かった。じゃあ、報告を受けた件について、話そうか」
報告を受けた件....昨日のダイシー・カフェでの一件の事だ。菊岡は今年の初めまでDAISの副局長とSAOの対策チーム指揮官を兼任して勤務していた。ユーリの情報も彼から聞き出した。SAOを含む、VRMMOゲームには情報技術の発展を期待する希望を抱く一方で、再びSAOのような惨劇を防ぐ為に、VR関係の事件には敏感になっていた。その方針は菊岡個人だけでは無く、その指揮下のDAISにも浸透しており、それ関連の情報収集にも余念が無い。今回の件もその方針に従って報告した。報告すれば、DAISのサポートを受けながら未帰還者の解放を進める事ができると思った故の行動であった。多分、このような方針でなければ報告せず、単独で行動していただろう。その点では、菊岡に感謝している。
菊岡は着ていたスーツを副局長席の後ろにあるハンガーに掛けると、牧田に手招きをして先程通った諜報作戦室へと導いた。
空いていたデスクへと牧田を座らせ、菊岡はすぐ側に置いてあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ始めた。
「で、手掛かりっていうのは何なんだい?」
「一般人からの情報ですが、他のVRMMOゲームにて未帰還者だと思われる人物を発見したそうです。証拠と思われる画像もあります」
牧田はスマートフォンを取り出すと、今日の早朝に栗原から受け取っていた、アスナと思われる人物が写った画像を表示させ、机の上に置いた。
「ん? どれどれ......」
菊岡は紙コップに淹れたコーヒーと緑茶を机の上に置き、デスクチェアに座りながらその画像を見た。約一分くらい見ていたであろうか。菊岡はスマートフォンの画面から目を放すと、牧田へと向き直った。
「んー....微妙ぅ、だね」
予想外の言葉が菊岡の口から飛び出した。微妙、とは何なのか。その言葉の真意を聞くため、牧田も口を開いた。
「微妙、とは何ですか?」
「決定的な証拠が無いんだよ。あくまでも似ているってだけでね。確か彼女はPN[アスナ]、現実での名前は[結城明日奈]さんだっけか。確かに、彼女は未帰還者のカテゴリーに入っている。でも、この画像だけでDAISは動かせないね。多分、この証拠だけで渥美局長の許可を仰ぐだけでも一年は掛かる」
「ですが菊岡さん、今のところ唯一の手掛かりですよ.....! この機を逃したらもう....」
「早まるな、牧田三曹」
菊岡から階級呼びで呼ばれる事は滅多に無い。呼ばれた時は、大抵飽きられているか怒りをぶつけられているかのどちらかだ。今回の場合は怒りの方かもしれない。
「間違った情報で動いて、さらに酷い惨事を引き起こす事だってあるんだ。二十年前の[いそかぜ事件]が正にそうだ。今回の[S事案]は世界中の誰も触れた事の無い事件だ。慎重に行かなければ駄目だ」
「.....」
「我慢してくれ。これで未帰還者全員を亡くすような事になれば、VR産業はまたバッシングを受けて衰退してしまう。衰退させる訳にはいかないんだ」
「産業の為、ですか?」
「いや。人があってこその産業さ。それを為す為にも、今回は我慢してくれ。頼むよ」
「......分かりました」
不承不承ながらも頷き、牧田は菊岡の淹れた緑茶を手に取った。いただきます、と呟いて一口飲む。味は苦い。
「すいませんでした」
「なに、謝る事じゃない。その画像も重要な証拠だ。一応、参考にさせてもらう」
その言葉が菊岡の本心がどうかは分からない。慰めなのかもしれない。でも、その言葉にもすがり付きたい程、牧田は助けが欲しかった。この事態を1mmでも動かしてくれる、何らかの力が。
が、その願いは容易に崩れ去った。
「しかし、だ。冷静さを失った君は危険過ぎる。何をするのか分からない以上、DAISとしては君を放っておく訳にはいかないんだ」
それは、救いなど無いという、菊岡の意思表示であり、そして、決別の言葉であった。
「牧田玲三等特曹。君に部隊員非承認処分を下す」
その言葉に後ろで成り行きに聞き耳を立てていた本島達が戦いた。部隊員非承認処分、SAPに下される処分としては比較的重い方である。一番重い「精算」よりは軽いが、本部立ち入り禁止、拳銃所持禁止、IDパス機能停止、作戦行動不参加という、ほぼ全てにおいての作戦行動が取れなくなってしまうのが部隊員非承認処分の内容であった。
「副局長、待ってください。牧田は.....」
本島が二人の間に割り込んだ。牧田は本島が率いる729SOFの部隊員である。本島からすれば、部隊員を一人欠くというのはかなりの戦力ダウンに繋がりかねないと判断したのだろう。その表情にも必死さが見てとれた。だが菊岡は、そんな熱意をも跳ね退け、デスク上のコンピューターを操作し始めた。DAISのデータベースに載っている牧田の情報に[DISAVOWED]と付け足した。これによって、牧田はIDパスとコールサインが剥奪され、作戦行動が一切制限された。その画面を見て、本島は悔しそうに顔をしかめながら引き下がった。
「....ということだよ、牧田君。君に自由な行動をさせる訳にはいかないんだ」
「......」
牧田は胸部のホルスターから、常日頃から護身用として所持していたUSP.45ハンドガンを抜き出すと、セイフティを掛け、弾倉を抜いてから菊岡へと差し出した。
「よろしい」
菊岡はにやり、と微笑むと、差し出されたUSPを懐へと仕舞い込んだ。その顔は、企みが上手くいった時の子供のような、純粋な喜びと感心が表れた表情であった。
そして、牧田はIDパスとコールサインを剥奪された「部外者」として、防衛省を去った。DAISの助力が期待出来ない以上、独力で解決を目指す他にユーリを助ける手段は無い。必ず助ける、と栗原に誓った以上、どんな事をしてでもユーリを助け出す。その事を心に決め、牧田は次なる手段を考え始めた。
■■■■■
東京都 新宿区市ヶ谷 [13:00]
菊岡誠二郎・DAIS副局長/二等特佐
「副局長、先程の件はどうしましょうか」
「勿論、行動を始めるよ。いくら[超兵]とはいえ、彼一人に任せるのはリスキーだ」
「牧田三曹の監視は?」
「それも継続しようか。今の彼は何か危なっかしい。監視は必要だよ。シフトは前回のと同じでいいから実行してくれ」
「了解.....しかし副局長」
「どうしたんだい、水野二尉」
「....いいんですか?結城明日奈さんは確かレクトの御令嬢だったはずです。そしてこの画像....レクトが開発、運営を手掛けているゲームと聞きました。国家権力である私達が、大企業の内部情報を掴んだと公表されれば、内閣は私達の存在を消そうとする筈です。それもリスキーな行動では無いでしょうか...?」
「水野二尉、良く考えてみなよ。牧田君を切り捨てて事件を解決させるよりも、DAISの人員をフル活用して解決した方が効率的だ。こっちで解決すればVR関係作戦のノウハウだって得られる上に、隊員の練度も上がる。リスキーかも知れないけど、このヤマは僕達だけで片付けるしかない」
「....了解。では....」
「ああ。DAIS、出撃だ」
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