キズナ
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NM
前書き
ついに羽化。
「こ、これが蛹から孵った姿⋯。」
正直予想外だ。大きい⋯。羽を広げた蝶は3m程はある。
俺の額から汗が流れ落ちるのが分かる。
「タゲ合わせてみるか⋯。」
NM【グレートパピヨン】level6
「levelが6もあるのか⋯。だがここは迷いの森⋯。逃げるという選択肢は出来ない。」
俺は握っていたノーマルソードとバックラーを前へ構えた。
「⋯やるしかない!」
前回戦ったオークがlevel3。あの時ですら手こずった。
しかもあの時はカレンのサポートもあった。
だが今回は違う。levelは二倍。サポートなし。
おまけにNM《ネームドモンスター》と来た。
正直生きてここから出れるか怪しいな⋯。
「ここだっ!はあああっ!」
俺は渾身の一振りをグレートパピヨンに向け振り下ろす。
しかし、手ごたえがない。
「⋯どういうことだ。」
確かに攻撃は当たったはず、だが手ごたえが感じられない。
俺がそんなことを思っていると背後から気配を感じた。
「後ろ⋯!?」
だが後ろにもモンスターの姿はない。
迷いの森の特徴とも言える白い霧によって視界もあまり良好ではない。
俺は剣と盾を前に身構え腰を落としながら、どこから来るかわからない相手の攻撃に備える。
「何処に居やがる⋯。」
すると足に妙なものが絡まるのを感じた。
「これは⋯。まさかフォーモスの糸!?」
俺が背後を確認すると二匹のフォーモスが俺の両足と手に糸を吐き動きを封じていたのだ。
そしてそれを確認したかのように俺の目の前にグレートパピヨンが現われた。
「ま、まずい⋯!」
必死に足を動かそうとするが全く動かない。
このままではモロに攻撃を喰らってしまう。
それだけは避けないといけない!
「くっ⋯!ナイトガード⋯!」
これでどこまで被ダメージを抑えられるかわからないが、やらないよりマシだ。
グレートパピヨンは口を膨らませ俺に攻撃を仕掛ける。
まさに溶解液といった感じだろうか。
俺の身体にもの凄い不快感が襲う。
「ぐあああああっ!!」
俺の左上に表示されているHPゲージが凄まじい勢いで減っていく。
「あ⋯っ、ぐぅ⋯!」
HPはギリギリレッドゾーンに入っていないイエローゾーンだ。
ナイトの熟練度が3の俺はHPが1200あるが残り450まで減っていた。
思わず片膝が地面につく。
「はぁ⋯はぁ⋯。流石NM⋯。強すぎる⋯。」
俺は何とか立ち上がると剣でフォーモスの糸を切り裂いた。
「⋯まずは、フォーモスだ⋯!」
ここに来るまでに何十匹も倒したフォーモス。
こいつらにはやられる気はしない。
俺がフォーモスを倒すとグレートパピヨンが奇声をあげた。
「ギャアアアアアアアッ!!」
俺がまた何か来るのかと思い構えると、グレートパピヨンの羽が青から赤へと変化した。
「やべぇな、これ⋯。絶対怒らせたやつだ⋯。」
グレートパピヨンは羽を大きく羽ばたかせると突進を仕掛けてきた。
「攻撃のパターン変化か⋯!」
俺は何とかその突進を回避し、安堵する。
しかしグレートパピヨンはそのままこちらへとタゲを取り突撃してくる。
「こうなったら、盾の真骨頂見せてやる!」
HPは残り450。例えガードをしたとしても全損する可能性が無いとは言えない。
だがあくまで普通のガードの場合だ。
「俺が狙うのは⋯ジャストガード⋯!」
ゲームによってジャストガードの恩恵は違うが、それでもジャストガードをすることでプレイヤーに恩恵があることは間違いない。
「来い⋯グレートパピヨン⋯!」
「ギャアアアアアアアッ!!」
俺はタイミングを見計らい盾を前に出す。
「ここだぁぁっ!!」
グワァァァァン!!
凄まじい音が辺りに響き渡る。
そして俺の視界の右上にジャストガードと表示された。
「よし来たぁぁっ!!」
ジャストガードを決めたことにより俺のHPが少し回復し750になり、グレートパピヨンはスタン状態になった。
「これだから盾は好きなんだ⋯!」
俺はスタン状態のグレートパピヨンに容赦なく攻撃を仕掛ける。
羽ではなく本体に攻撃を仕掛けていることもあり、クリティカルがかなり発生する。
「最初に攻撃が当たらなかったのは、フォーモスを倒してグレートパピヨンの羽の色を赤に変化させないと攻撃が通らないってギミックがあったわけだな⋯!」
グレートパピヨンに付与されているスタン状態のマークが点灯し始め、スタン状態からの回復を教えてくれる。
「さっきはお世話になったからなぁ⋯!これでも⋯喰らいなぁっ!クロスエイジッ!」
右からの斬り下ろしから、続けて左からの斬り下ろしを放つ2連撃の攻撃スキル。
俺の渾身のクロスエイジを受けたグレートパピヨンは近くにあった木へと飛ばされる。
「⋯手ごたえありだぜ!」
俺の猛攻撃によりグレートパピヨンのHPは約半分程削れ、木に当たった反動だろうか右羽の下部分を部位破壊している。
グレートパピヨンは不安定そうに飛び上がるとこちらに向け羽を大きく揺らし始めた。
「くっ⋯風おこしか⋯。だがこの程度全然ダメージはないぜ!」
俺が追撃をするために走り出そうとした時、俺は異変に気付いた。
「う、動かない⋯!な、なんで麻痺状態になってるんだ?」
俺がそう呟いたのと同時に俺の目の前にキラキラした粉が降ってきた。
「⋯!ま、まさか鱗粉!?さっきの風おこしはこの鱗粉を俺に吸わせるための攻撃だったのか⋯!」
よく考えればそうだ⋯。相手は蝶⋯。十分にその可能性は考えられたじゃないか⋯!
痺れている俺を見ながらグレートパピヨンは俺に迫ってくるのであった。
後書き
サクマ「こればっかりはマジでやばいな⋯。」
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