| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ百三十四 寒い春その十

「そのことは」
「左様ですか、では」
「そうして頂く、拙者は最後までこの城に残り」
「敵を引き付け」
「最後は腹を切り申す」
 戦の責を取ってというのだ。
「右大臣様が腹を切られたということにして」
「そうされますか」
「拙者が茶々様を止められぬことからこうなったからには」
「ですか」
「その様に、では真田殿はいざとなれば」
「お任せ下され、例え何があろうとも」
 秀次との約を守ってというのだ。
「そうさせて頂きます」
「それでは」
「修理殿は」
「拙者の果たすべきことをしてな」
「豊臣家を護っていかれますか」
「そうしていく、しかし貴殿は拙者を護ると言われたが」
 ここでだ、大野は幸村にこうも問うた。
「拙者を嫌っていたのでは」
「何故その様に言われますか」
「茶々様に逆らえず今の事態を招いたと」
「いえ、修理殿は修理殿がされることを十二分に果たされています」
 幸村は暗い顔で己に問うた大野にすぐに答えた。
「それも二心なく、ですから」
「それがしはか」
「疚しいことのない忠義の方と思っておりまする」
 それでというのだ。
「決して嫌ってはおりませぬ」
「そうであられるか」
「はい、ただ修理殿は講和を望まれていますが」
「それはか」
「星を見ましたが」
 しかしというのだ。
「それはどうもです」
「適わぬか」
「どうやら」
「星の動きではそうか」
「そもそも残っている浪人達を見ていますと」
「あの荒み様ではか」
「戦になることは」
 星を見ずともというのだ。
「避けられぬかと」
「大人しく出て行かぬか」
「そうかと、確かに右大臣様が大坂を出られれば幕府はよしとされましょうが」
 秀頼の命と身分、そして家の格は保証するというのだ。
「しかし」
「それでもか」
「戦は避けられぬとです」
「真田殿は思われているか」
「そうした意味でそれがしはです」
「戦を言われるか」
「避けられぬと見ていますので」
 避けられぬのなら覚悟せねばならない、そういうことだった。
「ですから」
「左様か、そうした考えか」
「それがしは、そして後藤殿や長曾我部殿も」
 彼等もというのだ。
「そうしたお考えかと」
「戦は避けられぬか」
「そうかと、こう言うのは何ですか」
「浪人達を集めた時点でか」
「こうなることは決まっていたかと」
「浪人衆を出すには幕府も力を貸すとのことだが」
「それで去る者はもう」
 既にというのだ。
「去っておりまする」
「そうでない者が残ってか」
「今に至るので」
 それでというのだ。
「ことここに至っては」
「最早か」
「戦になるかと、ですから」
「右大臣様はか」
「何としてもです」
「助けて頂けるか」
「それがしも十勇士達も何があっても生き残り」
 どれだけ激しく苦しく辛い戦になろうともというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧