普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
235 結婚式
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「ロナルドや、数年ぶりだぇ」
「お久しぶり、おばさん」
ダンブルドア校長からの遺言状に驚かされたその翌日。俺は100歳に届いていそうな老婆──ミュリエルおばさんとそんな会話を交わしていた。
ミュリエルおばさんは所謂〝可愛くないおばあさん〟で、本来ならフレッドとジョージもミュリエルおばさんを出迎えているはずなのだが、その二人はすたこらと他の招待客の対応に稚拙なフランス語を装備して向かっている。
「それにしてもロナルドや、お前さんの髪は長すぎだぇ」
「……うーん──確かにそうかも」
(フレッドとジョージめ…っ)
ミュリエルおばさんと相性があまり良くないのは判っているが、それでも内心で双子の兄へ毒吐くのは止められなくて。俺は頬がひきつらせない様にしながらミュリエルおばさんからのお小言に対して出来るだけ柔和に応対する。
……俺の髪が長いのは確かだと云うこともある。特段──さすがに限度はあるが、髪型にはそこまで強い思い入れはないが切ろうとすると三人娘──アニー、ジニー、ハーマイオニーから物言いが入るのだ。
閑話休題。
フレッドとジョージのいたずらが起因して、普段は別々に暮らしているミュリエルおばさん。そんな彼女がなぜ〝隠れ穴〟に居るのか。その理由は今日──8月1日、今も行われている、ささやかながらも喜ばしいイベントがあるからだ。
それはビルとフラーの結婚式である。ビルを可愛がっているミュリエルおばさんは、ビルの嫁となったフラーにゴブリン製のティアラを貸しに来たのだ。
……もちろん結婚式への参加と云う意味合いもあるが…。
(……お、あれは…)
ミュリエルおばさんを、こう表現すると〝アレ〟だが──エスコートして、ミュリエルおばさんをパーティの中に放流すると、直ぐ様入り口の方に向かう。するとそこには知人が居た。ルーナ・ラブグッドである。
ルーナは父親と思わしき男性と来ていた。
ルーナの父親はゼノフィリウスと云う名前で、【ザ・クィブラー】を出版しているとか。もうあやふやだが〝ゼノフィリウス・ラブグッド〟について知識は、〝知識〟には在っても、こうして直に見るのは当然初めてである。
「あ、ロン。こんにちは」
「ルーナ、おっす」
ルーナも俺の姿を認めたのかとことこ、と、ゼノフィリウス・ラブグットと思わしき男性とこちらへ寄ってくる。ゼノフィリウスの恰好は、〝さすがルーナの父親〟とでも感嘆したくなるような恰好をしている。
……要するに、それなりに奇特であった。
いつも俺なら先ほどのミュリエルおばさんの様に2、3会話してからタイミングを見計らいながらフェードアウトするのだが、ゼノフィリウス・ラブグットには〝お願い〟があったので、二人へはちゃんと対応する。
……もちろん、今までお客様の対応に手を抜いている訳ではないのだが。
閑話休題。
ゼノフィリウス・ラブグッド(仮)は自身を見る俺の視線に気付いたのか、あちらから自己紹介してきた。
「初めまして。ゼノフィリウス・ラブグッド。ルーナの父だ」
「こちらこそ初めまして。俺は…」
予想が外れなかった事に軽く安堵しながら自己紹介には自己紹介で返そうかと思ったが、ゼノフィリウスは手を振る様な動作で制する。……〝俺(ロナルド・ウィーズリー)の事は知っている〟と云う事だろうか。
俺の自意識過剰でなければ、ルーナとはジニーの友達と云うこともあて≪プロメテウス≫ではよく話していた。……以前ルーナとの雑談で、ルーナは既に母が逝去していて、父子家庭だと云うことも聞いている。
そしてルーナは、これはルーナからしたら憤懣やる方ないの想像だろうが──≪プロメテウス≫以外にコミュニティを持っていない様にも見える。
……だとするなら、夏休みで帰省した時に俺達、≪プロメテウス≫の話題がラブグット家の食卓等でルーナの口から出るのはおかしくない。
(……なら〝ゼノフィリウス(ちちおや)〟なら俺達の事もルーナから聞いて知ってるか…)
「君はロナルド・ウィーズリー君だろ? よくルーナから君の話を聞いているよ。いつも娘と仲良くしてくれてありがとう。……これからも是非ともルーナと仲良くしてやってくれ」
「こちらこそ。……あ、〝それ〟って…」
〝バカ親〟を拗らせていないゼノフィリウスの態度にまたもや安堵しながらゼノフィリウスから差し出された握手に応じる。
……その時、彼の首もとから出てきた〝金色〟を見逃さなかった。
「……ラブグットさん、つかぬことをお訊きしますが──貴方は〝探求者〟ですね?」
「……君もかね?」
ゼノフィリウスからの問いに首肯で返すと、彼の瞳が心無しか輝く。それは宛ら〝〝同士〟を見付けたオタク〟であった。
……寧ろ俺は〝〝保持者〟なのだが、そこは詳らかに語らなくても良いだろう。俺はゼノフィリウスの近くへ近寄り、小声で「ええ…」と〝含み〟を持たせてから続けた。
「……おおよそ──まだ推論の域を出ませんが、3つの〝秘宝〟の足跡を特定出来ました」
「ほう…。……詳しく聞きたいところではあるが…」
「今は祝いの席ですからね」
そんなこんなで、ゼノフィリウスとアポイントメントを取り付ける事に成功したのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
同じく8月1日。場所はトテナム・コート通りにある24時間営業のカフェ。
僥倖にもビルとフラーの結婚式でゼノフィリウスとアポを取り付ける事に成功したのだが、メインイベントである結婚式自体はどうにも完全無欠に成功したとは云えない結果に終わってしまった。
「ぜぃ…はぁーっ、ぜぃっ…はぁーっ」
その原因の一端は、目の前で〝捕縛呪文〟の縄で〝みのむし〟みたいになりながらぜいぜい、と息を切らしている男──≪死喰い人≫のソーフィン・ロウルだ。
フラーとビル結婚式はキングズリーから〝守護霊〟で〝スクリムジョール死亡、魔法省陥落〟と云う知らせのその数秒後に訪れた≪死喰い人≫の大群によって滅茶苦茶にされてしまった。
それからと云うものの、結婚式は荒れに荒れ、俺とアニーは〝一番マグルに詳しい〟──と云う事になっているハーマイオニーにトテナム・コート通りまで〝付き添い姿くらまし〟をしてもらい、まずはアニーに“透明マント”を被せ、〝とりあえず一息吐こう〟と云う事でふと寄ったカフェでまたもや≪死喰い人≫に襲われた。
襲ってきた≪死喰い人≫は二人組で、一人はアニーが不意討ちで〝失神〟させたアントニン・ドロホフ。もう一人が、上述の──縄でがんじ絡めになり、〝みのむし〟みたいになっているソーフィン・ロウル。
襲撃自体は“透明マント”を被ったアニーが〝無言〟の〝失神術〟でドロホフを不意討ちして、ロウルそんなドロホフに気を取られた時点で対処が終了していて、〝臭い〟が付いている訳でもない俺達三人を追跡出来た理由についてソーフィン・ロウルに拷も──もとい〝OHANASHI〟してみると、興味深いことが判明する。
「……ふーん、じゃあ本当に〝名前をいってはいけない〟って事になったのか…」
「はぁ…はぁ…はぁ…。……そうだ…っ!」
「うるさい。アニー、ハーマイオニーやっておしまい」
「了解」「オッケー」
――“笑い続けよ(リクタス・センプラ)”!
――“笑い続けよ(リクタス・センプラ)”!
「ちょっ…もう語った──あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっっ!!!」
「もう良いよ、二人とも。……おたくも〝情報の提供〟ご苦労」
――“麻痺せよ(ステューピファイ)”…“忘却せよ(オブリビエイト)”
拷も──もとい〝OHANASHI〟の方法はだが、〝許されざる呪文〟を使った訳ではなく単なる〝くすぐり呪文〟をアニーとハーマイオニーに使ってもらっただけだった。……〝笑い〟と云うのは存外と多大に酸素を使う。酸欠を起こさせ判断力を低下させるのは〝くすぐり呪文〟が最適だった。
「うわぁ…。……えぐ…」
「アニー、ロンの対処は間違っていないわ──でもまぁ、私もえげつないとは思ったけどね」
「……で、これからどうする?」
〝失神〟したドロホフの記憶を修正していると、アニーの引き気味の言葉とハーマイオニーのビミョーにフォローになっていない言葉が飛んで来るが、無視して二人へと〝これから〟について訊ねる。
「……まず、〝隠れ穴〟は論外ね」
「だね。……それにグリモールド・プレイスも一応やめておいた方が良いかな」
「じゃあ、俺に良い案が有るんだが…」
俺が提示した場所にアニーとハーマイオニーは異口同音に「はぁっ!?」「はぁっ!?」と驚愕したのだった。
SIDE END
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