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リング

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123部分:ヴァルハラの玉座その四


ヴァルハラの玉座その四

「夢の中で。貴方の運命を」
 ヴァルハラにおいて玉座に着きこの銀河の新しい皇帝となる。幼い頃より夢でそう告げられていた。だがそれを知っているのは自分しかいない筈なのだ。
 だがパルジファルはそれを知っていた。冷静さを失わずにはいられなかった。
「何故それを」
「記憶が教えてくれましたから」
「そうか」
 今言った通りだった。そしてそれを疑うことはもう出来なくなっていた。
「私の運命もか」
「それは未来に属することですが。遠い輪廻のこととして」
「輪廻か」
 それを聞いたジークフリートの目がピクリと動いた。
「では私は前世でも同じ運命を歩んでいたのか」
「おそらくは」
「では聞こう。私は前世ではどうなっていた?」
「皇帝になっていました」
「皇帝に」
 その言葉に今度は目だけでなく顔も動いた。
「そうです。その理由は貴方が最もご存知だと思いますが」
「そうだな。では私は前世でも卿に会っているのか」
「会っているのは私だけではありません」
「というと」
「私の他に五人。合わせて七人の者が輪廻が定めた運命の中にあるのです」
「そしてその七人は何を命じられているのだ。そのそれぞれの運命に」
「帝国と戦うことを」
 パルジファルは言った。
「それを命じられているのです」
「今と同じということか」
 ジークフリートはこう言って顔を少し上げた。
「帝国と戦うということは」
「そして貴方も私もまたある場所を目指すことになります」
「ヴァルハラを」
「はい」
「そこに私の目指す玉座があるのだな」
「そうです。そしてそこに」
「ニーベルングがいるというのか」
「ではこれからされるべきことはおわかりの筈です」
「ああ」
 ジークフリートは頷いた。
「これまで通り帝国軍と戦う。そして」
「ヴァルハラを目指されるのです」
「そうだな。ではその艦はその為のものか」
「そうです。ですがまだ名前はありません」
「名前もないのか」
 全くの生まれたての艦であったのだ。見れば綺麗なものである。まるで剣の様な鋭さと乙女の様な優雅さを兼ね備えていた。そうした美しい艦であった。
「はい、まだ」
「では私が名付けていいか?」
 ジークフリートはパルジファルにそう問うてきた。
「それでいいか?」
「どうぞ。その為にここまで何もすることなく持って来たのですから」
「そうか。では」
 彼はそれを受けてもう一度その戦艦を見上げた。
 見れば見る程美しい。そして気高く鋭い。それを見て彼は一つの名を思い浮かべた。
「ノートゥング」
 彼は呟いた。
「ノートゥングだ。この名しかない」
「ノートゥングですか」
「そうだ。いい名だと思わないか」
「貴方には相応しい名です。巨大な竜を倒した剣の名は」
「卿もそう思うか」
「貴方はその剣で以って竜を倒される」
「帝国という竜を」
「ジークフリート=ヴァンフリート」
 パルジファルはここで彼の名を呼んだ。
「貴方も私も同志なのです」
「帝国を倒す為の同志か」
「はい。私はそうした同志達に力を貸す為に銀河を巡っています」
「帝国を倒す為に」
「クリングゾル=フォン=モンサルヴァートは恐るべき男です。彼にこのノルン銀河を預けることはあまりに危険です」
 ジークフリートはその言葉に無言で頷いた。それは同意の証であった。
「その為にもこの艦で」
「わかっている」
 そして今度は声を出して頷いた。
「必ずヴァルハラの辿り着く。そうだな」
「はい」
 彼の話はジークフリートの運命を決定付けるものであった。こうして彼は帝国と本格的に剣を交えることを決意し、戦いの中に身を置くこととなったのだ。パルジファルとの出会いは将に転機であった。
 
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