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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  229 二回目の〝個人授業〟


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

「……ってな感じかな、ダンブルドア校長先生の〝個人授業〟とやらは」

「つまり、〝彼を知り己を知れば百戦危うからず〟──ってことか。……まぁ道理だな」

「その言葉、確か〝孫子〟だったかしら。……でもそうね、ダンブルドアのその〝個人授業〟は理に適っているわ」

アニーが昨夜受けたダンブルドア校長からの〝個人授業〟を受けた翌日、アニーからその〝個人授業〟とやらの内容を聞き出した俺とハーマイオニーはそんな風に纏めてみる。

……しかし、俺はアニーがダンブルドア校長から〝お辞儀さん〟の両親の馴れ初め(?)を聞かされた事にも驚かされたが、それ以外な〝ゴーント〟と云う家名を聞いて、有耶無耶にしたまま放置していた事柄を思い出していた。

(そういやアニーに“マールヴォロ・ゴーントの指輪”を渡すタイミングを決めてなかったな)

ダンブルドア校長が回収する前にリトル・ハングルトンから拾得しておいた“マールヴォロ・ゴーントの指輪”──または“蘇りの”であるが、取り敢えず“シャナク”で掛けられていた致死性の呪いを解き〝倉庫〟に入れて以来、ずっとそのままだったのだ。

(……ずっと〝倉庫〟の肥やしにしとくのもアレだし、とっとと〝アバダ〟って、アニーの17歳の誕生日に誕生日プレゼントとして渡すのが妥当か…)

そこへ更に〝填まっている石は“蘇りの石”だしなー〟とアニーとハーマイオニーの議論を〝そら〟で聞きながら言い訳がましく付け足してから思考を一旦打ち切った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

新学期が始まり、一ヶ月弱が経過した。

その間に、俺達三人にいくつかイベントがあった。

三人仲良くスラグホーン先生主宰のちょっとしたパーティーに呼ばれてそのパーティーにゲンナリしながら出席したり色々とあった。……しかしやはり一番大きな出来事と云えばハーマイオニーが17歳になり、魔女として成人したことだろう。

さてハーマイオニーへの成人祝だが、魔法界では成人する誕生日に腕時計をプレゼントするのが通例であるが、その枠はアニーに取られてしまった。……ジャンケンでどちらが腕時計を贈るのかを決めたのだが、よもやアニーに“塁”を使うとは思わなかった。

毎年アニーとハーマイオニーには色々とプレゼントしていたので──何を渡せば良いか遂にネタが尽きていた俺は、その昔紅魔館でパチュリーに写本させてもらった魔法書や呪術書を〝俺が書いた〟と(うそぶ)いてプレゼントする事にした。

……俺達がホグワーツで習っている魔法とは違う魔法の存在にハーマイオニーは大層喜び、ハーマイオニーからキスをされたなんてワンシーンが在ったり…。

閑話休題。

そして今日は10月半ばのとある土曜日で、今学期始まって初めてホグズミードへ行くことが出来る日であるが、外は生憎の荒れ模様。……いつもならホグズミード行きを辞退しようかとも考えていたのだろうが、どうしても今日はホグズミードに行きたかった。

その理由は、一口に言ってしまえば、ケイティ・ベル──ケイティを助けたかった。

ケイティは俺達の一つ上の7年生で、グリフィンドール・チームのキャプテンを務めてくれている。

もし、ここでケイティが〝知識〟通り〝聖マンゴ〟送りになったら半自動的に同じ7年生の、今はキーパーの補欠メンバーであるコーマック・マクラーゲンがキャプテンになってしまう。

……そしてマクラーゲンは俺がチェイサーも務められるのを知っているので、俺をケイティの後釜に押し込み──そして、マクラーゲン自身は悠々とキーパーとしてゴールの前に鎮座しながらキャプテンとして俺達に檄を飛ばすだろう。……そんな事、考えるだけでもゾッとしない。


―マクラーゲンがグリフィンドール・チームのキャプテンになったらボクはヤツを〝銃殺〟してやる―

―マクラーゲン? 真っ平ゴメンよ。あれと付き合うくらいならクラッブとゴイルに文字を教える方が方が何倍もマシだわ―


アニーやハーマイオニーからもそんな風に言われているあたり、マクラーゲンの為人(ひととなり)が判るだろう。

(さてホグズミードに着いたわけだが…)

ケイティを助ける決意を新たにしたり、マクラーゲンを内心でディスっている内にいつの間にかホグズミードに到着していてた。

……マルフォイがホグズミードに来ていない事気掛かりだったが──取り敢えず〝バタービールで一杯やろう〟と云うことで入った【三本の箒】で直ぐ様駆け込んだトイレの個室で、先日マルフォイが【ボージン・アンド・バークス】で検分していたネックレスを思い浮かべながらその呪文を行使した。


――“来い(アクシオ)”


俺の〝呼び寄せ呪文〟はいつも通り十分に機能して、あっという間にそのネックレスは俺の手元にやって来た。そのネックレスを杖の前に浮かべつつ、決して触れない様に注意しながらタンクの上に置く。

それから…


――“消えよ(デリトリウス)”


このネックレスは、〝詮索センサー〟に引っ掛かってしまったりと、百害有って一利無しなシロモノなので一も二もなく〝消失呪文〟を掛けると、(たちま)ちネックレスは霞の様に消えた。

本懐を遂げ、それからトイレから出てバタービールの味に思い馳せながら、アニーとハーマイオニーに合流する。

「あ、ロン」

「スッキリしたよ」

「止めてよね。……ロンはいつも通りバタービールでしょ? 頼んでおいたわよ」

「ありがとうよ」

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE アニー・リリー・ポッター

“憂いの(ペーシーブ)”から頭を離す。……今日も、ボクは校長室に呼び出されてダンブルドア校長先生から〝個人授業〟を受けていた。

前回はボブ・オグデンの記憶ヴォルデモート卿となる人物の両親の馴れ初め(?)で、今回は何とダンブルドア校長先生の記憶であった。しかも、今日の記憶の旅は一度目を〝旅〟と表現していいか判らないが──二度に渡って行われた。

一度目はカラクタカス・バークなる人物と会話で、メローピー・ゴーントだと推測出来る妊婦からスリザリンのロケットを、たった10ガリオンで買い叩いたと云う内容を、“憂いの(ペーシーブ)”に人形劇みたいに見せてもらった。

二度目はちゃんと〝旅〟と云えるものだった。記憶の提供者は上記の様にダンブルドア校長先生自身で、その記憶の内容は後に〝ヴォルデモート卿〟となるトム少年に入学の説明に行くと云うものだった。

何しろ50年以上も前の事だ──ダンブルドア校長先生の若さにも驚かされたが、それ以上に興味を持ったのがトム少年の魔法に対する反応(リアクション)であった。

……トム少年は最初から気付いていたのだ。トム少年の言葉を借りるなら──自分が〝特別〟である事に。

ボクはロンに会い〝原作知識〟を封印してもらうまでは〝知識〟が有ったからか魔法の存在にあまり動揺しなかったのを覚えているが、トム少年は素で受け入れていたのだ。

……と、そこでふと疑問が湧いた。

「……校長先生、質問してもいいですか?」

「いいとも。出来る限り答えよう。……とは云っても、≪チャドリー・キャノンズ≫を常勝させる方法などは答えられぬがの」

ダンブルドア校長先生から許可が出たので諧謔(かいぎゃく)に苦笑しつつ、重ねて()いてみる。

「……いつからあのトム少年が≪闇の帝王≫と呼ばれるようになると気付いていましたか?」

「少なくともあの孤児院に迎えに行った時点では気付いておらんかった。……じゃが、儂があの時点でトムに興味を持ってホグワーツでは出来る限り目を離さぬでおこうと決めたのも確かじゃ」

「興味ですか。……例えば、手癖が悪いところとかに…?」

「いや、トムは儂の目を気にしたのか──ホグワーツでは表立っては悪行を行わなんだ。その時はむしろトムの残忍かつ狡猾な性格や、個人主義に秘密主義について気にしておった」

「ああ…」

ダンブルドア校長先生の言葉に、今しがた見た50年前のヴォルデモートを思い浮かべる。

在りし日のトム少年は、同じ孤児院に住んでいる子供のペットを殺してみたり、同じく孤児院の子供を洞窟に誘い脅かしてみたりと悪趣味極まりない悪戯(いたずら)や、大人の随伴も無しに教科書を一人で買いに行こうとしていたた。

大体の人は子供から大人になるにつれて精神構造は変わるのだが、それは〝他者〟を必要として迎合しなければならないからである。……〝迎合〟に〝依存〟──どちらもヴォルデモートに全くと云っても良いほどそぐわない言葉である。

……ともすれば…

「じゃあ、ヴォルデモートからしたら≪死喰い人(デス・イーター)≫共って…」

「……哀れなものよな…。アズカバンや法廷で幾人もの≪死喰い人(デス・イーター)≫と顔を合わせてきたが〝我こそが御方を理解している〟と語る者は多かったが、ヴォルデモートからしたら≪死喰い人(デス・イーター)≫など単なる使い捨ての手駒に過ぎないじゃろう」

ボクの推測が正鵠(せいこく)を射ていた事をダンブルドア校長先生の言葉が教えてくれた。……やはりヴォルデモートは≪死喰い人(デス・イーター)≫を真に必要としていなかったのだ。

……しかしボクの周りにも〝個人主義〟かつ〝秘密主義〟な人物は居た。

「……ならロンは…」

「そうじゃな──確かにロン・ウィーズリーにも個人主義かつ秘密主義な面がちらほらと見え隠れしておるが、むしろ彼は儂に近い気質の持ち主じゃと思っとる」

「校長先生と同様の気質…?」

杞憂(きゆう)であると殆ど確信しているが、いつかロンがヴォルデモートみたいにならないかとダンブルドア校長先生に訊いてみれば、意外な言葉が返ってきた──と思ったら、直ぐに訂正が入った。

「……いや、儂なんかと同一視されたらロンが怒りそうじゃ──ではこう言い替えよう。……ミスター・ロナルド・ウィーズリーは儂などより、よっぽど素晴らしい人間じゃ」

「……それはまたロンが謙遜しつつも喜びそうな評価ですね」

「既にロンは〝愛〟と云うものを正鵠に理解しておる。……儂には判るが──それはとても難しいことなのじゃよ。……それはアニーにも判っていることじゃろうがの」

「まぁ、それは…」

親身になっていろいろな(すべ)を教えてくれるロン。……それはやはりボクを生き残らせたいからだ云う事を、ボクは十分に理解していた。

それからダンブルドア校長からヴォルデモートの気質──(かささぎ)の様な収集癖を忘れないでおく様にと言われてその日の〝個人授業〟を終わり、校長室から退室する。

……ピーブズから未だ赤さが引かない顔を隠せる“透明マント”に感謝しながら。

SIDE END 
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