普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
228 6年目のホグワーツ
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
キングズ・クロスからの旅の途中で、アニーがスラグホーンからランチに誘われたりしたがアニーは監督生なのでそんな余裕もなく断りの返事を書いたなんて一幕もあったが、〝ホグワーツ特急〟は、数百人の子供たちを【ホグワーツ魔法魔術学校】へと運び、その本分を果たした。
それからは、恙無く組分けも終わり、新入生歓迎パーティーで出されたご馳走も大いに楽しみ、新採用の先生──スラグホーン先生の紹介がなされたりと、ホグワーツに着いて1日目の日程は流れる様に過ぎていった。
……〝スラグホーン先生が教える教科〟と、〝スネイプ先生が教える事になった教科〟に殆んどの生徒が驚いたのは致し方ない事だろう。
閑話休題。
そして、二日目の朝食の後グリフィンドールの寮監であるマクゴナガル先生から──もちろんグリフィンドール生に向けて新しい時間割が配られるのだが、俺達6年生はそこで面倒を食らわされた。……〝い・も・り〟に進めるかどうかの可否を〝ふ・く・ろ・う〟での成績で精査されるからだ。
俺、アニー、ハーマイオニーは全ての教科の〝ふ・く・ろ・う〟を〝O:大いによろしい〟でパスしているので、マクゴナガル先生から褒められつつも全ての授業の継続を許された。
……マクゴナガル先生から許可を貰うと、直ぐ様〝古代ルーン文字〟のクラスにすっ飛んでいく俺とハーマイオニーであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
6年生になって色々と様変わりしたことがある。
例えば、俺、アニー、ハーマイオニーからしたら今更の話ではあるが──〝呪文学〟〝闇の魔術に対する防衛術〟〝変身術〟などの主に杖を使う授業の授業で〝無言呪文〟を使う様に言われたりしたのが最たる例だろうか。
……ちなみにネビルも俺達の訓練に参加して二年以上が経過していて──もちろんの事ながら、ネビルもまた〝無言呪文〟を使えるようになっていて、その分だけ他の生徒よりスタートダッシュに成功していた。
閑話休題。
(1…5…10…15…20人か。意外に多いな──しかも、その内9人が≪プロメテウス≫のメンバーとか…)
そして初めての〝魔法薬学〟の時間が訪れて、まず思ったのがそれである。
今年の〝魔法薬学〟は教鞭を執る人がスラグホーン先生に代わったので、〝ふ・く・ろ・う〟を〝E:期待以上〟以上でパスしたら〝い・も・り〟に進めるようになった。
……しかし、それにしても20人と云う人数は多くて、その半数近くが≪プロメテウス≫のメンバーだと云うのはご愛敬か。
サブの思考でハーマイオニーが次々とスラグホーン先生の問いに答えて、グリフィンドールに20点が加点されるのを聞きながらメインの思考では〝とある懸念〟について思いを馳せていた。
……ちなみに、俺が〝愛の妙薬〟で感知した香りは〝畳〟と〝墨汁〟に〝椿〟の香りだった。
閑話休題。
写本した〝某・プリンスの蔵書〟を、それこそ摩りきれるまで読んでいる俺達3人は〝生ける屍の水薬〟なら正確に煎じる事が出来る。それは良い──否、この場合は〝それが問題だ〟とも言い替えるべきか。
(〝仲良く三等分〟になれば良いんだけどなぁ…)
スラグホーン先生はアーニーに訊ねられた〝フェリックス・フェリシス〟についての説明を飛ぶ鳥を落とすかの様な勢いで語り始める。〝フェリックス・フェリシス〟は〝幸運の液体〟とも云われていてその効能は別名通り、飲んだ者に〝幸運を齎す〟のだそうだ。
スラグホーン先生は24歳と57歳にの時に飲んだ事があるらしく、朝に30cc──大さじ二杯飲んだだけでもその1日は完全無欠の1日となったらしい。
……正直に云えば、欲しかったりする。
そこでスラグホーン先生が腕時計を見ながら「……ふむ、あと1時間くらいか…」と呟くのが聞こえた。
「さぁ、【上級魔法薬】の10Pを開くことだ。そこに〝生ける屍の水薬〟の煎じ方が載っているだろう? そう、今日の授業はその〝生ける屍の水薬〟の調合だ。……ただし、だ」
スラグホーン先生の強調された〝ただし〟に、皆は強張る。
「この薬は君達が習ってきた薬より、ずっと難易度が高い事は判っている…。しかし、ただ無為に鍋を掻き回す様を見ているのも楽しくない。……故に、完璧な仕上がりこそ期待していないが──一番よく出来た者にこの〝フェリックス・フェリシス〟を進呈しようと思う」
――ざわ…ざわ… ざわ…ざわ… ざわ…ざわ… ざわ…ざわ…
去年までまずあり得なかった事に〝魔法薬学〟の教室がざわついた。……マルフォイが殊更食い付いた事にも気付いた。
「制限時間は授業が終わるまでとする──始めっ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
スラグホーン先生の開始の合図に各々に動き始めてから約一週間後。俺、アニー、ハーマイオニーの手元には小瓶に入れれた〝フェリックス・フェリシス〟があった。
……つまりは、スラグホーン先生は俺の予ての望み通り、同時優勝(?)と云うかたちにしてくれて〝フェリックス・フェリシス〟は仲良く三等分と云う事になったのだ。
―やれ! これは驚きだ! よもや、3人も完璧に〝生ける屍の水薬〟を調合してしまう者が出るとは! 特にアニー、君は正にリリーの再来だ!―
そしてやはりと云うべきか、スラグホーン先生からは特にアニーが──そんな風にが感嘆されたので三人で〝予習の賜物〟と嘯たのだが、そこら辺は詳しく語らなくともいいだろう。
「……〝幸運の液体〟──〝フェリックス・フェリシス〟…。なんか手に入っちまったが、これといった使い道が思いつかないんだよなぁ」
「そうね、私達って〝ツイてない日〟ってまず無いものね」
「……まぁ、贅沢な悩みなんだろうけど、確かにそれはあるかもねぇ」
寮の談話室で、4時間は継続すると云う〝フェリックス・フェリシス〟が入った小瓶を人差し指と親指でで摘まみながら何と無しにそんな事を呟けば、ハーマイオニーとアニーから同意の言葉が返ってくる。
確かにアニーとハーマイオニーが同意してくれた様に、贅沢な悩みではあるが──一週間悩んでみても俺、アニー、ハーマイオニーの三人には〝幸運にならなければならない状況〟と云うものが思い付かなかったのだ。
……しかし俺は、アニーとハーマイオニーには上の会話で嘯いてはみたものの、〝フェリックス・フェリシス〟の取り敢えずの使い道は決めていた。
(……まぁ、アニーが使っちまった時の保険だな…)
「……ロン、なんか失礼な事考えてない?」
「いいや、別に──おっと、もう20時の15分前だ」
〝フェリックス・フェリシス〟の使い道として、アニーからしてみれば憤懣するだろう事を考えていたら、アニーからジト目が飛んでくる。そんなアニーの視線から目を逸らすように右腕に嵌めてある腕時計に目を落としてみれば、長針と短針は19時45分を指し示していた。
今日の20時に、アニーはダンブルドア校長から〝個人授業〟として校長室に呼び出されている。……そして俺とアニーには日本人らしく〝時間前行動〟と云う観念が根深くこびりついている。それに乗らない手はは無かった。
アニーも腕時計を見て、俺の話題転換が真っ赤な嘘では無かったのを悟ったのかため息を吐いてから“透明マント”を取り出すと談話室から──そして、グリフィンドール寮から早足で出ていった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE アニー・リリー・ポッター
「アニー」
「校長先生、あの後の三人は…?」
「オグデンはあの15分後に魔法省に応援を呼び、モーフィンと老ゴーントを逮捕した。……メローピーは当然ながらお咎め無しじゃ」
ダンブルドア校長先生の声に引かれる様に、“憂いの篩”──〝憂い〟として入れた記憶を再生出来る魔法具から頭を離す。
ダンブルドア校長先生に見せてもらった記憶の持ち主は〝魔法法執行部〟に所属していたボブ・オグデンと云う人物で、すでに故人らしい。
そして記憶の内容をざっくりいえば、魔法法に違反したモーフィン・ゴーントにボブ・オグデンが出頭命令を出しにいったのだが、敢えなくモーフィン・ゴーントと老ゴーントに追い払われてしまうといった内容だった。
しかし、ボクはこの記憶に於ける主要人物三人より、二人の脇役に興味をもった。
一人は〝スクイブ〟──ロンが云うには、魔法使いや魔女を親に持ちながらも魔法の能力が潜性化してしまったメローピー・ゴーントと云う18かそこらの女性。
そしてもう一人は〝トム〟と云う隣村のメローピー・ゴーントに懸想されていた青年。ハンサム。
〝トム〟と云う名前はボクにしてみれば悪い意味で聞き覚えがありすぎた。
「……これはヴォルデモートの両親の馴れ初めですか?」
「ある意味そうだと云えるじゃろう。……二人が逮捕されて自由の身となったメローピーはまるで羽化するかの様に魔法の能力を回復させたのじゃから」
「なるほど…」
それなら〝服従の呪い〟も使えるだろうし──モーフィンと老ゴーントの二人が居なくなれば、何らか魔法で馬を足止めしてトム青年を家に連れ込み、それと無しに〝愛の妙薬〟を盛る事すら出来るだろう。
「……さて、そろそろ時間じゃ今日はここまでにしておこうかの。アニー、お休みなさい」
「お休みなさい、校長先生」
ダンブルドア校長先生の言うように、腕時計を見れば消灯時間が差し迫っていた。……ボク自身、それなりに優れた容姿だと自覚しているので母さんに感謝しながら校長室から退室するのだった。
SIDE END
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