とある3年4組の卑怯者
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138 犬友
前書き
花輪から彼の高原への別荘へと招待されたたかし。そこで花輪、みぎわ、城ヶ崎と共に彼らの犬との遊戯を満喫するのだった!
なんとたかし君も恋をする・・・!?
たかし達は花輪の別荘に戻った。
「それじゃあ、この部屋の電気ストーブで冷えた体を温めてくれたまえ」
花輪は電気ストーブのある部屋へと案内した。皆はコートを脱いだ。
「うわあ、電気ストーブなんて初めてだよ!」
「ええ、私の家には暖炉があるけど、電気ストーブは使った事はないわ」
みぎわはアマリリスの体を温めようとしていた。
「アマリリス、寒かったでしょ?」
「ワン!」
アマリリスだけでなく、タロやベス、ビッキーもストーブで体をのんびりと温めていた。
夕食は髙田夫妻が温かいもつ鍋を用意してくれていた。犬達には犬用の煮込みが用意されていた。
「どうぞ、召し上がってください」
「いただきます!」
皆はそのもつ鍋を食べ始めた。その時、みぎわがもつ肉を花輪に差し出す。
「はい、花輪クン、あ~んしてえ~」
「み、みぎわクン、僕は自分で食べられるから気にしないでくれたまえ・・・」
「んもう~、恥ずかしがっちゃってえ~」
みぎわはそれでも花輪に近寄っていく一方だった。
「みぎわさんっ、花輪クンが困ってるじゃないっ、やめなさいよっ!!」
「うるさいわね!フンッ!!」
「花輪クン、席替わろうか?」
たかしが聞いた。
「ああ、そうしよう・・・」
「ダメよ、城ヶ崎さんの隣に花輪クンを座らせるなんて!」
「何ですってっ!?」
「じゃ、じゃあ、僕と城ヶ崎クンが替われば問題ないかい?」
「そ、そうね・・・」
「まあ!」
とにかく花輪と城ヶ崎は席を替わった。花輪の隣が同じ男子のたかしなら問題ないかもしれないと思った。(ちなみにたかしの逆隣は髙田の妻でみぎわの逆隣はヒデじいがいた。席替え後の席は時計回りにたかしから花輪、ヒデじい、みぎわ、城ヶ崎、髙田主人、髙田夫人である。)
またいざこざを起こしながらもとりあえず犬達も含めて皆は夕食を楽しんだ。
「美味しかったです、ごちそうさまでした!!」
たかしは髙田夫妻にお礼をした。
「いえいえ、こちらこそお坊ちゃまのお友達が来てくれて賑やかで本当に楽しませてもらってます」
髙田の主人は礼で返した。
夜になり、たかしは花輪と風呂に入ることになった。自分の家の風呂場よりも広々としていて驚いた。
「うわあ、凄い広いね!」
「ああ、何人でも入れるように広くしてあるんだよ」
「へえ~」
たかしは花輪の財力に驚いた。だからといって金の力だけで偉ぶる事もなく、別荘に誘ったりするサービスのよさについても花輪を敬わずにはいられなかった。
「花輪クンは羨ましいなあ、お金持ちで、僕達を別荘に連れて行ってくれて・・・。だからみぎわさんとかいろんな女子に好かれるんだね」
花輪はみぎわの名前を出されて一瞬顔面が引きつったが、それでも話を続けた。
「でもまあ、君もタロへの優しさといういい所があるじゃないか。その優しさを大事にするといいよ」
「タロへの優しさか・・・。うん、ありがとう、花輪クン!」
たかしは自分にはないと思っていた長所を花輪から知らされた事でそれを大事にしていこうと決心するのだった。
その後、四人はテレビを見たりして楽しんだ。やがて寝る時間になった。客用の部屋が一人ずつ用意されており、たかしは自分に割り当てられた部屋へタロを連れて向かった。
「それじゃあ、Goodnight、everyone」
「おやすみ、花輪くう~ん」
「おやすみ」
「おやすみ」
たかしは寝床に付いた。
夜中、たかしはトイレに行きたくなってしまった。その便意で目を覚まし、トイレに行くことにした。しかし、ベッドから出るととても冷える。しかし、漏らすわけにも行かなかった。近くに寝ているタロを誤って踏んづけないように足元に気をつけた。そしてトイレの方向に向かった。その時、反対側から足音が聞こえた。
(ま、まさか、幽霊・・・!?)
たかしは驚いた。まさかと思った。その足音は近づいてくる。急いでトイレに近づいた。トイレのドアの前でたかしは反対側から来る物影が目に入ると、驚きの声をあげてしまった。
「うわあー!!」
「キャーっ!!」
たかしもその物影尻餅を突いた。
「・・・ってあれ、西村君だったのっ!?びっくりしたじゃないっ!!」
「城ヶ崎さん・・・。君の足音だったのか。幽霊かと思ったよ!」
「まさかっ、で、どうしたの?」
「トイレに行こうと思ってね」
「え?私もよ」
「じゃあ、先にいいよ」
「うん、ありがとう」
城ヶ崎が先にトイレに入った。その後、たかしがトイレに入った。たかしがトイレを済ませた後、まだ城ヶ崎そこにいた。
「それにしてもこんな時に一緒にトイレ行きたくなるって偶然よね」
「うん」
「折角だから下に降りてちょっとお話しましょうか?」
「え?いいのかい?」
「うん」
二人は1階の誰もいないダイニングへと向かった。城ヶ崎は窓の空を見る。
「ここからだと星がよく見えるわね」
たかしも窓から夜空を見る。
「うん、清水じゃここまで沢山見えないよね」
「ところで西村君」
「え?」
「西村君は『何もいい所がない』とか言ってたけど、私はそんな事ないと思うわ」
「う、うん、花輪クンにも言われたんだ。タロへの優しさがいい所だって」
「そう、それならタロともっと仲良くなれば西村君らしくなると思うわ」
「え?ありがとう。城ヶ崎さんは僕には優しくしてくれるんだね。いつもは男子には厳しい態度をとるのに・・・。特に永沢君とはよく喧嘩してるからね」
「う、私は確かにふざけたりする男子は嫌だけど、西村君はそんな風には見えないからね。それに私のベスもタロと仲良くなれたから西村君とは『犬友』になれてよかったわ」
「犬友・・・?」
たかしは『犬友』という言葉からあることに気付いた。城ヶ崎やみぎわ、花輪と飼い犬を通して仲良くなっていたという事に。
「うん、こっちこそ僕やタロと仲良くなってくれてありがとう」
この時たかしはこんな自分に優しくしてくれる城ヶ崎を見るのは初めてな気がした。そして彼は城ヶ崎に惹かれている事に気付くのだった。城ヶ崎も気が強いが男子が相手でも永沢の弟の太郎やたかしのような純粋な心がある者に対しては仲良く接する事はできる。それに誰にだってどこか取り柄があるはずだと思った。藤木も唯一の取り柄であるスケートで全国大会までコマを進めたのだし、以前自分がピアノのコンクールで出会った雲沢も唯一の取り柄であるピアノで銀賞を獲れたのだから。タロを大切にする気持ち。それこそがたかしの取り柄だと城ヶ崎は考えていた。
「それじゃあ、そろそろ寝ようか」
「うん」
二人は客用の部屋へと戻った。
翌日、皆は朝食を食べると、帰る事になった。皆は髙田夫妻に泊めてくれた礼をした。
「お世話になりました!」
「どうもありがとう」
「また来てね」
一行はヒデじいが運転するマイクロバスに乗り込んだ。
「花輪くう~ん、楽しかったわあ~。どうもありがとう~」
「あ、ああ、you’re welcome、baby・・・」
「花輪クン、今度はまた私のアマリリスに貴方のビッキーと遊びましょう~」
「わ、わかったよ、baby・・・」
花輪は体が凍り付いた。
「花輪クン」
たかしが花輪に声を掛けた。
「何だい、西村クン?」
「昨日も今日もありがとう。おかげで僕のタロも皆楽しめたよ!」
「え?ああ、そのようだね」
花輪は後部の犬達を見た。タロはアマリリスともビッキーとも、ベスと仲良く遊んでいた。
バスはやがて花輪邸に到着した。
「それでは気を付けて帰りたまえ、everyone」
「さようならあ~、花輪クン」
「さようなら」
「うん、またね!」
みぎわ、城ヶ崎、そしてたかしの三人は花輪家を後にした。途中で城ヶ崎とも別れた。
「西村君、みぎわさん、さようなら」
「あら、さようなら・・・」
「うん、またね!」
「西村君、また今度一緒にあなたのタロに私のベスと一緒に散歩しようっ!」
「え・・・、うん、じゃあね!」
城ヶ崎に言われてたかしは顔を赤らめた。ベスも嬉しそうに吠えて挨拶した。
「西村君、城ヶ崎さんと随分仲良くなったのね」
みぎわがたかしに聞いてきた。
「あ、うん、『犬友』だからね。もちろんみぎわさんや花輪クンもそうだよ!タロもアマリリスと仲良くなってるからね」
タロとアマリリスもよ転んでいる表情だった。
「『犬友』ね・・・」
やがてたかしはみぎわとも別れ、自分の家に戻ってきた。
「お母さん、ただいま!」
「お帰り、たかし。楽しんだみたいね」
「うん、僕もタロも凄く楽しむことができたよ!」
その後、たかしは「犬友」と楽しく遊んだこと、タロも彼らの犬と仲良くしていた事を母親に話し、たかしの母もそれを聞いて心を温まらせられるのであった。
後書き
次回:「文通相手」
みどりは堀から彼女の文通相手と会う事になったと聞く。そして堀の文通相手の家を訪問し、その文通相手もまた、友達を連れてくるというのだが、その友達は・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語が始まる・・・!!
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