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経済侵略

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第七章

「今連載してないです」
「載せられなくなったんだな」
「漫画の内容での批判が凄過ぎるみたいで」
「打ち切りか?」
「そんな感じかも知れないですね」
「そりゃそんなことを言ってるんならな」
 経済侵略だの日本のアジア再侵略だのだ。
「言われて当然だろ」
「ネットが出ましたからね」
「誰でも書けるからな、ネットは」
「それで主張出来ますからね」
「だからか」
「その漫画のおかしなところがあるサイトで徹底的に書かれていて」
 それでというのだ。
「物凄い反響を呼んでて」
「漫画も原作者も叩かれてるか」
「その主張も全部、経済侵略とかアジア再侵略とかも」
 漫画で言っていたその主張もというのだ。
「極左の主張、現実を無視した妄言だって」
「言われてるか」
「はい、それで原作者はです」
「極左だな」
「そう言われてます、それで今やネット全体で」
 この世界の中でというのだ。
「原作者は馬鹿呼ばわりですよ、その漫画を載せてた編集部もおかしいって言われてます」
「そうなんだな」
「学生運動自体ネットじゃかなり否定されてますしね」
 その声が非常に強いというのだ。
「馬鹿だの暴力主義者だのファシストだの言われてますよ」
「連中は日本がファシズムだの言ってたんだがな」
「それがですね」
「自分達がだったんだな」
「そもそもソ連ってそうでしたね」
「ああ、ナチスと同じだったな」
 荒岩もこのことは知っている、学生運動を見ていた頃から田中と共に薄々ながら気付いていたことだ。
「ファシズムだったな」
「そうでしたね」
「それじゃあソ連と同じ共産主義の信奉者だった連中もな」
「そうなりますね」
 ファシズムを信奉するファシストにだ。
「普通に」
「そうなるな、何かもうな」
「もう?」
「いや、御伽噺みたいだな」
 荒岩は正面を遠い目で見つつ述べた。
「民主主義だの言っていた連中がな」
「全然民主主義じゃなかったからですか」
「しかも革命だって言っててな」
「革命にはならないで」
「他の人達から馬鹿にされてるなんてな」
 そうした状況になったことがというのだ。
「御伽噺みたいだな」
「そうですか」
「ああ、それでもその原作者は言うこと変わってないだろ」
「自分もブログ作成して言ってますよ」
「相変わらずのことをだな」
「それでその都度叩かれてます」
 ネットでの発言もというのだ。
「偉そうに極左なことを言い続けて」
「学生運動の頃と同じことをか」
「叩かれて馬鹿にされてますよ」
「何か無残な末路だな」
「ですね、じゃあ俺達は」
「ああ、こうしてな」
「釣りを楽しみますか」
 田中は荒岩に笑って言った。
「そうしますか」
「そうしような、しかし釣り堀はな」
 釣ってみていてだ、荒岩はついつい苦笑いになって話した。二人以外の客もいるが彼等にしてもだった。
「あまり釣れないな、今日は」
「普段は結構釣れるんですがね」
「今日は駄目だな」
「そうですね」
 田中も苦笑いで応えた、定年後の二人は穏やかだった。二人がそうして穏やかな時を過ごしていた時当時京大で騒いでいた者達の一部は沖縄の基地の前で騒いでネットでその状況を晒され批判されていた。漫画原作者もまたブログで偉そうに言い炎上していた。穏やかに過ごしている彼等とは全く逆に。


経済侵略   完


                   2017・12・19 
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