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第五章

 村本は北朝鮮礼賛を続けた、それでその拉致についても言うのだった。
「やってる筈ないやろ」
「北朝鮮は日本人攫ってないですか?」
「それやってないですか?」
「何か噂になってますけれど」
「それ嘘ですか?」
「嘘に決まってるわ」
 はっきりと言い切るのだった。
「そんなことあの国がするか」
「その根拠は」
「それは何ですか?」
「一体」
「平和勢力やぞ」
 だからだと言うのだった。
「北朝鮮は」
「えっ、平和勢力って」
「北朝鮮がですか」
「だからですか」
「日本自は攫っていない」
「そうだっていうんですか」
「そや、北朝鮮もソ連もや」
 共産主義諸国はというのだ。
「平和勢力や、戦争は何で起こるか」
「ええと、それは」
「何ていうか」
「利害が衝突して」
「それで、ですよね」
「ちゃうわ、資本家が儲けようとして引き起こすんや」 
 ここでもマルクスそのものの考えを出す村本だった。
「それで戦争が起こる、しかしや」
「共産主義ならですか」
「そうしたことは起こらないんですか」
「そうなんですか」
「そや、そんなことを考える資本家がおらんのや」
 共産主義ではというのだ。
「農民と労働者の世界やからな」
「だからですか」
「戦争は起こらないで」
「それで、ですか」
「平和勢力だから」
「北朝鮮も戦争をしないし」
「日本人を拉致しないですか」
 生徒達は言い切る村本に本当かという顔で問い返していた、そんなことはあるのかとかなり懐疑的だった。
「そうなんですね」
「あの国は」
「じゃあ誰が拉致しているんですか?」
「新潟とか鳥取で」
「世の中行方不明になった人なんて幾らでもおる」
 これは現実のことだ、日本も行方不明者は万単位でいるのだ。
「それを北朝鮮を誹謗中傷してる奴が騒いでるんや」
「嘘を言って」
「それで、ですか」
「そうした話になっている」
「そうなんですか」
「そんな話は嘘っぱちや」
 あくまでと言う村本だった、これが彼の拉致についての考えであの国の世襲の共産主義体制についてもだった。
 支持を変えなかった、だが。
 生徒達が家でこのことを自分達の親達に話すと彼等の殆どはどうかという顔になってそれで言うのだった。
「それ違うんじゃないか?」
「共産主義で世襲はおかしいだろ」
「あの国個人崇拝も凄いし」
「ちょっとないでしょ」
「その先生おかしいんじゃ」
「変なこと言う先生だな」
 彼等は子供達の話を聞いてこう言った。
「日本の皇室は批判してか」
「北朝鮮はいいとか」
「共産主義で世襲の方がおかしいだろうに」
「どんな考えなんだその先生」
「訳がわからないわ」 
 どうにもと言うのだった、そして拉致についても話した。
「あれはやっていないか?」
「最近噂になっているけれど」
「あの国は前から色々と言われてるし」
「向こうに帰った在日の人は帰ってこないし」
「韓国にも攻め込んだし」
 朝鮮戦争も多くの者がこう考えていた、もっとも村本はこの戦争についても韓国が先に攻撃したと主張している。 
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